16
隠し階段を発見し、更に地下へと下りる。
少し進んだ最奥の場所に目的のモノを発見した。

「……黄金の爪って棺の中に入ってるんだっけ」
「宝箱じゃなくて棺があるってことはそうだったってことだろ」
「え、この中に入ってんのか?これミイラとか入ってるんじゃないのか?」
「どれ、ちょっと開けてみるか」
「わお、主将大胆!っていうか怖くないんですか!」
「だってこの中に入ってるかもしれないんだろ」

そうだと言っても棺を躊躇無く開けるなんて凄いよ。
主将が棺を開けて、中に入っていた黄金の爪をノヤ先輩へと渡す。

「ホラ、これがその黄金の爪ってやつなんだろう。随分と重量があるな」
「すげえ……!これが、俺専用の武器……!あれ、そんなの重さを感じないッスよ?」
「装備できる人にとっては軽く感じるんじゃないですかね。他の武器も自分が装備できないと重く感じたりしましたもん」
「そんなもんなのか」
「そんなもんだと思います」

純金で出来ているのだろうか、武器として使うのがもったいないくらいに輝きを放つ爪。
盗まれたりしたら大変だから、戦闘時以外は隠し持っててもらわないといけないな。

「よし、あとは魔法の鍵を探すだ…………け……」
「ん、どうしたんだ森永…………う、」
「うわっ」
「ええええええ!!!」

上へと戻らねば、と振り向けば。

「なんじゃこりゃ、魔物の群れにも程があんぞ!!」

ノヤ先輩の叫び声が埋もれてしまう程の大量の魔物達。
しかもマミーとかミイラおとことかそういった類の怨霊軍団。

「森永!黄金の爪入手した時ってこんなんだったっけ?!」
「一歩か二歩ごとにエンカウントするんだけど、現実だとこんな感じなんだねええええ!!ノヤ先輩、それ!一旦放り投げてください!!」

ていうかエンカウント率はんぱねええええ!
最早エンカウント云々の話ではない、通路が魔物で埋め尽くされてて見えないんだもの……!!
実際こんなんでどうやって戦えと……!!

「ああ!?折角手に入れたのに放り投げるってどういうことだ!」
「いいから!とりあえず計画を立てたいので放り投げてください!」
「はあ!?あッ!月島何すんだ!!」

理解してくれそうにないノヤ先輩の腕から黄金の爪を引っぺがし、放り投げてくれたツッキー。
先輩に物怖じもせずそんなことしてくれちゃうツッキーもある意味男らしいよ。

「お!?一瞬にして消えたぞ!」
「なんだったんだ一体……」
「黄金の爪を取ると、魔物達とのエンカウント率が極限に増すんですよ。ゲームだと少し進んで戦って、っていう流れだったんで」
「それで一度手放せと。でも放り投げた爪はどこへ行ったんだ?」
「また棺に戻ってますよ。心配ないです」

ツッキーが説明してくれている間に私は棺の確認を行った。
思ったとおりに棺に戻っててくれて安心だ。

「さて、黄金の爪を取ると途端にああなるわけですが……どうしましょうか」
「どうするもこうするも、ど真ん中だけ叩きながら逃げるしかないんじゃないの」
「あー、俺も月島の意見に賛成かなあ。結局どう足掻いたってさっきのヤツらを倒さないと駄目なんだろ?」
「だったら全部相手にしててもキリがないよな」
「三十六計逃げるに如かずってことですね。皆さんの言うとおり、通れるスペース分だけ倒しながら走りぬけましょう」

逃げ切れるのかどうかが怪しいが、私にはほしふる腕輪もあることだしどうにかなるだろう。
主将とノヤ先輩のパワーとツッキーが頑張って道を切り開き、横に流れてきたものを私が叩く、と。
こんなことなら魔導師の杖じゃなくホーリーランスを借りてくれば良かったな。
槍のほうが杖よりもリーチがある分、なぎ払いやすそうだ。

こんなことを思ったところで、無いものは仕方が無い。
作戦通りに上手くいくことを願うのみだ。

「じゃ、再び行くぞ……!」

棺を素早く開け、そしてスチャッと装備して。
またもや現れた怨霊軍団を主将が先陣切って倒していく。
主将に並んでノヤ先輩もなぎ払い、更に後ろからツッキーの応戦。
最後に私がトドメでぼこぼこと杖で殴りつける。




「階段が見えたぞ!もう少しだ!!」

その声に気力を湧かせ、地下一階までどうにかこうにか切り抜けた。

少しの隙間を見つけてはすり抜け、時にはもみくちゃにされそうになり。
全員で攻撃の手を休めずに叩き続けて来たので、魔物がお金に変わってもそれを拾ってくる余裕なんてとてもじゃないけど無かった。
きっとゴールドに換算すれば結構な金額になっただろうに。
勿体無い。

「は、や、やっと、おわっ、た」
「さすがに、き、きつい……」
「あー、まじできつかったな」
「でも無事に通り抜けてこれたな!」

肩で息をしているのは私とツッキー。
ノヤ先輩と主将は疲れたと言いつつも、まだ余力がありそうだ。

「どうする?少し休むか?」
「い、いえ、ここはまだ地下ですから呪文が使えないので……一階まで戻ってから休憩……っていうか回復呪文かけますから」
「回復呪文がなくても薬草があるだろ。何のための大量購入だよ」

ああ、そうか。
薬草をたくさん買ってもらっておいたんだっけ。
ツッキーに言われて思い出し、全員で薬草を使った。
最初はどうやって使うのかなって思ってたんだけど、煎じて飲むっていうより丸ごと飲み込む感じ。
口に入れてから苦い味を予想して待っていれば、そんな変な味でもなくすんなりと飲み込むことが出来た事には感動した。
良薬は口に苦しと言えども、この世界では関係ないらしい。

「史香は大丈夫か?まだいけるか?」
「大丈夫です。薬草のおかげで回復できましたし、今度は上を目指していくので魔法も使えますし」
「呪文が使えないのって地下だけだったっけ?」
「うん、多分ね」
「それならば今日中に攻略してしまおう。行くぞ」

再び主将を先頭に、私達は上を目指して進む。
とりあえず地下一階を脱出すると、魔力を体に感じたのでホッとした。
普通に生活してたら魔力を体に感じるなんて可笑しいよな、と思いつつ含み笑いをしてしまった。
……よし、誰にも見られてない。

「落とし穴は二つあります。さっきの場所と、その奥と。端を歩いていれば大丈夫なのでゆっくり進みましょう。ツッキー、宝の匂いは?」
「んー……この階はあと八個、かな。でもピラミッドってひとくいばことかあったんじゃなかったっけ。森永インパスできる?」
「インパス?できるよ。じゃあ全部の宝箱の前で使うね」
「そうしたほうがいいよ」

インパスの呪文効果を知らない二人のために、インパスとは宝箱の中身が危険かそうじゃないかがわかるんですよ、と説明しておいた。
ノヤ先輩が俺達の世界にもあれば便利な呪文なのになとか言ってたけど、私達の世界にはひとくいばこなんてものは存在しないからいらないと思います。
夢を壊してはいけないので、心の中に留めておいた。
ルーラはあったら凄く便利だと思うけどね。


宝箱の前に行くたびにインパスを唱えて。
赤く光る宝箱はスルーするのかと思いきや、相手が口を開ける前に攻撃をしかけたツッキー。
『先手必勝だろ』なんて言ってたけど、それはある意味卑怯者…………何故睨む。
心の声が読めるのかお前は。
痛恨の一撃を食らう前に倒せるのは確かに得策だとは思うけど。

他の敵と出会いつつも、先程みたいに激しい戦闘はない。
無難に戦いながら宝箱の中身をスムーズに回収していく。
そうして三階にたどり着いたものの、奥へ繋がる扉が押しても引いてもビクともしない。

「この扉は一体どうやって開けたらいいんだ……!」
「あ、ノヤ先輩。あれですよ、子供達から教えてもらった歌。そうだったそうだった、両端にボタンがあるので歌のとおりにそれを押さないと開かないんでした」
「ちなみにその歌の内容ってメモってきたの」
「任せろツッキー!ちゃんと地図の裏に書き込んで来たよ!」

ホラ、と見せると当然だと言わんばかりに私の手から地図を奪い取った。
ちょっとぐらい褒めてくれても……!
主将とノヤ先輩がアメならツッキーはムチの役割だな。

「えーと……東の西から西の東、西の西から東の東……ボタンて全部で四つだったっけ?」
「確かそうだったと思うよ」
「ていうことは、この階段を背にして東が右だから……」
「右から数えて二番目、三番目、四番目、一番目の順番でボタンを押しにいけばいいのか?」
「さすが主将、頭の回転速いですねー……それで大丈夫だと思います」

実際ゲームで東西南北って結構ごちゃごちゃになったりする。
北と南はわかるんだけど、東と西がどっちだったかなってわかんなくなっちゃうんだよね。
頭のいい人達が一緒で有難い。

主将の言うとおりに早速ボタンを押しに行き、最後のボタンを押し終えると同時にゴゴン、という地響きみたいな音がピラミッド内部へと響いた。

「扉が開いたのか?」
「そうですね、これで先に進めますよノヤ先輩!」
「うっし、じゃあサクサク進もうぜ!」

再び扉の位置まで戻ると、思ったとおりに綺麗に開かれた扉。

「こっち、真正面から宝のにおい」

ツッキーの先導でそのまま真っ直ぐに進むと、宝箱を二つ発見した。
インパスを唱えても両方とも赤くは光らなかったので、安心して開ける。

「お……これ、魔法の鍵か?」

中から取り出した鍵をまじまじと見つめる主将。
それはまさしく魔法の鍵だった。
もう一つの宝箱からは素早さの種が。
これは後で一番素早さの低い人にあげようと思い、袋の中へとしまい込む。

「ピラミッドの目的って魔法の鍵だったよねえ。どうする?これで終わりにする?宝のにおいはまだプンプンしてるけど」
「なんだよ、宝がまだあるんなら全部回収していこうぜ」

ツッキーが私に問いかけた事に関して、ノヤ先輩が反応した。
ノヤ先輩の言うとおり宝は全部持って帰らないともったいないよなあ……もうこのピラミッドには来ないと思うし。

「そうですねえ……とりあえず全部回収しましょうか。ただ、宝箱がごっそり固まった場所ではひとつ開ける毎にさっきのミイラおとことか出現しますから、開けたら戦闘態勢をとってくださいね」
「さっきみたいに大量発生するのか?」
「いえ、出ても最大で4体くらいまでだったと思います、主将」
「そうか。それなら何の心配もないな。よし、最上階まで攻略してから帰ることにしよう」

何の心配もないとかほんと頼もしい。
主将の決定に皆で頷き、階段を目指してどんどん先へと進む。
上の階には先ほど説明した宝箱がかたまった場所があり、ひとつひとつ開けつつ戦闘を終わらせて、全てのアイテムを回収した。
そして階段をひとつ、またひとつと上がって最上階へ辿りついた頃にはそこそこのお金と装備品を手にする事が出来た。


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