21話 パンツの話はもういいです
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あの後、正直なところショッピングの気分は台無しだったんだけれども。
またパンツを馬鹿にされるのも癪なので、みんなにアレコレ選んでもらいながら三枚程購入した。

黒のレースと、薄いピンクのレース、水色のレース。

全部レースだしへそ下だし、スースーしすぎじゃないかな? と言ったらパクノダには慣れよ、と笑われてしまった。
今時女子はボクサーパンツだって穿いたりするんでしょ? 色気よりお腹を守る、これ大事。
……せっかく転生したんだからお洒落も少しは嗜むか。






今日は早速薄いピンクのレースパンツを穿いている。
案の定、風呂を出てから寝るまでの間は物凄い違和感があったが、起きたら意外と馴染んでいた。
三枚ある中でも一番好みだったのがこの薄ピンクなんだよね。
黒はもっと色気がある感じ、水色は少しだけ子供っぽいかな? 全部穿くけど。


支度を終えて学校に行こうとして。
部屋を出る直前にインターホンが鳴る。
モニターを覗けばシャルナークがそこにいた。

「ん? 翔、シャルナークと約束してる?」
「え? いや、してないよ。今のシャルなの?」
「そうみたい。ちょっと行ってくるわ」
「ういういー」

はーい、と返事をしながらドアを開ければ、やっぱり朝から爽やかなシャルナークがそこにいた。

「おはよー、そろそろ学校行くでしょ?」
「おはよ。うん、今ちょうど行こうかと思ってたところ」
「良し。じゃあ行こう」
「行こう? って、一緒に?」
「うん。昨日団長命令が出てね、ナオは俺が。翔はフェイタンが学校に同行する事になったんだ」
「え、何それなんで?」
「詳しいことは自転車乗りながらでいいでしょ。ホラ、行くよ」
「え、あ、ちょっと待ってて鞄取ってくるから!」

急かされたので急いで部屋に戻る。
鞄を取って……あ、翔に声を掛けておかなきゃ。

「フェイタンが翔と一緒に学校行くって! 私はシャルと行くんだって!」
「何で!?」
「わかんなーい!」

説明プリーズ! という弟の叫びはスルー。
翔にはフェイタンが説明してくれ……るでしょ、多分。
面倒ね、とか言いそうだけど。

シャルと一緒に階段を下りて、恒例の自転車二人乗り……

「……あ、ジャージ忘れた」
「えー? また? 新しいパンツ、見せびらかしたいの?」
「ちょ、何で知って……ってクロロか! 見せびらかしたいわけないでしょ、バカじゃないの」
「バカ……ふぅん、そういう事言っちゃう?」
「ジャ、ジャージ取ってきまーす!」

ニヤリと不敵な笑みが怖かったので、さっさと逃げるに限る。
だがしかし。
慌てて階段を駆け上ったのが間違いだったよね。

「あっ」
「あっ!?」

一番上の段で躓き、スカートが捲れて。

「…………」
「…………」

即座にスカートを直してシャルの反応を伺うと、予想外にも無言でほんのり頬が染まっているように見える。
嘘でしょ、そんな反応する!?
また軽口叩かれると思ったのに、拍子抜け……ってか、余計に恥ずかしい! やいやい言われた方が全然マシ!

「しゃ、シャルのばかー!!」
「えぇ!? 俺!?」

悪口を投げ捨て、ジャージを取りに再び走った。





「自分で躓いて自分から見せてきたわけだけど。何か言いたいことある?」
「……ありません」
「二回も馬鹿って言ったよね?」
「すみません」
「……ピンク、可愛いじゃん」
「っ!」

思わずシャルの背中をバシン! と叩けば、大笑いで返された。
さっきの初な反応は何だったんだ。
しかし、自分から見せてきたってそれ凄い語弊があるよ! 私は痴女じゃない!

「もうその話は忘れて。で、何で一緒に登校する事になったわけ?」

いつものように二人乗りで後ろに乗せて貰っているが、今日は時間がギリギリというわけではないのでシャルナークはゆっくり走ってくれている。
ジャージいらなかったじゃん。醜態晒さなくて済んだじゃん。ゆっくり行くならそう言ってよ。
怨みの念を送りながらシャルの背中を見つめると、蛇行運転されたので即座にやめた。

「昨日、ヒソカとイルミに会ったんだろ?」
「……あー。お店でね」
「団長がさ、あいつらに一ノ瀬兄妹を取られるわけにはいかないからって。護衛代わりに同じクラスのヤツが一緒に居てくれってさ」
「だから私はシャルで、翔がフェイタンなのね」
「そーいうこと!ウボォーは自由人ってか、約束も忘れたりするヤツだから、俺かフィンクスが必ず近くにいるからね」
「トイレも?」
「あはは、トイレは流石に行かないよ。目線で追うだけだよ」

来なくともそれも嫌だな。

「完全にプライベート無くない?」
「今のところはねー」
「期間限定?」
「あいつらが諦めたら、ってとこじゃないかな」
「諦めるって……そもそも何をターゲットにされてるの、私達」
「ターゲットっていうか、やっぱりそのオーラのせいだろうね」
「オーラって……てことは、あの人達もグリードアイランドってやつ、やってるの?」
「あれ? そこまで知ってるなら話は早いか」
「知ってるってほどじゃない。マチ達が、グリードアイランドをやってる人はオーラがわかるって感じの事、言ってたから」
「そういう事ね」

なるほど、と言いながらシャルナークが説明を続けてくれる。

グリードアイランドに関する部活はふたつあって、ひとつは旅団所属のトレジャーハンター部。
もうひとつはゲーム部。
ゲーム部は元々は普通にゲームをするためだけの部活だったらしい。
それが、ミルキがグリードアイランドを持ってきた事により、それまで普通にゲームをやっていただけの部員は新たにコンピューター部を作り、そっちに流れていった。

グリードアイランドが持ち込まれた事により、イルミとヒソカが入部。
更にゴレイヌ、ハンゾー、クラピカ、レオリオ、キルア、ゴンも入部。
キルアは兄二人がいるから、ゴンはそんなキルアに釣られて。
他の面子の理由は不明。

グリードアイランドは、精神を飛ばして異空間の中で遊べるゲーム。
精神体で入手したものは、クリアすれば3つだけ現実に持ち込むことができる。

オーラの相性がいい人と一緒に入ると効率があがる。

「……そのオーラの相性のために狙われてるってこと?」
「そうそう。こんな万人ウケするオーラの持ち主、見たことないよ。それも同時に二人もいるなんて凄いよね」
「そう言われても……私にはオーラがわからないからなあ」

万人ウケオーラなのは転生特典なんじゃないかなあ、と思わずにはいられない。
そうじゃなかったら理由が無いもんな。

それにしても、この世界でのグリードアイランドは精神体のゲームなんだね。
実際に飛ばされるわけじゃないから安心だけど……いやまてよ、ゲーム内で死んだら廃人になったりとか……しないよね!?
この話の流れだと、否が応でもゲームをやらされるでしょ。
多分ってか絶対逃げられないでしょ。
そうなると何の能力もない私達は死ぬ可能性高いよね。

…………せめてボマーが居ませんように。

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