30N

「ねえ、エイル」
「はい?」
「私の事、兄のようだと思ってる?」

エイルが最後に一緒に枕を共にしようと選んだのは、ナナバだった。
危ない所を助けてくれたり、気づけばいつも面倒を見てもらってるような気がして。
一緒に居て落ちつくといったら、で、ナナバが思い浮かんだのだ。
やはり兄のようだと思って彼を選んだのである。

「……ナナバさんは良いお兄さんですよね」
「一人の男としては、見てもらえてないのかな?」

フッ、と微笑むその顔にエイルの心臓が高鳴った。
一人の男として見てないわけじゃない。
兄という言葉で誤魔化して、見ようとしなかっただけだ。

ナナバを異性と意識してしまえば、何だかもう後戻りが出来ないような気がして。
黙り込むエイルの頭に、ナナバが優しく手を乗せる。

「私もエイルのことは妹のように思ったりもしたけど……やっぱ違うんだよな。可愛い一人の女の子なんだよ。そして私も兄のようだけど一人の男。意味、理解できる?」
「な、なんとなく……」

それでも言葉を濁すエイルに、ナナバの悪戯心が芽生える。

「自分じゃわかってないみたいだから、前と同じ状況になってみよっか」
「え、」

言うや否や顎をくいっと上に向かされ、唇を塞がれて。
突然のことに吃驚したエイルが思わずナナバを押し返そうとすれば、その手は呆気なくつかまってしまった。

「ダーメだって。この前は積極的だったのに。お酒の力借りないと本性出てこないの?」
「お酒……って、やっぱり私何かしたんですね……!!」
「だから、同じ状況になってるんだってば」

言いながらエイルを押し倒し、舌を絡め取るナナバにエイルは焦っていた。

前と同じ状況って!?
こんなこと、したの!?
私がナナバさんと!?

そんな事を考えていれば、今度は胸の膨らみに温もりを感じた。

「!」

まさか、最後まで……!?

エイルの動揺に気づいたナナバがキスを止める。

「おっと、これ以上は同じ状況ではないな」
「じゃ、じゃあ離してください……!」

最後まで行為が及んでないことに対して安心したエイルが懇願するが、ゆったりと首を振りながらもナナバの手は離れようとしない。

「エイルは私の事どう思ってるのかな」

ぐにぐにと動かされる手付きに、ナナバの質問へと集中できないエイル。
顔は赤く染まり、困惑したその表情はナナバをそそるものでしかなかった。

「あの時さ、エイルが言ったんだよ。私はそのまま寝ようとしたのに、それじゃ寂しいって」
「き、記憶ない、ですっ、て……言ったじゃない、ですか」
「あれ。感じてるの?」
「っ!い、いじわるっ……!」
「あはは、ゴメンね。私良い性格してるからさ。もっと気持ち良くしてあげる」
「え、ひゃっ!やあ!」

勢い良くシャツを剥ぎ取られ、そして下着まであっという間に剥ぎ取られ。
露になった二つの膨らみが、ぷるぷると揺れた。
エイルが慌てて隠そうとするが、その手は当然のようにナナバに阻止されてしまう。
そしてナナバの顔が胸元へと近づいたと思うと、下の方から中心に向かって舌を這わせた。
エイルの体がビクンと跳ねる。

「可愛い色してる。綺麗だよ」
「アッ、ん」
「そうやって啼く声も可愛い」
「やっ、やめ、……ン、あ、」
「気持ち良くなってきただろ?」
「…………ッ、んぅ、」

ナナバの言葉が図星だったエイルは、何の返答も出来ずに居た。
ナナバの滑らかな舌に、ただ快感を覚えるばかり。
そのまま黙っていると、今度はその手が下半身へと滑り落ちて。

「こっちも」

言いながら脱がせば、触れた中心は既に濡れていた。

「エイル、どう?」
「どうって……、あっ、ナナバ……さん……ッ、やっ、」
「気持ち良いだろ?」
「んっ、あ、アァ……!」

くちゅ、と、卑猥な水音が部屋の中に響く。
このままじゃ他の部屋にも聞こえてしまうと思ったエイルは、声を抑えようとナナバの肩に唇を押し当てた。

「ん?なに、聞かせてやればいいじゃん」
「!や、です、よっ!」

やめてください、とは言わなかった。
聞かせてやればいいじゃんという言葉に対して反抗を示しただけだ。
ナナバの口元に笑みが浮かび、エイルに再び口付けた。

「そうだね……それも勿体無いか。今度二人きりの時に、その可愛い声をもっと聞かせて」

そう言ってエイルの反応を伺うが、やはり彼女は否定をしなかった。
エイルの脳内は既にナナバに犯されているのだ。
こうなってしまえば、もうナナバの事以外は何も考えられない。
エイルは彼の身体にしがみついた。

「んッ、なんか、や、うぅ、……」
「…………イキそう?」
「〜っ」

涙目で訴えるエイルに、ナナバの我慢も限界だった。

「どうせなら一緒がいいな」
「ん、」

エイルにキスをし、舌を絡ませ、彼女のナカへと自分を侵入させた。
大分濡れていたおかげでスルリと入っていったそれは、快感により質量が増す。

「きつ、」
「……っ!」

ぐち、と音がして奥まで入ればエイルは辛そうに顔を歪めていた。

「痛かったら爪立ててもいいから。しっかりつかまってて」

そんなナナバの言葉に、コクリと頷くエイル。
大事に扱ってくれているのが伝わってくる。
そんな暖かさを感じ、ナナバの言うとおりに彼の身体を強く抱き締めた。





お互いの身体の温度を感じながら、同時に果てるとどちらからともなく二人で顔を見合わせる。
ナナバはふ、と力なく笑うと、エイルの頬に手を当てた。

「……エイル、強引なヤツでごめんね」
「いえ……あの、なんか……いいようにされちゃって悔しいけど……わたし、ナナバさんのこと、ちゃんと一人の男の人としてみてますから」

エイルの言葉にナナバの目が見開いたかと思えば、悪そうな笑顔を浮かべる。

「うん?ハッキリ言ってくれないとわからないな」
「やっぱりいじわる……!…………っ、好き、です!ナナバさんが好きです!」
「可愛すぎるだろ、エイル。誘ってんの?もしかして足りなかった?」
「ひゃあ!」

再びナナバに押し倒され、そのまま再び同じ行為が繰り返される。

本来ならば最後の戦いについて緊張しながら眠れぬ夜を過ごすかも、などと思っていたエイルだったが、そんなことを考える余裕など無かった。

疲れ果てて眠る直前に見たナナバの顔が、酷く優しくて。
エイルはこの人の笑顔を絶やしたくないな、と思った。

「エイル、必ず元の世界に帰ろうね」

ナナバがエイルの額に口付けを落とすと同時に、エイルの意識は心地よい闇の中へと沈んでいった。




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