■ 6:後悔は、してもしきれないものだ

「佳苗、どうしよう……!!」

「うわっ、どうしたの!?」

部室に入るなり、私は先に来ていた佳苗に抱きついた。
当然のように相当驚いている彼女。

そんな彼女に対し、私は今の自分の気持ちを全て打ち明けた。

すると。

「あー。やっぱりか」

「え、やっぱり……って?」

「最近の真砂、様子がおかしいなーって思ってたんだよね」

「え!?私、そんなにわかりやすい!?」

佳苗の言葉を聞いて、頭からサーッと血の気が引いた。
もしかして神くんの前でも態度に出てしまっていたんじゃないだろうか……!

「わかりやすいってワケじゃないんだけど……あたしは真砂のこと、よーっくわかってるつもりだし。他の人は気づかないんじゃん?」

要するに、親友である佳苗だけは私の様子の変化をわかってくれてたという事。
こんなにも理解してくれる友達なんて、そう簡単に出来るものじゃないよね……!
なんか、感動しちゃう。

「……佳苗!!大好きだ!!」

「うおっ、ちょ、やめーーい!!」

再び佳苗に抱きつくと冗談交じりにケラケラ笑いながら押し返された。

「それで、真砂はどうするの?」

「どうするって……」

「告白するとかしないとか」


告白……かぁ。

好きな人が出来たら告白して彼氏になってもらうんだ!!
なんて思ってたけどね?

それでも、この場合は状況が違う。

神くんは元彼で……私から告白して、私から別れを告げた人。
そんな人にまた告白なんて『何を考えているんだろう』としか思ってもらえないんじゃなかろうか。

それに、そんな事をしたら神くんを振り回すようで嫌だ。

告白する方もされる方も、自分の心の中には何も残らないわけじゃなくて。
別に好きじゃなかったとしても、色んな意味で心のどこかにその人の存在は侵入してきてしまう。

全くもって赤の他人だったら違うかもしれないけど。
同じ学校、部活のコートが隣り合わせ、そして毎朝同じ電車で一緒に学校まで来ている。

そんな関係の人だったら、少なからずとも『振り回す』部類に入ってしまうと思う。

あの時の、なんて。
そんな後悔したってしきれない。

もしも時間が戻せるのなら私が告白した前日くらいに戻して欲しい。

そして、最初からやり直すんだ。

今よりはいい未来が待っていた……、はず。

けれどそんな事を思ったって、時間が元に戻るなんて事があるはずもなく。
私は佳苗に対して横に首を振った。

「うーん……まあ、仕方ないとは思うけど……なんかいい方法があればねぇ……」

いい方法なんてそんなの一つしかない。
神くんが私に好きって告白してくれること。
そうなったら私は即OKをして、そしてハッピーエンドが待っている。

でも、神くんはもう、きっと私の事なんて好きじゃない。
登校するときの態度も普通だし、私がこんなに目で追うようになってしまったのにも関らず視線が交わることはほどんとないに等しい。

神くんに彼女が出来た、なんて話を聞くこともないから、その分安心はしているけど。
でも、いずれはそんな話が出てくるかも、なんて……そんな事は誰にもわからないわけで。


私はただ、過去の自分を恨むことしか出来なかった。

今頃自分のしてきた行動の重さに気づくなんて。

「佳苗……恋愛って難しいよね」

「はは、何言ってんの」

呟くように言うと馬鹿だね、なんてデコピンされてしまった。

うん、私、ほんと馬鹿だ。

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