31話 敵に遭遇しました
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※グロ注意※








セクドロ遺跡までの移動手段。
もちろん、自前の足。
街じゃないから再来《リターン》は使えないし、一番近いのがマサドラだからそのまま走るだけ。

「なんてゆーか……ご迷惑お掛けしました」
「迷惑なんて思っていないから、心配するな」

今度こそ! と思って、私もちゃんと走っていたんだ。
最初こそ付いていけてるじゃん、と思っていたんだけど、それは皆がスピードに乗っていなかったからであって。
クロロがそろそろスピードアップするぞ、と言い出した時には耳を疑った。
しかも翔も「おー!」なんて普通に返していたからね、あれこれ私置いてけぼりフラグ? と思っていたら、今度はクロロにお姫様抱っこをされてだな。
しかも耳元で「ナオが速く走れないのはオーラを見ればわかる。しっかり捕まっていろ」なんて囁かれたら、返す言葉も出てこなかったよね。

「途中で抱えようと思ってたけど、今回は団長にいいとこ持っていかれたなあ」
「シャルもわかってたなら先に教えてよ……なるべく速く走れるように努力するけど、速くなるまで毎回こうだと思うと恥ずかしいを何度体験すればいいのか」
「そのうち慣れるんじゃない?」
「軽く言ってくれちゃって」
「あら、シャルや団長が嫌なら私が抱えてもいいのよ」
「パクが強化系なら喜んでお願いしたいけど、違うよね?」
「私は強化系ではないけれど、ナオ一人くらいなら余裕で抱えられるわ」
「余裕」

次の機会があれば、是非パクノダ姉さんにお願いしようと思います。

「団長、ワタシ先頭でいいか?」
「ああ、頼んだ」
「了解。行くよナオ」
「私!? 何で!」
「先頭が一番危ないからに決まてるね」
「???」

何故それで私を連れていくのかがわからないから聞いたんだけど?

「全く、フェイは説明省きすぎじゃない? ナオの頭にクエスチョンマークしか浮かんでないよ」
「説明面倒よ。代わりにシャルがすればいいね」
「そんなら俺に先頭譲ってくれる?」
「それは嫌よ。順番的に今回はワタシだたはずね」
「ちぇ」

先頭を進むにあたり、順番が決まっているらしい。
先頭なんて私は嫌だけど……旅団の面々は嬉々として進んでいきそう。

しぶしぶながらもシャルが捕捉してくれたのは、先頭は一番危険に遭遇しやすいから、オーラの相性がいい人の近くにいると回避しやすいんだと。
翔でも十分な効果はあるが、異性の方がより効果が発揮されるということで私、なんだそうだ。

フェイタンは回避しやすくても、私は危険なんでない? 
私も回避しやすくなるってこと?
そもそもフェイタンと私ってオーラの相性がいいの? 
それとも我々姉弟が万人受けタイプな感じ?
わ、わからんー!
他力本願で申し訳ないけれども……いざとなったら守って貰えるのかな。

不安が解消されないまま、遺跡の中に入っていくフェイタンの後ろに続いた。
私の後ろにはシャルナーク、パクノダ、翔、クロロの順。
ダンジョンとかって後ろも割と危ないんじゃないの、と思ったが、クロロなら何の心配もないか。

遺跡は地下に続いているようで、中は薄暗い。
少し進んだところにスイッチがあり、フェイタンがそれを押すと階段に電気が点いた。

「アッサリ押すからびっくりした」
「オーラが見えないものは平気よ。罠がある時は大体オーラが見えるね。稀に見えない時もあるけど」
「目にオーラを集中させたら見える?」
「そうね。走る時は足、見る時は目。使いたいところにオーラを寄せればいい」
「なるほど……」

教えて貰いながらも、何となくオーラが目に集まるように意識をする。
……が、どうやら私にこの行為は向いていないらしい。

「駄目だ、目が疲れる」
「ナオ、これも練習次第で見えるようになると思うよ。もちろん、向き不向きもあるから出来ないままの人もいるだろうけど。旅団内でも出来ないの、いるよ」

シャルナークに捕捉してもらえるのは有難い。
フェイタンも教えてくれはするけど、割と簡潔に終わっちゃうからなあ。

「そっかー、練習して見えるようになればいいけど。翔は? 見える?」
「俺も見えなーい!」

大声を出さなくとも、然程距離があるわけじゃないから聞こえるのに。
そう思って前に向き直ると、階段を下りきった所でフェイタンがピタリと足を止めた。

「敵が来るね。ワタシ一人で十分よ」

手で追い払う仕種をしたので、少し後ろに下がるとシャルナークにぶつかった。

「おっと」
「あ、ごめん」
「いや、大丈夫。フェイタンが早く敵に気付いたのも、ナオと翔のお陰だろうね」

言いながら私の肩を掴み、もう少し後方へと下がらせる。

「そんなに離れなきゃいけないの?」
「そうだよ、だって……そろそろ聞こえるだろ?」
「ん?」

耳を澄ませると、地響きの音……ドシン、ドシン、と一定の間隔で聞こえてくる。
その音はどんどん大きくなって、通路の奥から体はオレンジ、目が一つの巨人が…………で、でかくなーい?

「「げええ、なにあれ……」」
「一つ目巨人の亜種だ」

亜種なんてものが存在するのか。
私達に気付いた一つ目巨人の亜種が、グオオオオと雄叫びをあげたので思わず耳を塞ぐ。
今は前にフェイタン、後ろに皆がいる状態だから怖い気持ちも少しで済んでいるけど、これ一人で出会って戦わなきゃならないってなったら尻尾巻いて逃げる可能性大です。

敵が足を早めてフェイタンに襲い掛かろうとしたが、フェイタンはそれを交わして壁を蹴りつつ飛び上がった。
それから、背中の傘で攻撃を仕掛ける。
目を突いた後、首に斬りかかって……一瞬のうちに、巨人の首が飛んだ。

「「ぎゃああああ!!」」

そんな光景に慣れてなどいない私達姉弟の叫びが、遺跡内にこだまする。

「叫ぶと他の敵も集まってくるよ」
「ヒッ」
「ヒイ!」

慌てて口を塞ぐも、時すでに遅し。
通路の奥から次々と出てくるモンスターの数々。

「フェイタン、加勢しようか?」
「チ、逃したヤツなら好きにするといいね」
「了解。じゃあ、ナオと翔はパクと待っててね」
「パクと、って、クロロは……」

言い終える前に頭上を飛び越えたであろうクロロの姿が、既にフェイタンの隣にあった。
団長自ら意気揚々と前線に行くのかよ!

「みんな戦闘好きなのよ。私達は終わるのを待ちましょう」
「はい……」
「俺もそのうち戦えるかな」 
「あんた戦うつもり!?」
「そりゃ、男が待っているのはカッコ悪いじゃんか」
「首が飛んでも叫ばなくなったら、戦わせて貰えるんじゃないかしら」
「首……」
「「うぉわあああああ!!」」

首の話になった瞬間、階段下にデカイ蛇の首が飛んできたからそりゃもうびっくりした。
さっきの一つ目巨人の亜種も、このデカイ蛇も、すぐに消えて無くなったけれどグロいもんはグロいよ。
こわいーいやだー

「パクは平気?」
「私は……慣れたわ」

最初は私達みたいにびっくりしたりしてたのかなあ。
取り乱すパク姉さんも可愛いだろうなあ、見たかったな。

「片付いたから先に進むぞ」
「「早っ」」

クロロに呼ばれて通路を見れば、一匹も残っていない。
割とたくさん出てきたように見えたんだけど、こんな一瞬で終わるとか……流石幻影旅団。

手招きをするフェイタンの側に駆け寄って、再び歩き出す。

「ナオはもと女らしさを身に付けたらどうか」 
「女らしさって、何よ突然」
「翔と同じ悲鳴ていうのは女としてどうかと思うよ」
「え……そりゃ、翔と同じっていうのは自分でもどうかと思うけど、それ以前にフェイタン、女らしさとか興味あるの」
「時と場合によるね」
「……そうか」

やっぱりフェイタンの考えていることはよくわからない。
考えるな、感じろってか。無理だよ。

「どっちにしろ私に女らしさは難しいんじゃないかなあ」
「まあ、ナオが女らしくしてても気持ち悪いだけね。ハハハ」
「おいこら」

気持ち悪いと思うなら身に付けたらどうか、とか言うなよ。

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