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この試練は、全部で6ターン行われる。
以下、試練をゲームと呼ぶことにする。
巨人は1ターンにつき5体放たれる。
メインの大型巨人には属性がついている。

木は土に勝つ
火は金に勝つ
土は水に勝つ
金は木に勝つ
水は火に勝つ

これは東洋での陰陽五行というものを参考にさせてもらった。
大型巨人を倒してしまえば他の巨人も自動的に消滅となり、そのターンは勝利となる。

部屋には立体起動装置を予め用意しておく。
ガスの補充の心配はなく、無限に使うことが出来るが壊れたら自動的には直らない。

それぞれの立体起動装置には属性が設定されており、装置を選んだ瞬間にその属性が自分のものとなる。
巨人の属性と反する者しか止めを刺すことはできない。
従って、巨人の属性を見極めて倒しにかかって頂きたい。

ご丁寧に立体起動装置だけは用意しておいたが、巨人を倒すための刃は町のどこかに転がっている。
それらを探し出し、巨人を倒すための準備を整えて欲しい。
巨人との戦いにおいて刃が使い物にならなくなった場合は、再び町のどこかに出現する。

1ターンは12時間とする。
12時間以内にそのターンで出現した巨人を倒す事ができなければ、反する属性の立体起動装置を装備しているものは死ぬ。
巨人は人間を丸飲みする。
一時間以内に人を飲み込んだ巨人に致命傷を負わせればその人間は吐き出され、救われるが、時間が過ぎてしまうとその場でゲームオーバーとなり命を落とす。

ただし、救うためには目覚めの口付けが必要である。
これは童話を参考にさせてもらった。

ちなみに怪我をした者はそのターンが終われば回復するが、重症な場合は同じく口付けでエナジーを送る事が出来る。

今諸君が居る場所は、本拠地である。
ここを拠点にゲームを開始してもらいたい。
本拠地は巨人が近寄らず、何事も無く平穏な時間を過ごせるが、かといって倒しに行かなければ一人ずつ死んでいくだけである。

全部の巨人を駆逐すればゲームクリア、元の世界に帰れる。



というわけで、頑張ってくださいね。

あ、ゲーム開始までの準備時間は12時間です。
食事の材料は無限にあるし、お風呂も設置しておいたので好きに過ごしてください。


ゼノフォン・ハルキモ






「「「「「…………」」」」」


その巻物に書かれている内容を読み上げたのはエイルだ。
全部言い終えて周囲の反応を見渡してみると全員が不条理だ、とでも言いたそうな顔をしていた。
そもそも呪いに巻き込まれた事自体が不条理というものだが。
最早何処からツッコミを入れていいものかわからない。
読んでいくうちにエイル自身も怪訝な表情になっていた事を、エイルは気づいていなかった。

「なんつーか……纏まりのねえ文章だな」
「なんというふざけた設定を作り上げてくれてんだ、あの野郎」
「オレも今回ばかりはジャンに賛同する……。ていうか色んなものを参考にしすぎだろ!」

リヴァイに便乗するかのように、拳に力を込めて身体を震わせるジャンとエレン。
その隣ではアルミンが落ち込んだ様子。

「なんだか大変な事に巻き込まれちゃったね……ごめんね、エイル。それに、みなさんも……僕が余計な事をしなければこんなことには……」
「アルミンの所為じゃないよ!この箱を送ってきたのは私に対して恨みを持ってる人だって事でしょ。逆に巻き込んじゃってごめん……エレンも、ジャンも、ナナバさんもリヴァイさんも。本当にごめんなさい」

しゅんとするエイルに、ナナバとリヴァイが近づく。

「エイルだって知らなかったんだし、そもそも一番悪いのはこの箱をエイルに送りつけた人物だよ」
「お前が気に悩む事じゃない。それに、誰の所為とか言ってても始まらねえだろ」

両側から肩を叩かれ、エイルは少し安心したような表情を見せた。

「そうだよ、誰もお前の所為だなんて思ってないし。巨人を駆逐すればここから出られるんだから、心配すんな」
「うん、ありがとうエレン」
「しかし、目覚めの口付けとか……マジねえわ。男だらけで万が一誰かがそうなっちまったらどうすんだよ」
「「え?」」

おえー、という素振りを見せるジャンの言葉に、エイルとエレンの声が重なった。
リヴァイはコイツ何言ってんだ、という顔で見ているし、ナナバとアルミンに関しては冷や汗をかいている。

「男だらけって、……ねえジャン」
「?なんすか、ナナバさん」
「もしかして、エイルのこと……男だと思ってる?」

その言葉にエイルは内心ショックを受けていた。
しかし同時に、間違われてても仕方ないのかな、とも思った。
彼女が普段仕事をしに来る格好では、判別がつかないのも無理はないのだ。
小綺麗にしていれば明らかに女性とわかるのだが。


「…………ハァ!?おおおお、お前!!オンナなのか!?」


指を差しながら問うジャンに、エイルはコクリと頷いた。

「マジかよ……!!ずっと男だと思ってたのに……!!」
「ジャン、それはちょっとひでぇよ。一人称だって私だったじゃんか」
「嘘だろエレン!それはナナバさんみたいなタイプだと思って……!!」
「ほんとだよ、こんなに可愛らしいのに」

言いながらアルミンはエイルの帽子を取った。
帽子の中に仕舞い込んでいた長い髪の毛が、あ、という言葉と共に肩から滑り落ちる。

「!」

すす汚れている状態ではあるが、帽子を取っただけでも今までのエイルに対する印象とは全く違ったものを抱いたジャン。

女顔だし、小さい身体してんな、とは思っていたが髪形ひとつでこうも変わるとは……。

そう思っているジャンの顔は、真っ赤だった。
そのやりとりを見守っていたリヴァイは、内心舌打ちをする。
そのまま男だと思っていれば良かったのに、と。
何故なら、自分にとっての彼女は可愛い生き物だからである。
他のヤツに取られたくないという独占欲が、少なからずリヴァイの中にはあるようだった。
だが、そんなリヴァイに負けず劣らずナナバもエレンもアルミンも、みんながエイルを可愛いと思っているのは各々の心の中だけに留めてある。

今回、ジャンがエイルを女と認識したところで余計な恋慕など抱かれたら面倒くせえな、と思いながら。




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