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トビオ   魔法使い LV14
ツッキー  盗賊   LV10
グッチ   商人   LV11
キャプテン 戦士   LV15
スガ    僧侶   LV12
タナカ   戦士   LV13
ノヤ    武闘家  LV13
アサヒ   遊び人  LV5
チカ    僧侶   LV11
フミ    賢者   LV11


ドラクエと言ったら大体はカタカナで名前登録するじゃん。
勝手に書いちゃったけどこれでいいよね!

みんなに見られる前にささっとルイーダさんに名簿を提出する。
渡した直後、ルイーダさんはみんなが登録完了したお祝いだよ、とテーブルに人数分のドリンクを出してくれた。
その時、ふと違和感を感じたのである。

「……ねえ、なんか忘れてない?」

山口に聞いてみると、少し考えた後に『あっ!!』という大声をあげた。

「何だよ山口うるさいな」
「日向!日向はどこ行ったんだろツッキー!!」
「ひな……ああ、そういやあのちっこいのいないな」

山口の言葉にみんなの顔が青くなる。

「あいつ一人だけいないとか……まさかとは思うけど……」
「奇遇ですね、菅原さん。俺も同じこと考えてました」

あははー、と焦ったように笑いながら話すスガ先輩とチカちゃん先輩。

「二人共心当たりあるんスか?」
「田中、勇者って知ってるか」
「勇者?こういう定番ゲームの主人公ですよね……ってまさか、スガさん……」
「そのまさかだよ。俺と縁下が思うに日向は俺達がこういう職業に就いたみたいに、勇者になってるんじゃないかと」
「日向が勇者……」

田中先輩がスガ先輩の言葉を復唱すると、途端に吹きだしたのは一年三人。

「あ、アイツが勇者とか」
「そんな柄じゃないよねえ」
「あはははは!ありえない!」

影山、ツッキー、山口はそれぞれ日向をバカにしたように笑う。
確かに日向は勇者っていう感じではないよね。
職業で言ったらすばしっこさが武器なんだから盗賊か武闘家あたりがハマってるんじゃないかと思うんだけど。
でも日向家で起こった出来事だから、日向が勇者って言われても納得できるといえば出来るような……。



その時、酒場の入り口の扉が開いた。
扉の上部につけてある鈴の音がカラカラーンと酒場内に響く。

まさか、と思った全員がその方向を見ると、そのまさかだった。
勇者の格好をした日向が泣きそうな顔でこっちを見ているのである。

「み゛、み゛ん゛な゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」

みんなの姿を確認するなり、突進する勢いでこっちに向かって走ってきた。
そして一番近くにいた旭さんにドシッとタックルをかます。
まるで子供がお父さんにじゃれているようだ。

「気づいたらおれっ、おれひとりでっ!みんなの姿がどこにもなくてっ、おれひとりかと……!おうさまのところにいけっていわれて行ったら剣とおかねもらってルイーダの酒場行けっていわれてなにがなんだかわかんないままここにきたらみんながいたあぁぁぁぁ」

うわあああん、と一気に捲くし立てる日向。
どうやら一人でこの世界に来ちゃったのかと思って相当心細かったらしい。
気持ちはわかるけど混乱しすぎて酷いことになっている。
抱きつかれたままの旭さんはよしよし、と日向の頭を撫でてやっていた。
まさにお父さん……!だが遊び人の衣装で台無しだ!

そんな日向に主将が近づき、視線を合わせて肩に手を置いた。

「よく聞け日向。どうやら俺達は今異世界にきてしまったようだ」
「やっぱ夢じゃないのか……」

主将の言葉に反応したのは日向ではなくツッキーだった。

「ツッキー、夢だと思ってるの?」
「夢なら夢で早く覚めてくれって思ってたよ。山口は現実だと思ってたの?」
「いや、まあ俺も夢なら……とは思ったけど。でも今の主将の言葉でああ、やっぱ夢じゃないんだって思った」
「それなら僕と一緒じゃん」
「あ、そう言われてみれば」

二人の漫才もどきが終わったところで、主将がまた日向に話しかける。

「とりあえず全員揃って良かったよ」
「おれも!みんなと合流できてよかったです!」

未だ半泣きの状態なのにもかかわらず日向はキラキラした顔で主将に返した。

「さて、全員揃ったところでこれからどうするか、だね」
「スガさんの言うとおりだな。流れに任されて名簿に登録しちまったけど、どうしたら元の世界に戻れるかっつーのを考えねえとな」

スガさんの言葉に賛同した田中さんが皆に言った。
確かに流れに任されて名簿登録したものの、私達は一体どうやったら元の世界に戻ることができるのだろうか。
この際何故ここに来てしまったかはもうどうでもいい。
日向家で起こった出来事から想像するに、カセットがなんらかの不良接触でこの世界への扉が開いたとか、尤もらしいことを考えれば結論が出るのかもしれないけれど。
今はそれを求めてはいない。

清水先輩だって、もう日向家に来ちゃってるかもしれない。
早く帰らないとみんなの家族も心配する。

「それなんですけど……あのぅ……」

さっきまで半泣き状態の日向が、おずおずと口を開いた。

「どうした日向」

主将に促され、日向が次の言葉を発する。

「おれ、おうさまに言われました。ルビスのお告げで勇者代行は大魔王ゾーマを倒したら元の世界に戻れるって」
「大魔王ゾーマって……ドラクエ3のボスキャラじゃん」
「あれ、3のボスってバラモスじゃなかったっけ」
「チカちゃん先輩違いますよ、バラモスはその一歩手前ですよ」
「そうだったっけ」

そうです。
ドラクエマニアの私の情報は正確ですよ!
シリーズ通して全てのボスキャラ把握してますからね!

それよりも気になったことがひとつある。

「ねえ日向。勇者代行って何?」
「ああ、それ俺も気になった」
「スガ先輩も気になりますよね、勇者ならわかるけど代行って一体……」
「なんかこの世界の勇者がどっか行っちゃったからおれが代行なんだって言われた」

この世界の勇者がどっか行った?
なんじゃそりゃ。
日向は決して頭は良くない。
良くないが、重要なポイントは押さえてくるヤツだ。
だがしかし、さっぱり意味がわからん。

「俺達みたいに異世界に飛ばされたってことなんかな、この世界の勇者が」
「それ!それです西谷さん!おうさまが言ってたことそれです!!」

王様……そういやウチにも王様いたっけか、と思って影山をチラ見したら、瞬時にギロッと睨まれた。
それを見たツッキーと山口がニヤニヤしてる。
まだ口に出して言ってないのにそんなに睨むことないじゃん……!
勘が良すぎるんだよ影山!

「結局のところ俺達がその勇者代行として大魔王ってやつを倒さないと帰れない、ってことだな」
「大地……そう簡単にまとめるけどお前心配じゃないのか?」
「心配してないはずないだろ、旭。でもそれをやらなきゃ帰れないんならやるしかないじゃないか」
「主将の言うとおりッスね。帰る方法がそれしかないならやるしかないんですよ」
「西谷まで……いや、うん。わかるけどさ」

旭さんの言っている心配っていうのは現在元の世界で自分達はどうなっているのか、ということだろうか。
大魔王を倒すなんて言ったらもっとレベルも上げなきゃいけないし、冒険の数々をこなさなければいけない。
要するに旅に出なきゃいけないのである。
旅に出るなんて言ったらそれこそ何日かかることやら。
その何日かをここで過ごす間、私達ってどうなっちゃってるんだろうか。
集団行方不明として捜索願いとか出されちゃったりするんだろうか。

「大丈夫だよ史香、なるようになるって」
「田中先輩……」

私の気持ちを読み取ってくれたように田中先輩が勇気付けてくれる。

「帰ったら帰ったでその時はその時だ。まずはみんなで帰ることを考えようぜ!」
「はい、そうですね!」

なんて前向きなんだろう。
この田中先輩の前向きさには部活中もいつも助けられている。
プレイヤーじゃなくたって失敗して落ち込むこともあるんだ。
そんな時元気付けてくれるのが田中先輩だった。
ほんとこの人は名言の宝庫だな。





「じゃあまずは会議を行うことにしよう」

二つのテーブルの周りに置かれた椅子に、それぞれが適当に腰掛ける。
部活のミーティングのように主将が前に立って司会進行を務める。

「俺はこのゲームの内容を知らないから、知っているヤツに俺達の頭脳になってもらいたいと思う。俺は森永が適任だと思うんだが、みんなはどうだ?」

その言葉に全員が賛成の声をあげる。

「えっ、私!?ツッキーだって山口だってスガ先輩だってチカちゃん先輩だってドラクエ経験者じゃないですか」
「や、確かに経験者だけどさ、フミちゃんみたいに詳しく覚えているわけじゃないんだよなあ」
「そうそう、さっきもバラモスとゾーマがわからなかったくらいだし」

スガ先輩とチカちゃん先輩の態度を見てこりゃダメだ、と思ったので対象をツッキーと山口に変更する。

「僕もそこまで詳しくは覚えてないよ」
「俺も同じく、かな」

当然のように言い放つツッキー。
申し訳なさそうに答える山口。
山口の謙虚さをツッキーに少しでもわけられたらいいのに。

くそう、結局マニアレベルなのは私一人だけか!

「わかりました!私が指示を出しましょう!そのかわりアレですよ、私だって全てをきっちりと覚えているわけじゃないですので、その辺ご理解いただきたいです!」

そう告げると、誰からか拍手が巻き起こる。
やめてくれ恥ずかしい!
私はゲーマーでオタクですと豪語しているようなもんだぞ!

「じゃあ今から司会進行を代わってもらってもイケるか?」
「あ、はい。そのほうがいいですよね」

ガタッと席を立ち、主将と入れ替わる。

ホワイトボードみたいなのがあれば説明もラクなんだけどなあ。
そんなのあるわけないよね。

そう思いながらまずは何から説明しようか、頭の中で整理した。


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