22話 決意しました
bookmark


クロロが危惧していた通り、私の机の中にはゲーム部への入部届けがこれでもか、という位に入っていた。
全部捨てようね、とシャルナークがゴミ箱に入れてくれたけど。
ああ、メモ用紙がわりにしても良かったかな。資源の無駄遣い、勿体無い……。
これ、当然翔のところも同じ状況だよなあ。
翔はまだヒソカとイルミと出会っていないだろうに、可哀想。

……フェイタン、ちゃんと説明したよね?


「あぁー、やっぱりね」

登校してきたミルキが、私達に近付きながら苦笑している。

「やっぱりね、って思うんだったらとめてよ」
「とめられるものならとめてるよ。兄貴が迷惑かけて悪いな」
「え、……うん。いや、ミルキのせいじゃないし……」

素直に謝られると逆に申し訳なくなるわ。
ミルキにイルミがとめられるわけないな、うん。

「ミルキが言わなくともイルミの耳には入ったよねー、絶対」
「まあ、そうだな。寧ろイル兄の方から情報寄越せって言ってきたから」
「えっ、それで情報渡したの!?」
「身長、体重、B、W、H、それから……」
「そんな情報渡して何になる! と言うか何故知ってる!?」
「得意技はパソコンだからな」
「うわー、俺もパソコン得意だけど、そこまではやらなかったな」

キーボードを弄る手付きでニヤニヤしているミルキ、良いこと聞いちゃった、みたいな顔をしているシャルナーク。
学校の情報にアクセスしたってことかしら……下衆の極み。シャルも便乗すな!

「しばらくは勧誘が来ると思うし、嫌だったらどこかの部活に入るんだな。それでも来るとは思うけど」
「うへぇー、面倒臭い……そういや、ミルキは勧誘しないんだね?」
「正直勧誘したいが、旅団も怖いからな。それに、入部を薦めたってその様子じゃ無理だろ」
「俺達そんなに恐怖の対象なの?」
「シャルナークはとっつき安いからまだ良いけどな。一般生徒からしたら恐怖しかないんじゃないの」
「こんなに優しいのにー。ねえ、ナオ?」
「ソウダネー」

優しいは優しいけど、怒らせたらヤバいっていう認識なんだから仕方ないと思うの。
私にとっては既に日常的に馴染んでいるし、今更怖いも何もないけど。
それに、旅団の胃袋は私の手中に……なんて言える程、まだ料理していないか。
大体女の子達に食べてもらってないし。
最初こそ面倒だったけど、何だかんだ自分が作った料理を皆に食べてもらうのは嬉しいし、皆で一緒に食べる時間も楽しい。

そうだなぁ、ゲーム部の主人公四人組は魅力的だし楽しそうだけど。
それ以上にヒソカと同じ部活なんて絶対に嫌だわ。

これはもう、トレハン部に籍だけでも置かせて貰おうか。なるべく名前だけの形で。
グリードアイランド巻き込み云々は、回避不可能だから諦めるとしてさ。

自分の席に着いてから、入部の意をクロロにLINE。
もちろん、考えていることを包み隠さず伝えた。
ヒソカと同じ部活にはなりたくありません、っていうのもついでに。
イルミは嫌いじゃないから名前は出さなかったよ。

ものの一分も経たずに返事が来て、画面には可愛らしいウサギのスタンプでOKの文字が。
クロロ……こういうスタンプ使うんだね。




昼休み、ご飯は今まで通りに弥生ちゃんと一緒に食べる。
但し、シャルナークとフィンクスの監視付き。
ちなみに桜子さんはウボォーが教室にいる時は一緒に食べるが、ウボォーが居なければ何処にいるのかもわからない。
ストーカーしてるって事だけはわかってます。

「弥生ちゃん、しばらくこうなると思う……大丈夫かな?」
「ととととっても緊張するけど、た、多分大丈夫」
「ごめんねありがとう大好き!!」

逃げずに居てくれる事がとても嬉しいよ。

「本当は一緒に机を囲むくらい、したかったんだけどねー」

席は離れているはずなのに、クラスメイトのほとんどが教室に居ないものだから声が良く通る。
そんなシャルナークの一言に、弥生ちゃんはプルプルと震えていた。

「そそそそんなことになったら殺される」
「あ? お前何言ってんだ?」
「ヒッ」

私にも聞こえるかどうかの声で呟くと、フィンクスからのツッコミにビクリとなった。
何か、可哀想よ。

「弥生ちゃん、やっぱりしばらく別々で食べる?」
「ごめんねナオちゃん、そうさせてもらう!!」

言うや否や、弥生ちゃんはお弁当を抱えて教室から走り去ってしまった。

「………………えっ?」

嘘でしょ。
弥生ちゃん。

嘘でしょ? 

多分大丈夫、の言葉はそんなに早く翻るものだったの……!

「ぎゃはははは!!」
「あっははは! 笑えるー!」
「笑うな!! ついでにミルキも笑うな!!」

フィンクスとシャルナークにかき消されてるけど、ミルキの笑い声も聞こえたかんな!
スンッと真顔になるのやめろ!

「あー、悲しい。それもこれも全部あいつのせいだ」

ヒソカ(とイルミ)に出会わなければ、弥生ちゃんとのランチタイムは平和に続いていたはずなのに。

「まあまあ、諦めて俺達と一緒に食べようよ」
「その弁当、何が入ってんだ?」
「何回諦めればいいんだ私は。あっ、フィンクス! 等価交換!」

いやほんと。
色々諦めたつもりだったけど、まだ諦めなきゃいけないことがあるとは思わなかったよ。
お弁当の肉巻きを取ろうとするフィンクスの手を叩き落とし、自分の口へと放り込……めなかった。

「これ美味しいねー、また今度作ってよ」
「あっ、シャルテメー! そりゃ俺のだろうがよ!」
「シャルのでもフィンのでもないよ! 私の! 私のお昼だよ!!」

一瞬にして奪われた、私の肉巻き……好物なのに。
弥生ちゃん、カムバック……!!

「ナオ、入部届けを持ってきてやったぞ」

嘆いていると、教室の前のドアからクロロがやってきた。
途端に残っていたクラスメイトも、全員教室の外へ。

ど、どんだけー。
ってか、弥生ちゃんのカムバックは絶対無理になったわ。

prev|next

[戻る]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -