番外編2

※これは本編とは関係のない番外編になります




リヴァイがそれを発見したのは、エイルが盾を発見したときと同じように偶然の事だった。
見た目的には信号弾用の銃とよく似ている。
試しに使ってみようとも思ったリヴァイだったが、万が一の事があっては困ると思い、機械に強いエイルに相談することにした。

「エイル、今手は空いてるか」
「あ、はい。大丈夫ですよ」
「そうか。これなんだが……」

本拠地に戻って機械の整備をしていたエイルに声を掛け、先程拾ってきたものを彼女に手渡す。
それを手に取ったエイルは、まじまじと銃を見つめた。

「これは……信号弾用の銃に似てますね」
「ああ。だが、同じ物とは限らねえからな。お前がわかるかと思って聞いてみたんだが……」
「うーん、ちょっと分解してみないとわからないんで、少しお時間頂いてもいいですか?」
「問題ねえ。寧ろ時間を貰ってるのはこっちの方だ」
「それは気にしないで下さい。では、ちょっとお借りしますね」

器用な手つきで分解を始めるエイルを、リヴァイはじっと見つめていた。
パッと見、機械関係が苦手そうな顔立ちをしているんだよな、コイツ。
……まあ、機械に顔立ちも何もあったもんじゃねえが。

そんな事を考えていると、エイルがピタリと手を止めた。

「どうした?」
「や、なんか……」

これ、熱いんですけど。
そう言おうとしたエイルだったが、その言葉を発する前に銃が暴発したのである。

「「!!」」

一瞬にして煙に巻き込まれる部屋。
間近で見ていたリヴァイはこの上なく焦った。
自分が持ってきたものでエイルを傷つけるなど、あってはならないことだ。

「エイル!大丈夫か!エイル!!」
「だ、大丈夫です……ビックリしたー……」

どうやら凄かったのは音と煙だけだったようだ。
もうもうとした煙が次第に晴れていくと、エイルの無事な姿が目に入り安堵したと同時に、自分の右手に違和感が生じた。

「……?」
「…………え」

リヴァイとエイルは同時に目を見開いた。
なんと、触れた覚えすらない二人の手が、繋がれているのである。

「す、すみません!今すぐ離しますから……!」

なんだ、エイルが握ってきたのか。
そう思ったリヴァイだったが、一生懸命彼女が腕を引っ張るのに対し、手は一向に離れそうもない。

「あれ、おかしいな……リヴァイさんも引っ張ってみてくれませんか?」
「ああ」
「っ、わっ!!」

言われるがまま自分の手も引っ張ろうと試みるが、力を入れてみればエイルごと引っ張る形となってしまった。
咄嗟に彼女の身体を抱き止め、二人の体重を抱えたままリヴァイは尻餅をついた。

「だ、大丈夫ですか」
「このくらいなんともねえ。……つーか、これ……離れねえな」
「もしかして……さっきの銃が原因ですかね」
「銃が?」
「さっき分解始めたとき、あれ、ちょっとずつ熱くなっていったんです。だから暴発したと思うんですけど、こうして傷ひとつ負ってないっていうことはもしかしたらこれは人と人との手をくっつけてしまう機械だったんじゃないかと」
「…………ゼノフォンの野郎のくだらない発明か」
「その可能性が高いです」
「で、いつまでその体制でいるつもり?」
「「!?」」

二人のやりとりの途中から部屋の入り口に立っていたナナバ。
そんな自分に気づかないリヴァイとエイルに対し、少し呆れ気味だった。
二人の世界に入ってんじゃないよ、と言ったところだろうか。

ナナバがエイルの手を引いてやると、同時にリヴァイも立ち上がる。

「ちょっと失礼」

二人の手をぎゅっと掴み、離してみようと試みたナナバだったが、どれだけ力を入れても離れないし、あんまり力を入れすぎるとエイルに痛がられるのも嫌だと思ってやめた。

「うーん。これはもう、手が繋がったまま過ごすしかないんじゃないかな」
「そんな!これじゃ足手まといになっちゃいます……!」
「俺は構わないが」
「リヴァイさん……でも、その、トイレとかお風呂とか……」
「ああ…………」
「とりあえず、それまでに何かいい方法が無いか考えようよ」
「はい……」

顔を赤くするエイルを見たリヴァイの頭に、もしこの手が離れても離れない振りをしようかという考えが過ぎった。
しかし本当に困った様子のエイルを見てると、傷は負わせなかったもののこんな目にあわせてしまって申し訳ないという気持ちが芽生えてくる。

「……エイル、悪かったな。あんなもの拾ってこなければ良かった」
「!いえ、謝らないで下さい。リヴァイさんが拾ってこなくても私が拾ってたかもしれませんし!役に立ちそうなものは持ってこなきゃ損ですよ」
「なんだそりゃ」

フッ、と笑うリヴァイにエイルはホッとした。
自分の責任だなんて思ってほしくないのだ。
自分でも言ったとおり、リヴァイが拾ってこなくとも誰かが拾ったかもしれない。
それに分解なんてしなければこんな事にはならなかったはずだし、軽はずみに分解しようと思った自分にも非があるのである。

「とりあえず、ご飯の準備手伝ってもらってもいいですか?」
「ああ」
「私も手伝おうか?」
「有難う御座います。でも、二人いるので大丈夫です」
「そう?万が一怪我しそうになったら声掛けてね」
「はい!」

心配そうなナナバにお辞儀をし、リヴァイと二人でキッチンへ向かう。

それにしても、まさかリヴァイさんと手がくっついてしまうなんて。
平気な顔してるように見えるけど、リヴァイさんは嫌じゃないのかな。

エイルがリヴァイの顔をチラ、と見れば、同じようにエイルを見ていたリヴァイと目が合う。
無性に恥ずかしくなり、照れ隠しのためにエイルは口を開いた。

「あの、リヴァイさんは嫌じゃないですか?」
「エイルは嫌なのか」
「えっ」

質問に質問で返されると思って居なかったエイルはドキッとした。
そして答えあぐねていると、再びリヴァイがフッと笑う。

「悪い。俺が先に答えるべきだったな。他の男共ならともかく、繋がっているのがエイルなんだから嫌なわけないだろう」
「そ……ですか、私も嫌じゃないです」

寧ろ嬉しいと思っている二人だったが、本心は出さずに居た。
お互い嫌じゃないと思ってるならそれでいいと思ったからだ。

「それにしても、これで食事が作れるのか?」
「お互いの空いてる手を上手く使えばどうにかなると思います」
「そうか……しかし、このまま離れなければやはり風呂は一緒に入るしかないだろうな」
「え」

ニヤリと笑うリヴァイに、エイルはまたもや顔を赤くする。

「は、入らないっていう選択肢は」
「あると思うか?」
「……ですよね」

潔癖症なリヴァイの事、風呂に入らないなど有り得ないことだろう。
それがわかっていたエイルは項垂れた。

「嫌なのか?」
「……嫌ってわけじゃ」

ないですけど。
そう続こうとした時、二人の手がパッと離れた。

「……離れ、ましたね」
「そのようだな」
「時間制限でもあったんですかね……」
「そうだろうな」
「…………」
「…………」

なんというタイミングで離れるんだ、この手は。
そう思いながらエイルはリヴァイににへら、とどうしていいかわからないような笑みを浮かべると、リヴァイはシンクに向き直った。

「良かったな、恥ずかしい思いをしなくて済んで」
「はっ、はい……」
「約束どおり食事の準備は手伝おう。エイル、指示を出してくれ」
「はい!」

声色は普通だったが、内心残念に思うリヴァイであった。

その後、二人で協力して作った食事は無事に完成し、当然のように別々に風呂に入る二人の姿を見てナナバがニヤニヤしてたとかしてなかったとか。




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