23話 刺客が来ました
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「あ、いたいた!翔のおねえさーん!」

入部届けも昼休みのうちにクロロに渡した。
放課後になって、イルミとヒソカが何か仕掛けてくる前にさっさと帰ろうと思ったの。
頭が疲れたから当分摂取したくて、ケーキでも買いに行こうかと思ってたの。

しかしだな、可愛い声で呼ばれたらシカトするわけにはいかないじゃないか。

ヒソカめ、刺客を差し向けたな……!

「ゴンとキルアじゃん。ナオに用事?」
「ああ、何だよシャルナーク! 邪魔しないでよ」
「そーだよ、俺達がナオに用事があるってわかってんなら退いてよ」

咄嗟にシャルが私の前に出たから、一瞬にして可愛いお顔が見えなくなった。
匿って貰えるのは有り難いけど、私、この二人とはお話したいわ。
シャルの横からひょっこり顔を出し、二人を間近で見る。
……めちゃめちゃ可愛い!! この子達本当に高校生?? 原作年齢そのまんまでない?

「初めまして、ゴン、だよね。ナオでいいよ。キルアは二度目まして! この間はありがとう」
「あっこら、折角隠してるのに」
「わかった、ナオ! よろしくね」
「おお、覚えてなくていーのにそんなの」

ごめんよシャルナーク、私の欲が勝ってしまったよ。

「キルア、ナオと何かあったの?」
「大したことじゃねーよ、ナンパ三人衆に声掛けられてたから追い払っただけ」
「ああ、あいつらか。確かにナオは可愛いもんね、声掛けちゃう気持ちもわかるよ!」

天使が……ここにいた……!!
ゴンに可愛いとか言って貰えちゃうこの世界、最高じゃねーの。

「シャル、私ゲーム部に」
「トレハン部への入部届けは受理しました!」

最後まで言わせてくれ。
被せるのやめて。

「ゴンとキルアと楽しく部活動したいよ」
「……ナオ、忘れたの?」
「何を?」
「ゲーム部、なんで嫌がってたんだっけ?」
「ああああそうじゃんね!? 嫌だわダメだわ」

ゴン、キルアパワー恐るべし……!
ヒソカの存在忘れさせるって半端無いよこの子達! 恐ろし……あ、だから刺客に寄越したのか!

「ちぇ、やっぱダメかあ。翔はまだ迷ってるみたいだから、ナオをどうにかして勧誘出来たらなーって思ってたんだけどな」
「将を射んと欲すればまず……」
「シャル、何て? 私のこと馬って言いたいの?」
「そんな事言ってないだろー。やーい、ナオの被害妄想」
「今の流れだとそうなるでしょうが! 何が被害妄想か!」
「「…………」」

シャルと言い合いをしていたら、ゴンとキルアが空気になってる!

「二人とも仲良しなんだね。それじゃ、転部も無理かなあ」
「そーだな、せめて翔だけでも確実にオトそうぜ!」
「わかった! じゃあ、シャルナークもナオも、またね!」
「まったなー!」
「おっ、う、うん、またね……」

シャルと仲良し言われるのも嬉しいけど、私、部活云々抜きにしてあなた達とも仲良しになりたいです……去るの早いです……。

「台風のようだったね」
「うん、もっとお話したかった」
「ナオはああいうのが好きなの?」
「うん、好き好き! 可愛いじゃん。どっかの誰かさんと違って天使じゃ……うわわわわ頭禁止頭禁止!!」

どっかの誰かさん、でシャルナークを見れば、頭をがしっと掴まれた。
少しずつ力を入れていくもんだから、そのうち頭割れちゃう!! と思って必死で抵抗する。

抵抗する、けど、ピクリとも動かないよね……!

「ナオ、力弱いなあ」
「私の力が弱いんじゃなくて、シャルが馬鹿力なんでしょ! 私の頭を掴んでいるのがウボォーじゃなくて心底安心してるよ!」
「あっはは、ウボォーだったらヤバいね」

笑いながら手を放してくれたけど……冷や汗かいたよ。

「とりあえずゴンとキルアはもう勧誘には来ないだろ。翔の方も、手を打っておかなきゃな……ねえ、うちの女衆で翔の好みっぽいの、いる?」
「んー、好みってか、翔にしてみたら三人とも好感を持つタイプだと思うけど……強いていうならマチかな?」

翔だって旅団は好きだから、女の子達だってみんな好きだと思うぞ。
でも、マチみたいな強気の美少女は多分一番好きだよね。

「マチね、オッケー」

言いながら、スマホを操作し……ああ、これは私にもわかった。
マチに翔を勧誘させる気だな。

「よし、っと。ナオがこっちに入った時点で翔も雪崩れ込んでくるとは思っているけど、キルアと翔は同じクラスだし、ゴンもグイグイいくから油断ならないからなあ」
「やっぱ二人とも欲しいわけ?」
「何言ってんの、当たり前じゃん。片方が効率良いのと、手分けしても効率良いのと、どっちがいいと思うの」
「そりゃ、後者だよね。当たり前ですね」
「そうそう。まだストーリーでいうと中盤手前、くらいしか進んでないからね。なるべく早く進めたいんだよ」
「ちなみにそれっていつから始めたの?」
「俺達は去年の年末あたり。あちらさんは今年に入ってからだけど、ゴンとキルアが入ってから進みが早くなってさー。だからナオ達が引っ越してきた時、運が向いてきた! って思ったね」
「その時点で巻き込まれるの確定じゃん。クロロなんか、そのうちナオも参加させてやるぞ、って言ってたからさ。ノリで言ってるだけだと思ってたわ」
「ナオだって、例えば仕事をしてるとしてさ。この人がいれば仕事の効率が上がりますよ、定時で帰れますよ、って言われたら嬉しいだろ?」
「う……社会人じゃないからわかんないけど、勉強に置き換えたら嬉しい、と思う」

あっぶねえ。
普通に答えようとしたけど、この世界じゃまだ学生なんだった。
シャルもそんな例え出してくるな……ああ、クロロにこき使われてるのかしら……。

どっちにしろグリードアイランド攻略に協力しなきゃいけないのなら、旅団に協力するよ。
ゴンとキルアは捨てがたいけど、ヒソカの存在はどうしようも出来ないもんな。

「とりあえず、当初の予定通りケーキ買って帰ろう」

そう呟けば、当然のようにシャルも付いてきたが、不運なことにケーキ屋さんはお休みだった。

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