20話 嫌いな人に会いました
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パクノダ、買いに行くのに時間はかからないって言ってたな。
なるほど確かに。
優しくとも旅団は旅団だものね。
早いに決まってるよね、移動速度。

……そういう意味での時間はかからない、なら早く言ってよ!

「このお店が良さそうね、って、あら? どうしたのナオ」

「……ナンデモアリマセン」

「ほら、ぼさっとしてないで早く入ろうよ」

この様子がぼさっとしているように見えるのかね、シズクさん。
流石天然娘。

小さく溜め息を吐き、三人の後からお店に入る。

ここは、いつもの買い出し場所から割と近い場所にあるランジェリーショップだ。
到着する直前に一瞬にして通り過ぎたからね、業務用スーパー。

流石はランジェリーショップ。
お店の中がきらびやかな雰囲気で……、って、ナニアレ。
レジ前にいる二人、あれ、見覚えあるぞ。店員の目がハートになっているのは置いといて。
うわ、こっち向いた。

「……ん? おや、お揃いでどうしたのさ」

「げっ、ヒソカ……何でアンタがここにいるんだい」

「質問に質問で返すなんて、酷いなァ。ボクはイルミの付き添いだよ」

「イルミ=ゾルディック……貴方、そんな趣味が」

「ちょっと、それ心外なんだけど。母さんのお使いに決まってるだろ」

ヒソカ、マチ、ヒソカ、パクノダ、イルミ、と会話が続いていく。
私からしたらカオスな状況にしか見えないわ。
いくら学生同士とはいえ、違和感バリバリだよ。
イルミとパクノダの会話とかめっちゃ新鮮。

「冗談よ。わかってるわ、それくらい」

「冗談に聞こえなかったんだけど」

「まあ、良いじゃないかイルミ。それよりそっちの子、噂の転入生だろ?」

「噂?」

噂って何だ、と思った瞬間口にしてしまった。
気にしてなかった様子のイルミまでこっち見た。
よくよく考えればわかるのにね、噂の内容なんて。

「旅団のお気に入りって噂、ネ」

ネ、じゃねーわ。私こいつ嫌いなんだよ。
何故かって? そりゃ当たり前だ、私の推しを殺めたのはこいつだからな。
一生忘れることのない恨みを抱くレベルで嫌いだよ。

学生らしく下ろした状態の髪。
最初に髪を下ろしている……水浴びのシーンかな? あれを見た時にはなんてイケメンなの……!! と思ったし好感度もアップしたよ。凄く印象的だったしね。
グリードアイランドでゴン達と協力する所も凄く好きだったよ。
しかし推し殺しはダメだ。許さんぞ。

「ああ……ミルが言ってた子か」

イルミは無表情だからどう思ってるかなんてわからないけど、どうでも良さ気に言うなら放っといて欲しい。

「ねえ、トレハン部に入ったって本当?」

「は? いや、部活には入ってないですけど……」

イルミが無表情のまま近付いてくるから、思わず後退る。
女の子三人が然り気無く前に出てくれてる……! やだカッコいい。

「ふーん。それなら俺達の部活に入りなよ」

「えっ、嫌です」

「…………」

ヒィ……! 何を考えてるのかわからない!

「ちょっと、目の前で勧誘しないでよ」

「そうですよ、まだ私たちの部活に入ってくれる可能性だってあるんですから」

「アンタ達、用事は済んだんだろ? さっさと帰りなよ」

そういやそうだな。
イルミは袋を持っているし、お会計も済んでいる様子。
イルミの事は嫌いじゃないけど早く帰ってくれ。

「用事なら今出来た、って事だろ?ねえイルミ」

「そうそう。今、そこに出来た」

「このお店に来たってことは……そうだ、ボク達が選んであげようか?」

「はぁ?」

選ぶ? 下着を? ヒソカとイルミが?
用事云々からどうしてそうなった。

「いやふざけんな。いらねーよ」

素直な気持ちがつるりと口を滑らせた。
私がそう言った後、女の子三人がギョッとした顔で振り向いた。
ま、間違ったことは言ってないよ!

「へえ。上級生に対してそういう失礼な口きくの?」

「イルミさん、でしたか? 失礼なのはどっちでしょうね。初対面に対する態度じゃないと思いますけど」

そもそも部活に入らない?ならまだ良い。
絶対入らないけど、選択権を与えてくれてるってのがわかるよ。
フィンクスだって「入れよ」だったけど、その後の無理強いはしなかった。
だけどこの人達、そんな感じじゃないよね。
腹も立つわ。一人は嫌いなヤツだし。

「……◆ そうだね、失礼したよ。イルミ、今日のところは帰ろう」

「今日のところはって、……ああ、わかった」

「じゃあ、またねナオ。次は初対面じゃないってことで、よろしくね」

「じゃあね」

「えっ、ちょ、まっ……!」

言うだけ言って、二人は颯爽と店から出ていった。

「次とかいらねーからー!!」

思わず叫ぶと、三人が同情するかのように私の肩に手を乗せた。

「また厄介なのに目ェ付けられたね」

「またって、なに、旅団も厄介だと自負してるの?」

「多少はね。そりゃ、アタシ達だって周りからどんな目で見られてるのかわかってるつもりだし」

「でも私達は何もしてないわ。トレジャーハンター部に入ってるっていうだけで同じ扱いですもの。嫌んなっちゃう」

「そうだよ、知ってたら入らなかったのに」

「あー……近くにいる男達があんなんだから、それは仕方ないって感じか。三人共めっちゃ良い子なのにね」

婆心でうっかり良い子と言ってしまったが、三人は嬉しそうに笑ってくれた。

「大丈夫よ、きっと団長達が何かしらの対策を立てるはずだわ」

「そうだといいけどねえ」

「こんな心地好いオーラ、滅多にないもん。団長達が何かしなくとも私達が逃がさないよ」

「シズク、失言だよ」

「あっ、えーと。私達が守るよ」

「…………うん。ありがとう」

あなたたちも結構旅団らしくやってんじゃないのー?
そんな言葉を言いそうになったが、ぐっと堪えておいた。

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