13





風呂から出てきたエイルは、テーブルで頭を抱えているエレンを発見した。

「エレン?」

声を掛けると弾かれたように顔を上げたエレン。
その顔は異常なほどまでに赤かった。

「どうしたの?熱でもある?」
「っ、触るな!」

心配して額に触れようとすれば、それを振り払うエレンの手。
エイルの体が一瞬にして強張った。
自分は一体何かしてしまったのだろうか。
そう思いながらエレンの挙動を見守っていると、エレンは小さく『ごめん』と呟いた。

「熱じゃなくて、お前と一緒に寝ると思ったらなんか……その……」

言葉は濁っていたが、何を言いたいのかなんとなく理解できてしまったエイルはエレン同様に顔を真っ赤にした。

「寝室、行くぞ」
「う、うん」

ここでじっとしていても仕方ない。
眠れなかろうがなんだろうが、無理やり寝るしかない。
じゃないとリヴァイ兵長に怒られる。
そう思ったエレンは立ち上がり、エイルの手を取った。


寝室に入り、電気を消してさっさとベッドに並んでしまえばあとは寝るだけだ。
そうは解っていても、隣にエイルが居るというだけでちっとも眠くならない。
ベッドに入ってからの二人の会話は無かった。
その方が早く寝れると思ったからであって、決して喋りたくないわけではない。
眠れなさそうなエレンの様子に、エイルは思わず寝返りを打った。

「……エレン、寝れないの?」
「っ!ああ」

ベッドの中での上目遣いは凶器だろが!!

エレンは理性を保つのに必死だった。

「どうしたら寝れる?」

問いかけるその唇に目をやれば、艶やかで柔らかそうなそれ。
いや、実際スゲェ柔らかかった。
こっちが必死で理性を保とうとしてんのに、何でお前は誘惑してくるんだ……!

当然エイルはエレンを誘惑しようだなんて考えてはいないが、必然的にエレンの目にそういう風に映ってしまうのは仕方の無い事である。

「…………キス、してもいいか」
「えっ」

返事が来る前に、エイルの唇を塞いだ。
エイルは驚いたが、突然のことに抵抗することもしなかった。
それをいい事に、エレンは何度もエイルの唇を奪う。

時間にすれば2、3分といったところだろうか。
エイルの唇を堪能し終えたエレンは、エイルの身体を自分の胸に押し付けた。

「……ごめん、嫌だったか」
「…………よく、わかんない」
「あの時のエイルとのキスが忘れらんなくて。オレ、お前のこと……かなり、やばいかも」
「……エレン」

嫌かと聞かれれば、嫌ではない。
だが嫌じゃなかった等とは言えない。
エレンのことは好きだけど、恋愛のそれかと聞かれれば自分でもよくわからない。
リヴァイもナナバもジャンもアルミンも。全員同じくらい好きなのだ。
それに、あの時は状況が状況だったし、エナジーが送られて来てる事自体が気持ち良さそうだったからつり橋効果のようなものではないのだろうか。
ただ、エレンとするキスは嫌いじゃない。
だからはっきりと否定もできなかった。

「キスでエレンがぐっすり眠れるなら、お安い御用だよ」
「エイル……お前、それ体良く逃げてる?」
「うーん。だってまだよくわかんないんだもん」
「よくわかんないってーのは、他に好きなヤツがいんのか?」
「それもよくわかんない」
「じゃあオレにチャンスが無いわけじゃないんだよな?」
「んー…………うん、」

チャンスが有るか無いかと言えば無いわけじゃない。
だが、恋愛として好きになれるかの保障など出来ないし、万が一他の人を好きになってしまったらエレンに申し訳が立たない。
しかし、エレンの真剣な顔を見たエイルは無難に返事をしてしまった。

「……それを聞いて安心した」

安堵のため息を吐きながら、エレンは再びエイルにキスをした。

「嫌いじゃないならいいよな?」

そういう問題じゃねえ。

この場に他の誰かが居たら絶対そんなツッコミが入っているはずである。
だが、エレンの無邪気な笑顔にエイルは何も言えずに顔を赤くするだけだった。

安心したエレンは何時の間にやら深い眠りについて。
対するエイルは、なんだか悶々としたまま眠れない夜を過ごすのであった。












そして2ターン目開始の鐘が鳴る。


今回は全員が鐘の前に準備を終えており、入ってくる巨人を一体ずつ確実に倒すという作戦を取っている。
最初に入ってくるのは3m級、次に5m級、7m級、10m級の順番だ。
最後に大型巨人が入ってくるのは全員が確認済みである。
従って、エイルに戦闘慣れさせるためにはできるだけ小さい巨人と対面させることが得策だと思ったリヴァイとナナバは、エイルを連れて前線に出ていた。

「戦い方を教えてやるから、言うとおりに動けよ」
「私がサポートするから心配ないからね」
「はい!」

リヴァイの指示を仰ぎ、エイルは巨人目掛けてアンカーを打ち出していく。
大型巨人に比べたら小さい所為か、1ターン目に対峙したときよりは恐怖心が薄れていた。

「そこだ、思い切り振り下ろせ!!」
「やあああっ!!」

言われたとおりに巨人の背後へと到達したエイルは、自分のありったけの力を込めて半刃刀身を振り下ろした。

ザシュ、と小気味の悪い音が聞こえて、項を削がれた巨人は前へと倒れこむ。
そして体中から白い湯気が湧き出した。

「やるじゃんエイル!!」
「おめでとうエイルー!!」
「怪我は無いかエイル!!」

エレン、アルミン、ジャンの三人は少し遠巻きにエイルの姿を見守っていた。
出来ることなら自分がサポートしたかったが、戦いにおいては強い者が絶対だ。
命に関るこんな時に、自分の我侭なんて言えるはずが無かった。

「よし、良くやった。次もいけるか?」
「はい!まだ大丈夫です!」

使った刃もまだ大丈夫そうだ。
自身の疲れもまだ全然感じない。
その返事にリヴァイなエイルの頭を撫で、そのまま掴んで門へと向けた。

「たっ!」
「次、来るぞ。構えとけ」
「わ、わかりました!」

首がグキッとなりそうだったエイルだったが、続いて入ってくる5m級の巨人に意識を集中させた。




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