■ 1:愛が必要だ、今すぐに
海南大付属高校一年、女子バレー部、沼田美加子。
オレの、好きなヤツ。
「なあ、神さんと古賀さん、上手くいったの知ってるか?」
「え、神先輩と……真砂、先輩?」
同じクラスの沼田とは、共通の話題があった。
それは、オレら二人の先輩カップルについて。
古賀さんは、初めて会ったのが部活後の駄菓子屋。
その時はぶつかったことに対し、イラッときてたから、嫌な言い方をしちまったけど、その後、神さんの想い人だっていうことが判明。
それから、廊下で会えば会話をするくらいにはなった。
そして、結構いい人だということも判明。
そんで、コイツの部活の先輩。
オレは神さんも好きだし、古賀さんも、恋愛感ではなく、人として好きだ。
だから、この二人が上手くいって本当に良かったと思う。
しかし。
目の前のコイツは、素直に喜べないような顔をしている。
「なんだよ、お前、嬉しくないのか?お前だって古賀さんにずいぶん懐いてんじゃねーか」
「ああ、いやいや、嬉しいよ!嬉しいけど、神先輩、ちょっと憧れてたから……ほんの少しだけ、残念な気持ちがあるんだなー」
「なっ、マジで!?」
「うん、マジで」
アッサリと口にするあたり、コイツ、何も考えてねーんじゃねーかと思う。
っていうか、オレ、お前のこと好きなんだけど!
そんなオレに向かって、神さんが憧れだとか、言うんじゃねーよ!!
……っと、まあ、コイツはオレの気持ちなんて微塵も知ったこっちゃねーだろうから、そんな事は面と向かって言える訳もなく。
神さんの気持ちを知っていたオレは、古賀さんも鈍いなーなんて思ってたけど。
コイツも、大概鈍いと思う。
沼田を好きになったきっかけなんてわかんねー。
高校に入学して、同じクラスになって。
いつのまにか、話すようになってた。
そんでもって、共通の話題なんてできちまったもんだから、更に話すようになって。
ふとした仕草が可愛いな、とか、意外と女の子らしいじゃねーか、とか。
そんなとこばかり目につくようになって。
傍から見たら、悪友。
喧嘩仲間。
お互い口悪いし、大声だし、元気すぎて、みんなに煩いと言われる。
オレと似た部分があるっていうのが、惹かれた理由、なんじゃねーのかな。
「しっかし……そうか、真砂先輩、ようやくくっついたのか……!今度からかっちゃおー!」
「お前……最悪だな」
「何よ、そういう清田こそ、神さんからかう気満々でしょーが!」
「おう、当たり前じゃねーか」
「やっぱりね!っていうか、あれだ。四人で出かけたら面白そうじゃない!?」
「おっ、お前いいこと言うじゃん!よし、早速計画立てようぜ!」
こんな仲良さ気な会話をしてるけど、オレたちの間には、神さんと古賀さんみたいに愛はない。
単なる、友情だ。
四人で出かけるなんて、ダブルデートじゃねーか!と、心の中でガッツポーズを決め込んで。
この調子で、オレ達もカップルになれねーかな、なんてよこしまな事を考えた。
オレも、こいつの愛が欲しい。
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