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「……あれ、ここは……」
「あ、気が付いた?」
エイルが目を覚ますと、天井の白が視界に入った。
少し身体を起こしてみればそこは本拠地のベッドだということがすぐに理解できた。
「ナナバさん、私……」
「うん、巨人に食べられるっていうのはダメージが相当大きいみたいでね。救済したんだけど……それでもしばらく目を覚ます様子が無かったから。自分の属性の戦闘が済んでいる私が代表でエイルを連れて帰ってきたんだよ」
自分の属性の戦闘が済んでいるのはジャンも同じ事だったが、大型巨人が現れる前に、とナナバの勝手な判断と行動でエイルを連れて帰ってきたのだ。
後でリヴァイに怒られようが、他のみんなに何を言われようが構わない。
大事なのはエイルが意識を取り戻す事だ。
そう考えたら、一刻も早くエイルを無事な所に避難させねば。
そんなナナバの考えはリヴァイにもわかっていた。
そしてナナバがエイルを連れ去った所で丁度大型巨人のお出ましだ。
大型巨人は真っ先にジャンを狙ってきたので、今回の属性は木だと判明した。
木ならばリヴァイの金属性が有効だ。
だったらナナバが離脱した所で問題はない。
そう思って大型巨人との戦闘に専念した。
ナナバが水の刃を出したように、自分も何か出せるのか。
考えながら試しに刀を振ってみれば、小さな稲妻が飛び出す。
続けてもう少し強めに振ってみれば、最初よりも大きな稲妻が飛び出した。
『金』は雷ってことか。
しかも振る力を強くすればより強大な属性攻撃が出来る。
もしかしたら意識の問題かもしれないが。
その事を理解したリヴァイは、すぐさま大型巨人に向かう。
エイルにエナジーを送った事でいつもの半分程度しか力が出ないが、なんとかなるだろう。
そう思いながら向かった先では、ジャンが必死に逃げているのをエレンとアルミンが援護している所だった。
「……やはり新兵だけでは心許ないな」
リヴァイはボソリと呟く。
だが、このターンで試してみたいこともあったので三人に向かってそれを叫ぶ。
「オイ餓鬼共!属性攻撃はできないのか!」
「「「!?」」」
言われて気づく三人。
今は自分のターンじゃないけれど、もしかしたら属性攻撃はいつでも出来るかもしれない。
ジャンは咄嗟に体勢を持ち直し、念じながら思い切り刃を振った。
すると、下から岩壁が突き出し、ジャンと大型巨人の間に入る形になった。
「すげっ……これ、便利じゃん……!」
「エレン!アルミン!お前らも試してみろ!」
「「はいっ!」」
ジャンが成功した事に自信を持ったのか、二人とも思うがままに刀を振るう。
エレンが振り下ろした刀からは火柱が出て、アルミンの刀からは植物の蔦がどんどん伸び、大型巨人に届いたかと思うとそのまま大型巨人を締め付ける。
が、それも動きを止める事が出来たのは一瞬だ。
蔦に絡まれながらも大型巨人は突破しようと前進する。
やはりそう簡単には勝たせてもらえないらしい。
「よし、出来ると解っただけでも収穫は得られた。アルミン、さっきの攻撃でもう一度ヤツの動きを止めろ!」
「わかりました!」
「エレンはその隙を狙ってジャンの方に行け!」
「はい!」
エレンが飛びのいたスペースに、リヴァイが到達する。
そしてアルミンが刀を振り下ろしたと同時に大型巨人に向かって飛び出し、大型巨人が属性攻撃をしてくる前に頭上から激しい雷をお見舞いしてやった。
崩れ落ちそうになる大型巨人の背中に移動すると、いとも簡単にそれの項を削ぎ落とす。
リヴァイの一連の流れにエレンとジャンは思わず魅入っていた。
自分もこんな風になりたい、という憧れはやはり恋敵であろうと拭えないらしい。
アルミンは体力のない自分が役に立てたということが嬉しかったようだ。
だが、そんなリヴァイがいつもの半分の体力しかないという事は誰も気がついていなかった。
「しばらく経つけどみんな帰ってこないってことは……大型巨人と戦ってるのかな」
「えっ、それなら私達も早く行かないと……!」
「ああ、ダメだって。エイルはまだ万全じゃないだろ」
「でも、起きれるようになったし……足手纏いにならないようにします」
「それじゃ何のために私がここに連れて来たんだい?」
「それは……、……すみません。我侭言いました」
シュンと俯くエイルの頭を、ナナバがあやす様に撫でる。
「どのくらい回復したの?」
「えっと……いつもより少し力が入らないくらい、ですかね」
「ふーん、そう。じゃあこれで満タンになるかな」
「!」
直後にチュ、と軽いリップ音が聞こえたと思った時には既にナナバがエイルにキスをしていた。
ほんの5秒程度の時間だったが、それでもナナバからエイルへとエナジーが送られる。
「ナ、ナ、ナナバさん……!」
「どう?回復した感じはある?」
顔を真っ赤にしながら再び身体を動かしてみれば、確かにさっきよりは動けそうな気がした。
突然の事に吃驚したエイルだったが、素直にお礼を言う。
「有難う御座います、おかげさまでちゃんと動けるようになってます。でもナナバさんは平気ですか?」
「ん?私は何も怪我とかしてないよ?」
「いや、あの……報告し忘れてたんですけど、エレンにエナジーを送った時、自分の身体の力が抜けていく感じがしたんです。だから今私に送ってくれた分、ナナバさんの体力も減ってるんじゃないのかなって」
「そうなんだ……って、そうなのか!?それじゃリヴァイは結構体力少なくなってるんじゃ……!」
エイルはそこでようやく気づいた。
自分を救済してくれたのは、リヴァイだったのだと。
一緒に居たのがナナバだったことからナナバが助けてくれたのかと思っていたが、救済したとは言えども誰が、とは言わなかった。
目覚めてからの疑問がようやく解決されたのだ。
そして、二人は同時に顔を青くさせる。
リヴァイの体力が少ないのであれば、少しでも戦力を増やしておきたいはずだ。
エイルは慌ててベッドから飛び出し、ナナバはそんな彼女の手を引いた。
そして二人で本拠地を出て、みんなが居る方向へと急いだ。