■ 1:恋に恋して

高校入学したての頃、私には付き合っている人がいた。

高校に入学したことで新しい気分に飲まれ、浮かれていたのか学生特有の恋がしたいという衝動に駆られて。
彼氏が欲しいな、なんて考えていた私はすぐに彼に目を奪われた。

彼を見た最初の印象は『あ、かっこいいな』。

そう思ったら目が離せなくなって。
単なるインスピレーション。

『かっこいいな』と思い始めてから一週間後、私は彼に告白をした。


返ってきた返事は意外にもOKの返事。
彼だって入学したてだったし、私のことなんか知らないはずなのに。

高校生にもなると『付き合ってみようかな』だけで付き合うようなもんなんだろうか?
それとも私のことを知ってて、彼も私を気にしてくれてたんだろうか。

色々な考えが頭に浮かんだけれど、OKしてくれたという事実に変わりはなくて。
初めて出来た彼氏に物凄く喜んでいる自分がいた。


けれど、後悔っていうのはすぐにやってくるもので。

お互いに知らなかった私たちは、学校から一緒に帰ったりしたものの会話を探すことに必死だった。
無言の空気もしばしば。

いっちょまえにキスなんてしてみたりもしたけれど、それもムードなんてあったもんじゃない。
これってキス?
単に唇がぶつかっただけなんじゃないの?

そう思えるようなものだった。


そして、いつしかそれが私にとって苦痛の時間となっていった。


苦痛と感じたらそこからの行動も早いもので、私は思うままに彼にメールをした。

《別れよう、やっぱり会話が続かないのは苦しい》

彼からのメールの返事は戸惑ったものだったけれど、その後の電話の頑なな私の態度に彼も了承してくれた。



その後しばらく経ってから『携帯を変えました』という彼のメールには返事をせず、登録もせず。
私も一週間後に携帯を変えた。



ああ、これが恋に恋するってことなんだな。


あの時の私は確かにそう思っていた。

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