4話 学園探索しました「ふー、ようやく落ち着いた」
「俺も」
とりあえず腹ごなしをしてしまおうと、二人してかっ込んだ。
食器も返却し、自販機でコーヒーを買ってきて、また席に着く。
「で、さっきの話だけど。他にも知ってるヤツいた?」
「ウボォーギンとミルキも同じクラスでした」
「ん? それだけ?」
「それだけってどういう意味?」
「や、姉ちゃん蜘蛛組っしょ? 他に団員いなかったの」
「蜘蛛っつっても、あんまり関係ないみたいよ」
「そうなんかあー……、まあ、そうなのかもな。ウチのクラスにマチとフェイタンいたし」
「えっ、その二人1年生なの?」
「そうみたい。あとキルアもいた」
「ゴンは?」
「隣のクラスっぽい」
なん……だと……!
ゴンとキルアはセットだと思っていたのに!
この世界じゃそんな常識は無いのだな……!
「あんた何組?」
「月組」
「綺麗でいいな! 蜘蛛組って……無いわー」
「でも、2年の他のクラスは蜥蜴と蛙だし、どれでも一緒じゃない? ちなみに1年は太陽、月、星。3年は薔薇、菫、向日葵だってよ」
「2年だけオカシイのか」
「誰が名付けたんだかねー。1組2組とかじゃダメだったんかな」
「そういう感性の世界なんだと思うことにするわ」
「受け入れ早いな姉ちゃん!」
考えたところでどうにも出来ないし、受け入れちゃったほうが楽なんだもん。
どうでも良いこと考えるの、めんどい。
「ところで、部活に誘われたんだけど」
「は? 部活って何の?」
「トレジャーハンター部だって」
「トレジャーハンター部……幻影旅団の名残なんかな」
「旅団と言えばお宝集めは活動の一環だものね。そうかもね」
「で、入るのか?」
「いや、他に何があるのかもまだわからないし、大変そうだから多分入らない」
「でも姉ちゃん、旅団好きだよな?」
「好きだけど。それとこれとは別だよ」
「推しってシャルナークだろ? 一緒の部活とか青春じゃないの? 二度目の青春、楽しまなきゃ損だぜ?」
「何だそのどこぞのキャッチコピーみたいな言い方。推しと同じ部活とか幸せ過ぎて心臓止まるわ!」
「一回止まってるから大丈夫だろ」
「いやいや大丈夫じゃないだろ、二度目の人生も老衰まで頑張るって決めたんだよ」
「確かに。はっはっは」
そりゃそうだ、なんて暢気に笑っている翔。
ある意味羨ましい。
「翔は誰かと接触なかったわけ?」
「俺はキルアと少し喋ったくらいかな。それ以外は特に」
「そういや、10年間で知ってるキャラとの接触は?」
「親戚のおじさんにモラウがいたのと、三年前に引っ越してきた後の近所の商店街の肉屋にトンパ、花屋にパームが居るのは知ってる」
「まさかの親戚」
「俺もビックリした、この世界にキャラがいるのは知ってたけど、なかなか出会わないし初めて会ったのがモラウ叔父さんとか」
「モラウ叔父さん」
モラウ叔父さんって響きがしっくり来すぎて笑う。
そうか、モラウが叔父さんなのか。
トンパが肉屋は似合いすぎるし、パームの花屋も……うん、きちんと身だしなみを整えている状態だったらめちゃ似合う。
「とりあえず探索してから帰るか?」
「そうだね、せっかく腹ごなししたんだし。他のキャラにも出会えたら万々歳、みたいな」
「だよな! キャラ探しもしたいよな」
「よし、行こう」
食堂を後にし、案内図を手元に一階から順番にうろうろしていく。
途中外に目をやると、校庭は400メートルトラックが二つあって、陸上部らしき生徒達が準備体操をしていた。
その奥には野球部、サッカー部。
テニスコートやプールは別の場所にあるようだ。
一階は昇降口や職員室、教科毎の準備室など。
理科準備室からはカップラーメンのいい匂いが漂っていた。誰かがビーカーとかでお湯沸かして食べてんのかな。
二階、三階が生徒達の教室。
二階は1年生と2年生の蜘蛛組。
三階は残りの2年生と3年生。
だから翔はすぐに迎えに来れたんだな。
学園自体は棟が二つあって、片側は一階二階が体育館。
三階は映画館並みの視聴覚室だった。
午後まである日の放課後は、毎日何かしらの映画が上映されているらしい。
もちろんタダで観れる。
「外観だけでもわかってたけど、やべえ広いな」
「特にこの視聴覚室、映画タダ観とか嬉しすぎるよね」
「姉ちゃんどんな映画が好きなんだっけ?」
「無音で観るホラー映画。めっちゃ笑えるよ」
「ああ……そうだった、映画の趣味は合わないんだった」
「あんた、ホラー苦手だもんね」
「まあ、音が無ければ俺も観れるとは思うけど」
「冒険モノとかファンタジーとかやってたら一緒に観ようよ」
「おうおう、そうしよう!」
案内図に目線を戻せば、大体学園内は見回れたようだ。
「翔、そろそろ帰ろっか」
「もう全部終わったっぽい?」
「うん」
「おー、じゃあ帰ろ……っ!」
視聴覚室から出ようと、翔がドアに手を掛けたと同時に、それがガラガラッと勢いよく開いた。
「おっ、ワリィな。人が居るとは思ってなくてよ」
「「…………」」
人間なんだけど、人間なんだけど……この人、キメラアント編に居たよね?
「き、今日は上映してないみたいですよ?」
無言のままじゃ失礼かな、と、恐る恐る声を掛けてみる。
「あぁ、わーってるよ! オレぁここで寝るのが好きなんだ。オマエラもうどっか行くんだろ?」
「あ、なるほど。行きます行きますごゆっくりどうぞ〜」
「おう、じゃあな」
固まってる翔の背中を押しながら、視聴覚室を出た。
確かにあの椅子は気持ち良さそうだ。
寝るのにはもってこいなんだろう。
だがしかし、だ。
「……キメラアント編のキャラも居るとは思わなかった……、ビックリした」
「っ、だよな!?」
「声がでかい!!」
「あだっ!」
突然反応した翔に、更にビックリしたわ。
探索していて知ってるキャラに出会わなかったから、最後に出会うとは思ってなかったんだよ。
それにしても、人間ヂートゥ……イケメンでした。
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