■ 4:小さな自覚

神くんは、私の彼氏じゃない。
私ももう好きじゃないし、彼だって私のことなんて、もう好きじゃないだろう。
好きだったなんて、お互い過去の話。
なのに、なんで今更……こんなにも目で追いかけてしまうのが彼の姿なのだろうか。

「先輩、こんにちは!」

「ああ、こんにちはー、相変わらず元気いーねっ」

「あはは、そうですかー?まあ、元気だけが取りえですからねっ」

昼休みに出会ったのは部活の後輩の美香子。
彼女はどんなときも元気で、会うと毎回元気のお裾分けを貰う。

「ああ、そうだ、真砂先輩って彼氏いるんですか?」

は?

私、今は部活一色で色恋沙汰なんて何も絡んでないんですけど。

「だって、見たっていう子がいるんですよ!」

キャー!!なんて騒ぎ立ててくる美香子についていけず、私は彼女の目の前に手を出し、ストップ!と止めた。

「見たって、何の話かさっぱりわかんないんだけど?」

「えー、バスケ部の神先輩と、二人で歩いているところを見たって!」

…………。

なんでこう、女の子って。

ただ二人で歩いていたというだけでカップルに結びつけるんだろうか。
しかも、一緒にいたのなんて一回だけ。
自主的な朝練の時間が重なっただけっていう、そんな日に限って見られているなんて。

「違うよ、それ。単に偶然会っただけだって」

「えー、そうなんですか?神先輩ならお似合いだと思ったのになー。ちぇー、おもしろくない!」

「ちょっ、おまえええ!面白くないってなんだ、面白くないって!」

「キャー!!先輩が怒ったー!!」

「待て、美香子!こらーーー!!」

逃げられた。
元気のお裾分けはどうした、元気のお裾分けは。

今日は元気どころか混乱のお裾分けを貰ってしまったんじゃなかろうか。

だって、神くんが私の彼氏っていう噂を聞いてちょっとドキドキしてる。


ちがう、なんで今更。

こんなはずじゃない。


一目惚れをしたのは事実だったけど、彼は目立つほうじゃなかった。
筋肉だって今みたいについてなくて、中学上がりの普通の男の子。
顔が好みだっただけ。

話をしてみても盛り上がることもなかった。


でも。


一年経って、彼は変わった。
身長もぐんぐん伸びて、スポーツマンらしい体つきになって。
顔だってますますかっこよくなって、周りからも人気が出るようになった。

周囲の環境のせいか、神くんの性格も変わったように思えた。
電車の中でちょっと話をしただけだからそんなに詳しくはわからなかったけど。
それでも、明らかに昔とは違った雰囲気を持っていた。


少し、大人っぽくなった?


……って、なんでこんなにも変化がわかってんの、自分。


…………嫌だ。
私、何気に神くんの事気にしてたんじゃん。

[ prev / next ]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -