27

リヴァイとナナバによって四体目が倒され、続いて大型巨人のお出ましだ。
全員でウォール・ローゼ方面に目をやっていたのだが、いつもだったらここいらで地響きが聞こえてくるはずなのに、しばらく経っても巨人は現れなかった。

「……どうしたのかな」
「今回は大型巨人は出てこない……とか?ですかね」

ナナバとエレンが顔を見合わせて言う。

「油断はするなよ、裏から現れるっていうのが覆されただけかも知れんぞ」
「奇行種っていう可能性もありますよね」
「ああ……そうだったな、アルミン。奇行種だったら真っ当に出てくるとは限らねえな」
「ッ!!全員飛べッ!!」
「「「「「!?」」」」」

そう指示したのはジャンの声だ。
何かに気づいたジャンが叫び、咄嗟の事だったが全員その声に反応し、近くの高い建物へと非難する。
アルミンはエイルの手を繋いだままだったことに気づくや否や彼女の手をバッと離して距離を置いた。
何事かと吃驚したエイルは一瞬アルミンを見たが、同時に下から飛び上がってくる何かが目に入った。
地を這うような体勢の大型巨人だ。
口を大きく開けたまま、アルミンに向かって何度も飛びつこうとする。
もしエイルと手を繋いだままであれば、当然の如く巻き込まれていただろう。
それを瞬時に察したアルミンが自分ひとりに狙いが定まるように、と急いで彼女の手を離したのだ。

「やはり奇行種だったか……!エイル、おいで!」
「はい!でもアルミンが!」
「アルミンならエレンが援護に行った!私達も後を追うよ!」

エイルの手を取ったナナバは既に100メートルくらい先まで逃げているアルミンの後を追う。
アルミンを追いかける大型巨人の動きは割と素早く、気を抜いたら一瞬で捕まえられてしまいそうだった。

「おいナナバ、その手離すんじゃねえぞ!」
「了解!」

ナナバに指示を出した後リヴァイは速度をあげた。
物凄い勢いで風の中を通り抜ける。
あっという間に大型巨人の後ろにいるエレンに追いついたかと思うと、敵目掛けて刃を振り下ろした。
その刃からは雷が落ちる。

直撃したはずなのだが、大型巨人の動きは止まらなかった。

「同じ属性同士打ち消されたのか!?」
「でもアルミンの木属性の時はちゃんと蔦に絡まってたはずだ」
「じゃなかったらどうして……」

ジャンとナナバの会話を聞きつつ、エイルは嫌な予感がした。
アルミンが無事に逃げ切れればいいけど、と思ったその時、アルミンの身体を大型巨人の手が掠める。
瞬間、アルミンの身体に電流が走った。

「うああああああ!!」
「「「「「!」」」」」

立体起動もままならぬまま、アルミンは壁にぶつかって滑り落ちてしまう。
その姿に大型巨人が迫り、手を伸ばそうとした。
だがそれはリヴァイが許さない。
属性攻撃が効かないのであれば、弱まるまで削ぐまでだ。
そう思ったリヴァイは自分の最速のスピードでありとあらゆる所を削いでいった。
その隙にエレンがアルミンの身体を抱え、ナナバ達のほうへと運ぶ。

「アルミンを頼んだ!オレ、倒しに行かなきゃいけないから!」

エイルに向かってそう言うや否や、未だ大型巨人の動きを止めているリヴァイの元へと飛んだ。

「アルミン、アルミン!大丈夫?意識はある!?」

頬を軽く叩きながら呼びかけてみると、ゆっくりとその瞼が開かれた。

「……良かった、今回復してあげるからね……!」
「っつ……いてて、…………いや、大丈夫だよ。僕、ちゃんと動けるから」

辛そうにしながらも、アルミンはエイルの回復を拒んだ。
理由は簡単だ。
彼女は既にジャンへとエナジーを送っている。
だとすれば今のダメージの自分にエナジーを送ったら、今度は彼女が危険に晒される。
そんな事になるくらいなら、この痛みを我慢した方がマシだと考えた。
一瞬電流で意識が飛んだが、実際動けないわけではない。
そしてエイルから離れようとしたのだが、今度は彼女の手がそれを拒んだ。

「ダメ。私の事心配してくれてるなら少しだけでいいから」

まるでキスをせがまれている様な錯覚に陥ったアルミンの喉が、小さく鳴った。
ナナバもジャンも何も言わない。
即ちきちんと回復させてもらっとけ、という事だ。

アルミンはぐ、と言葉を飲み込み、近づいてくるエイルの顔に目を閉じた。

ふわりと柔らかいものが触れて、一瞬の事なのにとても気持ちが良いと感じた。
エレンもジャンも……みんな、エナジーを受け取った時ってこんな感じなのかな。
そう思ったアルミンは癖になってしまうのもわかるかもしれない、と顔を赤くさせた。

「ありがとうエイル、僕はもう大丈夫だけど……エイルはどう?」
「うん、私も大丈夫。まだ元気あるよ!」

そう言ってニコリと微笑む彼女に、アルミンもまた微笑みで返した。







さて、こちらが微笑ましくやってる一方リヴァイとエレンはというと。

大型巨人が属性攻撃を仕掛ける間もなくリヴァイが斬りつける。
その隙を狙ったエレンが這いつくばっているその背中に飛び乗ろうと試みたが、着地と同時に足にビリビリと電流が流れたものだから「ぎゃあ!!」という悲鳴を上げながら即座に屋根の上へと避難した。
大型巨人が弱まってる所為か、アルミンの時よりダメージは少ない。

「エレン!何してんだテメェ!」
「いや、電流が流れてきたんですよ!巨人の背中に乗った途端!」
「チッ、なら触れずにうなじだけ狙え馬鹿野郎!」
「言われなくたって……!!」

そんなのわかってますよ、と続く言葉はそのまま飲み込み、立体起動を上手く使えないかと周囲を見渡す。
しかし自分はダメで何故兵長は大型巨人に触れられるんだろう。
そんな疑問が浮かんだが、同じ属性同士打ち消しあってるんだという事に気づくのはそう遅くない。


大型巨人にアンカーを突き刺してもきっとワイヤーを伝って電流が流れてくる。
だとすれば、大型巨人が飛び上がったその一瞬を狙って横に飛ぶしかない。
エレンの考えを察したのか、リヴァイは攻撃の手を休めた。
この状態ではとても飛び上がれる力は残っていない。
だが、最初に切りつけた足だけ回復させたらそれ以上待つ必要はないだろう。

シュウシュウと音を立てて蒸気が大型巨人の傷を癒していく。
そして思惑通り最初に回復したその足で、地を蹴った。
狙いはリヴァイではなく再びアルミンのほうに向いていたが、その瞬間待ってましたとエレンが横へ飛び、刃で斬りつけながら空中回転を披露しつつ、対岸のリヴァイの元へと着地した。

「まあ、悪くないな」
「!……ありがとうございます、兵長!」

崩れ落ちる大型巨人を見ながらリヴァイはエレンに賞賛の言葉を贈った。

こうして無事に5ターン目が終了し、残す所あと1ターン。
だがその1ターンはまだ謎に包まれたままだ。
結局エイルの属性は判明しないままだし、そうなるとラストがどういう展開になるのか誰にも全く予想出来ない。


そして本拠地へと戻ろうとした時、ある異変が起こる事になる。




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