リヴァイが居なくなって、5年の月日が流れた。
あの日、私はしばらくその場所から動けなくて。 リヴァイの余韻に浸っておきたくて、リヴァイと過ごした一週間を思い浮かべながら、ひとりで延々と泣き続けた。 それこそ馬鹿みたいに。 見知らぬ優しい人が声をかけてくれたりもしたが、応える事なんて出来やしなかった。
人間の身体って不思議だよね、あんなに泣き続けても涙が枯れることなんて無いんだもん。
次の日から仕事に復帰したけれど、結局身が入らなくて辞めてしまった。 まるで抜け殻のようだった私がちゃんと生活をし始めたのは一ヶ月が経った頃。 それまでは碌に食事も入らず、痩せる一方だった。
そんな時、ふとリヴァイの事を思い出したんだ。
リヴァイには生きて、なんて言っておきながら、これでは私の方が死んでしまうじゃないか。 これじゃだめだ、リヴァイも向こうの世界で頑張っているんだから、私も頑張って生きないと。 そう奮い立たせて、ようやく普通の生活に戻す事ができた。 現在は細々とアルバイトをやりつつ、生計を立てている。
親には結婚はまだか、なんて言われているが、どうしても新しい恋愛をする気にはなれなかった。 生涯独り身でも悔いは無い。
あれから、リヴァイが登場するあの漫画は捨ててしまった。 新しく何巻か出てるみたいだったが、見て見ぬ振りをした。 物語がどうであれ、彼はきっと生きてるんだから。 だったら、その先を読む必要なんてない。
今日もバイトが終わり、自宅へと帰る。 リヴァイと一緒に過ごしたあの部屋だ。
リヴァイの為に買った服や、歯ブラシやコップ、その他の日用品はどうしても捨てられなかった。 それさえあれば、いつかまたこの部屋に帰ってきてくれる気がして。 何より、リヴァイと一緒に過ごした日々を忘れたくなかったから、私自身が捨てられなかったのだ。
こんなことなら写真も撮っておけば良かったな、なんて後悔したってもう遅い。
今だって、玄関を開ければリヴァイがいるんじゃないか、なんて思う事もある。
「私、今日も一日しっかり働いてきたよ。もうあの頃のリヴァイと同じくらいの年齢になっちゃったよね、きっと」
独り言のように呟きながら玄関の鍵を開けて。
お帰り、弥生
その声が聴こえることは、もう無いけれど。
私は、明日もこの世界で生きていく。
愛する人の幸せを願いながら――――。
|