26

なんだか質の良い睡眠が出来た気がする。
目を覚ましたエイルがそう思うと同時に、ベッドにリヴァイの姿が無いことに気づいた。
既に起きて先に行ってしまったのだろうか。
腕時計を見れば、まだ時間に余裕はある。
もうちょっとボーッとしてようと再びベッドへ倒れこもうとした時、ドアの開く音がした。

「起きたか」
「あ……おはようございます、リヴァイさん」
「おはようというのも可笑しな話だがな。12時間毎に一日が終わってる気分だ」
「ああ……確かに、そうですね」

未だ回らない頭でボンヤリと考えながらリヴァイに相槌を打つ。
寝る前の出来事が嘘のように、リヴァイに変化はみられなかった。
意識したところで後々やり辛い感があるから、変な空気になるよりはマシだ。
そう思いながらエイルは重い腰を上げた。

「まだ起こさなくてもいいだろうと思ってな。キッチンへ飲み物を取りに行ってきた。お前も飲むか?」

問いかけられれば、エイルは自身の喉の渇き具合を確かめた。
起きたての口の中は綺麗とは言い難い。
潔癖症なリヴァイの事だ、きっと起きてすぐに歯を磨き、それから飲み物を摂取したのだろう。
そう考えると自分がはい頂きますと貰う訳にもいかなかったので、とりあえず歯を磨いてからにします、と丁重に断りを入れた。

そんな彼女の律儀さに、リヴァイの口元が緩む。
エイルが既にドアから出て行こうとしたときだったので、その表情は彼女には見えていない。


歯を磨き、キッチンでお茶を飲んで。
それから着替えるために部屋へと戻る。
既に着替え終わっていたリヴァイと入れ替わりで準備をし、ダイニングへ行けば全員が集合していた。






軽く食事を済ませ、動けるようにと身体をほぐしているところで5ターン目開始の鐘が鳴る。
先発隊は既に門の前で待機済みだ。
先発隊として本拠地を出て行ったのはエレンとアルミンとジャンの104期生トリオ。
今回の討伐はアルミンが狙われる確率が高いので、大型巨人以外はなるべくエレンとジャンの二人で討伐する予定である。

そうなると大型巨人の属性は『金』であることから、今回は盾が必須アイテムになるだろう。
盾ごと粉砕されてしまうだろうから直接攻撃は和らげることは出来ないが、炎を防いだ時の様に雷も防いでくれるはずだ。
そのまま電流が流れてこないことを祈るしかない。
後は絶対に当たらないように回避するか、である。

「さて、そろそろ私達も行こうか」
「ああ」
「はい!」

後発組み三人が本拠地の外に出ると、遠くで激しい音が聞こえた。
ジャンの属性攻撃が炸裂しているのだろう。
案の定門まで近づけば、下から突き出た岩壁が幾重にも並んでいた。

一体目は難なく倒したらしく、現在戦闘中なのは二体目の巨人。
その巨人の後ろに回りこむと、ジャンは立体起動で肩に飛び乗ろうとした。

が、ワイヤーで引き上げられる腕に力が入らないことに気づく。

「しまっ……!」

スルリと手が解け、ジャンは途中で降下する形となった。
思い切り地面に身体を打ちつける。その隙を巨人が見逃すはずもなく、即座にジャンを捕まえようとしたが、その手は空振りに終わった。

リヴァイとナナバが咄嗟の判断でジャンを助けに行ったのだ。
その様子を見ていたエレンとアルミンは二人で巨人の背後を突いた。
前かがみになっていた巨人の背中を走り、うなじを削ぎ落とすと立体起動でその場を離れる二人。
残るはあと三体。

「もしかして属性攻撃すんのも体力減んのか」
「この様子からしてみると、そうなのかもしれないね。見た感じジャンが属性攻撃ばっかりしてたっぽいし」
「マジすか……便利な力だと思ってたけどそうでもないんスね……って、あ、すみません!有難う御座います!!」

両側から上司二人に支えられてるにも関らず、普通に会話をしてしまったことを詫びるジャン。
エイルの側まで連行され、ポイと投げ出されたその姿は割かし間抜けである。
言うなればエイルとキスしろという意味なのでリヴァイとナナバは口には出さなかったのだが、次の戦闘に備えて回復しろという意図は伝わった。

ジャンの疲労は目に見えて解るし、これはエナジーを送っておくべきだと判断したエイル。
自分からするのはやはり抵抗があるが、属性のわからない自分よりもジャンの方が活躍できるはず、と思い、焦ったように見ているジャンに近づいた。

「ちょっと我慢してね」
「我慢って、」

拒まれるより先に、エイルはジャンの唇に自分のそれを押し付ける。
少しの短い時間だったが、ジャンは身体に力が戻ってきたのが解った。
そして、二人が離れたその時。

「わ、わー!!ジャン!鼻血!鼻血!!」
「へ?う、わっ!」

まさかの二度目の鼻血である。
前回の時は興奮して出た鼻血ということを知っているのはジャン本人だけ。
だから今回ジャンが何故鼻血を出したのか、エイルには解っていなかった。
エイルとのキスの気持ちよさに再び興奮してしまったのだ。
もう少し時間が長ければもっと彼女の唇を求めていたかもしれないと思うと、今度は顔を真っ赤にさせてより激しくボタボタと鼻血が流れ出た。

「うわああああなんで止まらないの!エ、エナジー足りなかった!?」

焦ったエイルが顔を覗き込むが、ジャンは必死で近寄るなというリアクションをするばかり。
それに気づいたエレンが二人に近づき、ジャンの頭をゴン!殴って距離を開けさせた。

「ってーな!!あにすんだよエレン!!」
「お前が邪なこと考えてるから止まらないんだろ、それ」
「ぐっ……!何も殴るこたねーだろ!」
「少し落ち着かせてやろうと思っただけだし」
「テメェ……」

そんな二人のやりとりを見て、エイルは苦笑した。
エレンは嫉妬心からジャンに当たっていたのだが、理由は何であろうとジャンが落ち着いたのは確かだ。
仲良しなんだな。と勝手に自己完結をさせ、ジャンの元気の良さにも安心した。
次に出てくる巨人へと備えようとすれば既に上司二人が戦闘中だった。
エイルの周りには巨人がいるわけでもないし、他のみんながいるから大丈夫と判断したのだろう。

「僕らも、早くあんな風に戦えるようになりたいね」

いつの間にかエイルの側に来ていたアルミンが呟く。

「自由自在って感じ、するよね」
「うん。たくさんの経験を積んで、色んな苦労を乗り越えてきたんだろうと思うと、自分ももっと頑張らなきゃなって思うよ」
「アルミンは……アルミンだけじゃない、エレンもジャンも、向上心をきちんともっているから強くなれるよ、きっと」
「……だといいんだけど」

へへ、と笑うアルミンの笑顔に絆されたエイルも、ニコリと笑った。
エイルを守ろうという気持ちがあるだけで強くなれてる気がする。
アルミンはそう思いながら、エイルの手を取った。
そしてエレンとジャンにも声を掛けて上司二人の元へと向かった。




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