25

ギシリ、とベッドが沈む音がした。
消灯も終わって、あとは横になるだけだったがエイルはそれがなかなか出来ずにいた。
手を繋ぐことは恥ずかしくは無かったが、やはり手を繋ぐのと一緒に寝るのは全然違う。
ましてや歳が近いエレン達ならまだしも、相手はあの人類最強、リヴァイ兵士長である。
直接的な上司ではないとはいえ、自分が一緒に寝るなどおこがましい。

だが、そんなリヴァイともキスはしたのである。

その時の事を思い出したエイルは一瞬にして顔を真っ赤にさせた。
そして運が悪いことにその表情をリヴァイはバッチリと見てしまった。

「顔が真っ赤だがどうした」
「い、いえ……なんでもないです」

その理由が解っている癖に、リヴァイは意地悪な聞き方をする。
それに対しての反応を見て、やはりコイツは可愛いなと思ったリヴァイ。
徐に彼女の頬へと手を伸ばした。

「俺には言えない事なのか」
「!」

心配する振りをすれば、途端にしどろもどろになるエイル。
内心笑っているリヴァイには気づかず、嫌な思いをさせてしまったどうしよう!と焦っていた。
黙っていると余計に嫌な思いをさせてしまうと思ったエイルは、おずおずと口を開く。

「……あ、あの、ちょっと思い出してしまったもので」
「思い出した?……何をだ?」

リヴァイはどうしても彼女の口から言わせたいようだ。
すっとぼけた返しをすれば、エイルは観念したように続きを言葉に出す。

「…………、エナジーを送った時のこと、です」
「……自分が送られた時のことは覚えてないのか」
「それは……覚えてない、ですね。意識がなかったんだと思います」
「そうか」

無意識に己の唇を求められたと思うと、リヴァイに更なる悪戯心が芽生えた。

「お互いが疲労してない場合はどうなるんだろうな」
「?少しでも疲労してるほうがエナジーもらえるんじゃないですかね」
「ふむ……試してみるか」
「え、」

言いながらにエイルの唇を奪えば、リヴァイは彼女の身体を抱き寄せた。
まさかの行動に吃驚したエイルだったが、その逞しい腕から逃れる術はなく。
しかも自身の言ったとおりで、少しでも疲労してるほう……つまりより体力の少ないエイルはリヴァイからエナジーが流れてくるのを感じていた。

リヴァイに返した時、それからナナバにもらった時のようにほんの5秒程度で終わると思っていたそれは、一向に離れる気配がない。

段々と気持ち良くなっていく感覚がわかる。
最初にエレンとした時も、エレンはこんな感覚に陥っていたのだろうか。

短い時間ではそんなに気にならなかったが、エナジーを送られることってこんなに気持ちがいいんだと思い始めたエイルは、朦朧としてきた意識の中でリヴァイの唇をぺろりと舐めた。
それに火がついたのがリヴァイである。
その舌を絡めとり、エイルの身体を優しく押し倒す。
そのまま何度も口角を変え、お互いの唇を求め合った。
エイルとリヴァイの立場が逆でも同じ事になっていた筈だ。
エナジーうんぬんなど関係なく、エイルがどんな行動を取ろうとも、ただリヴァイの欲求のままに事が進んでいるのだから。


少し息が苦しそうなエイル。
それに気づいたリヴァイは唇から己のそれを離し、エイルの耳元で囁いた。

「気持ちいいのか?」
「!」

ビクリと反応した彼女はこくんと頷く。
それに満足したリヴァイは今度はエイルの首筋に舌を這わせた。
ぞわりと鳥肌が立ち、再びビクリと動くエイル。
その反応に気分を良くさせたリヴァイがエイルの顔を覗き込めば、顔を真っ赤にしながら虚ろな目で、切なそうな表情を見せている。

このまま行為に及べば、エイルはどんな声で啼くのだろうか。

恥ずかしさからか顔を自身の腕で隠そうとしたエイルだったが、リヴァイによってそれは阻止された。
ゆっくりと顔が降りてきて、また、唇が落とされる。

ギリギリのところで理性を保っていたリヴァイは、これ以上は本当にエイルを自分の物にしてしまいそうだ、と、最後に軽くちゅ、と音を立てて唇を離した。

そして彼女の身体を優しく抱きしめると、ドクドクと聞こえる鼓動は速かった。

「悪かったな」
「…………いえ……」

腕の中で首を振るエイルは、今どんな顔をしているだろうか。
もし物足りなさそうな顔で見られたら今度こそ止まれない。
そう思ったリヴァイは彼女の顔を見ないように自分の胸へと埋める。
最後に彼女に選ばれたのなら今度は止めるつもりは無いと思いながら、エイルの頭をゆっくりと撫でた。
まるで子供を寝かしつけるかのように。

実際エイルは物足りないと感じていた。
もっともっと、リヴァイとキスをしていたいと思っていた。
今ならエレンの言っていた事が解る。
これは癖になってもおかしくないレベルだ。
だが、リヴァイが離れた以上自分からはとても言い出せる訳が無く、エレンのあの素直さが羨ましいと感じた。

撫でられている心地よさにそのうち眠気が押し寄せてきて。
気づけば二人、抱き合った状態のまま眠りに落ちていた。




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