番外編1







「じゃあ、お先にいただきますね。毎回すみません」

ペコリとお辞儀をし、エイルは浴室へと姿を消した。
順番待ちをしている5人はテーブルを囲ったまま寛いでいる様子。
そんな中、ジャンがぽつりと漏らした一言により、場は騒然となる。

「エイルって……何色の下着つけてんだろな」

エレンとアルミンはその言葉にブフッと吹き出した。
ナナバは目を丸くし、リヴァイはピクリと反応を示す。

「ジャン、突然なんだよ!」
「いや、お前も気になるだろエレン?こうやって風呂に入っていく姿を想像するとさ、こう、なんつーかさ」
「エイルの居ない所でこんな話はやめようよ〜……」
「いいじゃないかアルミン、私もちょっと興味あるな」
「ナナバさん!?」
「気になっていたところではあるな」
「リヴァイ兵長まで……!そ、そりゃあ僕だって少し……いや、結構気にはなるけど」

顔を赤くしながら本音を晒したアルミン。
そんな彼を見ながらみんなはやはりアルミンも男なんだな、と再認識をした。

「そういや昔ゲルガーと女性の下着について話したことがあったな」
「ゲルガーさんとですか?内容はどんな……」

ジャンが続きを促すと、ナナバはニヤリと笑った。

「下着の色でその女性の性格がわかるって話。元ネタはどこから仕入れてきたかわからないけど、ゲルガーから教えてもらったんだよね」
「下着の色如きで性格がわかってたまるか」
「それが結構当たってるっぽいんだよ」
「当たってるって、もしや誰かに聞いたんですか!?」
「フフ、それは秘密だよエレン」
「そんなら、エイルの下着の色の予想しませんか!」
「…………くだらねぇ。だがまあ、俺は白だと思う」

くだらねぇと言いつつも会話に参加するリヴァイに104期生三人はゴクリと喉を鳴らした。
リヴァイの言葉で白の下着を身に纏っているエイルの姿を想像してしまったからだ。

「白もいいけど、黒とか赤もそそるよね」
「黒は悪かねえが赤は趣味が悪い」
「オレは水色とかいいと思います!」

鼻息を荒く興奮しながら話すジャンに続き、エレンとアルミンも自分の意見を出し始めた。
なんだかんだでみんな自分の好みを主張したいらしい。

「エイルだったらピンクだろ。オレは断然ピンク押しだ」
「僕はベージュとかもいいと思うな」
「ベージュって……アルミン、これまた大人な感じだね。しかし少し年配女性って感じがしない?」
「その柄とかにもよると思うんですけど。純粋な感じでいいと思ったんです」

アルミンの言葉にナナバはなるほど、そういう考えもあるかと頷いた。
本人達は至って真剣に話を進めているが、万が一ここにエイルが居たら全員嫌われてもおかしくないような内容である。
彼女がこの場に居ない事によってそれは盲目となっていた。

「で、何色がどの性格なんだ」
「えーっと……確か白やピンク、水色が女の子らしい性格で、黒は一見クールだけど実は情熱的、ベージュは控えめな性格だったかな」
「スゲエ!よく覚えてますねナナバさん」
「結構前の話だからちょっと定かではないけど、そんなに間違ってもいないと思うよ」
「ってーことはエイルの性格からして黒はちょっと違う感じですね」

エレンが言うと、全員が深く頷いた。
そして再び各々の考えを口にする。

「つーことはやっぱ白が濃厚じゃねえのか」
「水色だって可能性ありますよ!」
「いいやピンクですって!」
「エイルは結構控えめなところもあるし、ベージュもありだと思うんだけどなあ……」
「それじゃあ、誰か一人が確かめに行けばいいんじゃないかな」
「それはいい考えだ」
「「「!?」」」

ナナバの提案とリヴァイの賛同に、エレン、アルミン、ジャンの三人は「この人たちマジか」と思った。
そして同時に誰か一人と言いつつ、その役目はきっと自分達の誰かに回ってくるんじゃないかと頭に浮かんだ。

「言い出しっぺのジャンに行ってもらうってのはどう?」
「ええええ!それは酷いッスよナナバさん!!くじ!くじ引きにしましょうよ!」
「オレもくじ引きに賛成です!」
「僕もくじ引きがいいと思います……!」
「よし、誰が引いても文句ナシだからな。1番を引いたヤツが行け」

リヴァイがエイルと一緒に寝る順番を決めた際に使用したくじをサッとみんなの前に出した。
それぞれが直感で一枚の紙を手にする。
緊張の一瞬。

せーの!と一斉にくじを引けば、紙の先に1と書かれているのはリヴァイの持つそれだった。

「…………」
「1番はリヴァイだね」
「兵長、自らの発言には責任を持ちますよね」
「リヴァイ兵長、影ながら応援してます」
「が、がんばってください」

紙の先をじーっと見つめるリヴァイ。
そんなに見続けても番号が変わることは無い。
みんなの視線を感じ、リヴァイは深い溜息を吐いた。

「……忘れていたが。今現在エイルが使用しているのはゼノフォンの野郎が用意したものじゃねえのか」
「「「「あ」」」」
「つまり、結果エイルの趣味ではねえってことになるよな」

リヴァイの言う事は尤もである。
ゼノフォンの趣味だとしたら、今までの行動や言動は全て無駄な労力だ。
リヴァイがフン、と鼻を鳴らせば、他の四人は脱力した。

「あのー、みなさんどうかしたんですか?」
「「「「「!」」」」」

ふわりといい匂いが鼻を掠めると同時にこの場に戻ってきたエイル。
各自自分の持っていたくじをサッと後ろに隠した。
追求されたら話を逸らせる自信が無かったからである。

「エイル、早かったね」
「はい、みなさんを待たせちゃ申し訳ないと思いまして」
「もうちょっとゆっくりでも全然構わなかったんだぜ!」
「ありがとう。でもやっぱりみんなも早く体さっぱりしたいでしょ」

何気ない会話を続けているつもりだったが、男達の頭の中ではゼノフォンの趣味であろうと現在エイルが着けている下着の色が気になって仕方なかった。

「エイル」
「はい」
「お前、下着とかに不自由はしてねえのか。あの野郎の用意したもので気持ち悪くねえか」

聞 い ち ゃ っ た ! !


内容は多少違うものの、下着に関しての質問をエイルにぶつけたリヴァイ。
彼の勇気に誰もが合掌したくなった。

「え!?ええっと……大丈夫、ですけど」

突然の話の振られ方に風呂上りでほんのり赤かったエイルの顔が真っ赤になった。
その反応を見て男達の妄想は余計に広まっていく。

「基本的に普段のものとそんなに変わらないですし…って、なんか恥ずかしいです」

もじもじしているエイルに飛びつきたくなる衝動を抑えつつ、普段のものと変わらないんなら結局覗きに行くべきだったじゃねえかと男達は思った。

肩を落とし、ガッカリした様子の男達に疑問を抱きつつもエイルは風呂上りのお茶を取りにキッチンへと向かう。

男達の頭の上ではしばらく悶々とした感情が渦巻いていたのだが、エイルの知る所ではなかった。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -