29話 能力をばらされました
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「ナオも災難ね」
「パクノダの衣装と取り替えっこ……、は、いいや」

パクノダはスーツだから交換してもらえば、と思ったけれど、パクはパクで胸元強調しまくりのスーツだったんだ。
制服の時と違って色気ムンムンですよ姉さん。

「目一杯動いても全然見えないのよ意外と。そういう仕様なんじゃないかしら? 意図的に引っ張られたりしない限り、大丈夫だと思うわ」
「パ、パクノダ姉さん〜」

小声で教えてくれたその情報、とても有難い。
気にしながら動くのと、気にしないで動くのでは行動範囲もかなり変わってくるもんね。良かった。
好きですパクノダ姉さん。

しかしあれだな、こうやって過去の記憶にある衣装を着ている皆を見る機会なんてないと思ってたけど……はぁ、眼福。

「団長、今日は何からやるんだ?」
「そうだな、まず二人の能力を把握する事と……運試しかな」

フィンクスがクロロに問うと、クロロは顎に手を当てながら考える素振りで答えた。
フランクリンは無口タイプなのか、無言でクロロの後ろに控えている。

「能力……、披露しないとだめ?」
「仲間内の能力は把握しておきたいんだが……変な能力だったのか?」
「変っていうか、えーと……」
「シャル」
「ナオの能力は回復系だよ、使い方がちょっと卑猥だから言い淀んでいるだけだと思う」
「うわー!! どうしたら言わずに済むか考えてたのに!!」

煮え切らない私に対し、クロロはシャルナークに目配せをして。
いともあっさりと吐かれてしまった……。

「団長前にして回避出来るわけないよ。ナオはバカね」
「フェイタンうるさい」
「おー、卑猥ってどんなだよ」
「言うほど卑猥じゃないよ! き、傷口にキスするだけだよ」
「姉ちゃん……まじかよ」
「うるさいなアンタも私の気持ちを考えてよおおおお!」

フランクリン、そしてパクノダまでもが哀れみの表情で私を見ている。

「回復なんてレア中のレアだぞ。もっと誇ったらどうだ」
「クロロは嫌じゃないの、私がキスするんだよ」
「それで傷が治るのなら大歓迎じゃないのか。何も唇にするわけじゃないんだろう」
「っ、」

それが、そういう可能性もあるんです。
絶対言わないけど。
シャルナークをギロリと睨めば、流石に目を逸らされた。

「お前達だって問題ないよな?」
「俺はさっき嫌じゃないって言ったよ」
「ワタシも気にしないね」
「俺は口だっていいんだぜー、ッテェ! なにすんだよパク!」
「ナオの気持ちも考えなさいよ。私はもちろん大丈夫よ」
「俺も、ナオが嫌じゃないなら問題ないぞ」
「お、俺……頑張って怪我しないようにするわ」

翔の反応がまともに見えるのは何故だ。
姉弟だもんな、小さい子供同士ならまだしも、一応お互ジジババまで生きた身だもん、嫌だよな。
逆の立場でも嫌だよ。
そしてパクノダ姉さんナイスげんこつ。
フランクリンは言い方が優しい。

「文句言うヤツは今後同行させないから、安心しろ。ナオはわかったとして、翔の能力は?」

お、おう。
軽く流されてしまったよ。
私が気にしすぎなのー??
後々文句言われても知らないからな!

「俺は魔導系だった」
「翔もレア中のレアよ。やはりオーラが良いだけあるね、姉弟揃てレア中のレアなんて宝くじが当たたようなものよ」

私の回復系もだけど、翔の魔導系も完全なるイレギュラーだからレア中のレアって言われても実際よくわからん。
RPGで良くある魔法が使えるみたいだけど……変化系×放出系って感じなのかなあ。

「いいなー、私も魔法とか使ってみたい」
「姉ちゃんだって言わば回復魔法の使い手じゃん」
「使い方が手を翳す、とかだったら良かったんだけどね。あー羨ましい」
「あんま拗ねるなよ」

ブツブツ文句を言っていれば、クロロに肩を叩かれた。

「お前達は全員で守るからな。力を貸してくれ」
「は、はい」
「了解!」

キリッと言われたら突っぱねられないじゃないか。
仕方ない、こうなったら……気持ちを切り替えて、精々私もゲームを楽しむとしよう。

「次は運試しって言ってたよね? 何をすればいいの?」
「ああ、二人にはカードショップに行って、スペルカードを5パックずつ買ってきて欲しい。1パックにつき3枚入りだから、合計15枚だな」
「カードショップ? 俺達、お金持ってないけど……」
「金ならシャルから貰ってくれ」
「はいはーい、俺が纏めて持っているから心配ないよ。二人とも一緒のカードショップに行く?」

一緒の、って事は何件かあるのかな?
ちょっと姉弟で相談しておこう。

「翔、どうする?」
「運試しっていうんなら、ショップ選びも重要じゃない? ここは別々に行こうぜ姉ちゃん」
「オーケー、勝負だね。負けたらどうする」
「二週連続風呂掃除!」
「よし、乗った。シャル、私達別々のショップに行く!」
「了解、そしたらナオは俺と、翔はフェイタンと、でいいのかな団長」
「ああ。俺とパクは情報収集に行く。フィンクスとフランクリンは……そうだな……この場所から割と近いし、キングホワイトオオクワガタを入手して来てくれないか」
「団長よ、キングホワイトオオクワガタって、こないだウボォーが取りに行ったんじゃなかったか?」
「ウボォーはカード化した後、バインダーに入れるのを忘れていたんだ」
「ああ……理解したぜ」

フランクリンは想像が出来てしまったのか、呆れた表情になった。

「仕方ないな。フィンクス、行くぞ」
「チッ、ウボォーの尻拭いかよ。イマイチやる気出ねーな」

フィンクスはブツブツ言いながらも、前を歩くフランクリンの後を追って行った。

「じゃあ俺達も移動しようか。フェイタン、そっちは任せたよ。これ渡しておく」
「フン、言われなくともわかてるよ」

シャルナークがフェイタンに渡したのはお金が入った袋っぽい。
どうやらお金はカードではないようだ。
カード状態じゃないと使えない、っていうのは相当面倒臭いなと思っていたからこれは助かる。



パクノダとクロロに見送られ、私達は別々の方向に向かって歩き出した。

「ねえシャル、このマサドラにはカードショップはいくつあるの?」
「五個だったかな? 一番近い場所にあるところが有名なお店で、大抵行列になってる。他のプレイヤーはゲン担ぎでそこに並ぶみたいだよ」
「ゲン担ぎって、宝くじ買う時みたいに良く当たる場所で買いたいってこと?」
「そうそう。結局は個人の運だから、あんまり関係ないんだけどね。群集心理ってやつだよね」
「そうだねえ。個人的に並ぶのは好きじゃないから、ちょっと遠いところでもいいので他の場所教えて」
「オッケー」

しばらく街中を歩いて、次のカードショップに辿り着いたのだが、何だか陰気すぎる雰囲気なので入店を拒否してしまった。

「もう一つは歩くと結構かかるから、走るけどいい?」
「うん。あ……、グリードアイランドをプレイ出来るってことは、私も早く走れるようになったのかな」
「上手くオーラが使えれば、イケると思うよ」
「オーラってどうやって使うの?」
「んー、例えば走る時だと足に流し込む感じ?」
「足に流し込む……」

言われた通り、足に流し込む感じというのを自分なりに解釈してやってみると、じんわりと足が暖かくなってきた。
オーラの使い方は然程難しく無さそうだ。

「割と簡単だろ?」
「うん、こんなすぐに出来るとは思ってなかった」
「こんな簡単でも、残念な事にオーラの使い方に気付いてないプレイヤーもいるからね。勿体無いよね」
「それは勿体無いね……折角グリードアイランドに適性があったのに」
「教える義理もないし、ライバルが減るのは助かるから知らないままでいいけど。そしたらナオ、ちょっと走ってみてよ」
「わかった」

シャルに促されて走り出すと、さっきブーツの感覚を試すのにちょっとだけ走ってみた時よりも軽快な走り出し。
次第にスピードも乗って、現実じゃ有り得ない速さで走ることが出来ている。

「いいねー、なかなか速いじゃん」
「ほんと? 確かに速いかもだけど、シャル達もっと速く走れるよね?」
「まあね、そこは個人差もあるし熟練度もあるし……ってことで、スピードあげるよ」
「えっ、ぅわぁ!?」

一瞬体が浮いたと思ったら、シャルナークにお姫様抱っこされてる……!
だがしかし、速すぎるスピードを耐える事が第一で、羞恥心なんかどこかへいってしまった。
落とされる事はないだろうけど、落とされまいとシャルにしがみつくのに必死だった。

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