11

大型巨人の身体が消えるのを確認し、全員でジャンの元へ集合した。

「ジャン、お疲れ!良くやったね」
「有難うございますナナバさん。兵長の指示のおかげっすよ」
「ほう、わかってるじゃねえか」

リヴァイがいなければ、ジャンは焦って突っ込んでしまっていたかもしれない。
そう考えるとやはり彼の存在は大きかった。
きっとサポートしてくれたのがナナバでも同じだったかもしれないけれど。
ジャンの上司に対する憧れが増した瞬間だった。

「ジャン、お疲れ様」
「おう!やってやったぜ、オレの勇姿見てたかエイル」
「うん、ばっちり見てた。かっこよかったよ」
「そっ、そうか……!」

エイルに褒められて鼻の下が伸びているジャンの顔の前に、エレンの手がスッと伸びる。
バシ、という鈍い音と共にジャンの鼻の下を叩いた。

「ここ、すんげー伸びてんぞ」
「何すんだコラ!イテェな!!オレがエイルにかっこいいって言われたのが気に食わねえのか!」
「ああ、気に食わないね」
「はぁ!?お前なんなの!」

エレンは至極不満そうな顔でジャンに感情をぶつける。
ストレートに言ってしまうあたり、エイルへの好意を隠さなくなってきたようだ。
例の件の所為でもあるのだろう。
ジャンが肩を震わせていると、アルミンがその肩を宥めるように叩いた。

「はいはい、そこまでにしとこうよ。この後刃の補充しに行かなきゃいけないんだよ。忘れるなって言われたでしょ?」
「「忘れてねえよ!」」
「それだけ元気ならばさっさと向かってもらおうか」
「「ッ……!!」」

仲が良いのか悪いのか。
ある意味息ピッタリの二人は、リヴァイに怒られる前に我先にと飛び出していった。
アルミンはそんな二人を見てため息を吐いた。

「あいつらのお守りも大変だな」
「お守りっていうか……そうですね、喧嘩っ早いからヒヤヒヤします」
「ご苦労なこった。俺達も探しに行くぞ」
「あ、はい」

アルミンの肩をぽん、と叩き、リヴァイも刃を探しに移動を開始する。
アルミンは兵長に励まされた!と喜びながら、リヴァイの後に続いた。

「あれ、いつの間にか取り残されちゃったね私達」
「そうですね……ついさっきまで巨人と戦ってただなんて思えない雰囲気でみんな散らばっていきましたね」
「気持ちの切り替えも必要だからね、これでいいんだよ。いつまでも戦闘気分を引きずっていたら疲れてどっかでネジが飛んじゃうよ」
「なるほど……そういうところも柔軟にいかなきゃいけないのか」
「エイルだって仕事中は集中してても、それ以外の時はボーッとしてたりする事もあるでしょ?それと同じだよ」
「そんなもんですかねえ」
「そんなもんですよ」

ふぅん、と今一理解できてない様子のエイルだったが、ひとまず巨人を倒せた事に安心したのか力が抜けてしまった。
だが、休むのは本拠地に帰ってからだ。
もう一度気合を入れなおしたエイルは、ナナバに自分も行って来ると告げ、その場を後にした。
残されたナナバはエイルの姿を微笑ましく思いながら、みんなが向かった方向とは逆を探し始めた。


今回の討伐で駄目になった刃は全部合わせて4本。
そこまでのダメージでは無いが、しっかりと補充しておく事に越したことは無い。
今後の属性の巨人はどんな事をしてくるか想像がつかないため、万全の体制を整えておかなければならなかった。

今回は水だった。では、他は?
後は『火』と『土』と『木』と『金』。
最後のひとつはわからないが、今それを考えても仕方ないのだろう。
『土』と『木』はどんな攻撃をしてくるのか全くわからない。でも『火』と『金』はなんとなく予想ができる。
『火』は『水』のように炎を吐く。
『金』は雷のことではないのだろうか。
だとすると、水は避けることが出来たけど、炎と雷は防具もあったほうがいいんじゃないのかな。

色々考えた結果、エイルは刃ではなく防具を探すことにした。
その道中で刃が見つかれば万々歳だが、そう上手くもいかないだろう。
ゼノフォンがそこまで設定付けてくれているかは不明だが、もしかしたらあの紙に書かれていたことだけが全部とは限らない。
こんな不可解な空間だ、まだ謎は隠されていても不思議ではない。
史実によればゼノフォンは変わり者だったというし、わざと教えてくれない部分もあってもおかしくは無い。
あくまでもエイルの考えだが。


いくつもの民家を通り抜け、何かヒントがないかくまなく探してみる。
通り抜けてきた民家のひとつひとつはもちろん探索済みだ。
だが、今のところは何の結果も得られていなかった。

「……ん?」

次に入った民家で、一際大きな箱が目に付いた。
タンスというよりは本拠地に置いてあった立体起動装置が入っていた箱と似たような感じなのである。

もしやこれは。

期待しながら箱を開けてみれば、中にはボールペンほどの大きさの棒が人数分転がっているだけだった。

……何これ、期待はずれにも程がある。

これだけ大きな箱ならば、と開けてみたのに中に入っていたのは棒切れ6つ。

でもこれだけ重要そうに置かれているってことは、もしかしたら何かの役割があるかもしれないんだよねえ……。

よくよく見てみれば、その棒にはひとつの突起がついていた。
エイルはなんとなくでそれを押してみた。

「わっ!!」

すると、ただの棒切れだったそれが一瞬にして盾に変わったのである。
突起はそのためのスイッチだったらしい。

「うわあ、何これ!凄い凄い!!」

一人で居るにも関らず、思わず感動の声をあげるエイル。
これならば炎や雷の攻撃を受けそうになった時に使えるかもしれない。
その様子を頭の中で想像してみたが、ひとつだけ引っかかることがあった。

立体起動装置を使うには両手が塞がってしまう。
ならばこれはどうやって持てばいいのだろう。

だが、その解決策は即座に見つかった。
棒切れの形のまま持っていれば、立体起動の邪魔にはならない。
ポケットに入れておくと咄嗟の時に取り出せない可能性が高いので、そうなると立体起動装置に取り付けるしかない。

立体起動装置に取り付けて、簡単にスイッチが押せるようにすれば……。
うん、いいかもしんない。

さすがは発明家の子孫である。
エイルの頭の中では立体起動装置の図面が浮かんでおり、そこにどのようにこの棒を付け足せばいいのかを書き足したのだ。


よし、まずはやってみよう。
そう思ったエイルは棒を全部掴み取り、みんながまだ刃を探しているであろう中ひとり急いで本拠地へと帰るのであった。

早く帰って、自分の立体起動装置で改良を試すために。




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -