19話 お友達が増えました
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「オマエ……色気のあるパンツ持てなかたのか?」

フェイタンの一言に、羞恥で涙目になった。

今日は珍しく姉弟揃って寝坊してしまって。
慌てて出掛けようとしたのだが、どうやら旅団の面々が出発する時間と被ったようで、私はシャルの自転車の後ろ、翔はウボォーギンに担がれるというスタイルで登校した。

当然時間には余裕があり、一緒に来た皆も汗一つ掻いていない。
ただ、翔は冷や汗ダラダラの引きつり顔だったので、それを笑っていた矢先の出来事だった。

私とシャルナークの後ろに居たのは、フェイタンとクロロ……クロロを見れば、さっと顔を逸らされた。

「クロロも見た?」

「何の事だ」

「今日の夜は鍋」

「悪気は無かった。俺ももっと色気ある方が好みだな」

開き直ったな……!
クロロの好みは知ったこっちゃないが、私はもう何十年もこういうお腹までしっかりと包んでくれるパンツが好きなんだよ。
若い子のパンツって冷えるじゃん、お腹。

「昨日の今日だから何か対策してると思ったのに、また見せびらかしたわけ?」

「見せびらかしてない! 寝坊したから何も考えてなかったんだよ」

「あれは見たらゲンナリよ」

「ゲンナリさせて悪かったね……」

二人してやれやれ、とため息を吐くシャルとフェイタン。
ダメージ食らいすぎじゃないかな、私。
私のパンツなんてどうでもいいじゃん、もうやめたげてよ……!

「ナオ」

「何ですかクロロ」

「旅団の女メンバーに連絡しておいたから、今日の放課後一緒に買いに行ったらどうだ?」

「ちょっと待って何て連絡したの」

「ナオがお前達にパンツを選んで欲しいそうだ、と」

「……っ!」

マジか。
初対面でパンツを一緒に買いに行くのか。
いや、まだOKの返事が来たわけじゃないから、

「わかった、だそうだ。良かったな」

どうやら返事が来たらしく、それに満足したクロロはにこやかに去っていった。
今日の夕飯は絶対鍋にしてやる。







「アンタがナオだね」

ああ、マチだ。パクノダとシズクもいる。
ああ……可愛いし美人だなあ。いいなあ。
こんな素敵な人達に、パンツ買いに付き合わせるの申し訳ないなあ……。

「……はい、よろしくお願いします。初対面でパンツ買いに行くことになってすみません」

「ちょ、ちょっと頭を上げてちょうだい! 大丈夫だから。団長達に虐められたんでしょ? 災難だったわね?」

「!」

パクノダ女神か……!!

「そうなんですううう私は見せたくて見せたわけじゃないのにいいい」

「な、泣かないで下さい」

「落ち着きなよ、泣かないでいいよ」

泣くつもりは無かったんだ。
だけど、あの辛辣な男メンバー達と比べちゃったら今の私には優しすぎて……!

「ねえ、少しお茶してから行きましょうよ。買いに行くのに時間はかからないだろうし」

「自己紹介もしたいしね」

「わあー、賛成です」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

「ちょっと何? やだ、拝まないでよ」

だってパクノダ姉さん生きてるよ。
ぶっちゃけ忘れてたけど、生きててくれてありがとうと拝ませておくれよ……!

しばらく拝み続けていたら、手刀で薙ぎ払われた。
即座に謝られたけど、軽く吹っ飛んだから涙も引っ込んだ。


学食に移動して、自販機で各自飲み物を買う。
私はいつも通りにコーヒー、パクノダもコーヒー。
マチはレモンティー、シズクはオレンジジュースだった。

「私はパクノダよ。三年薔薇組で、団長達と同じクラスね」

「あたしマチ。一年月組、翔と同じクラスだよ」

「私、シズクです。一年太陽組なのでマチちゃんと隣のクラスですね」

「よろしくお願いします。もう知ってると思うけど、一ノ瀬ナオです」

「私達も無礼講でいいわよ。マチとシズクは一年だし」

「あ、じゃあ私も無礼講で」

パクノダは三年だし、マチは一年でも留年組だから同い年だ。
シズクが敬語を使ってくれたので、シズクに向かって言ったら頷いてくれた。
私達も、ってことはクロロ達からそうやって聞いてるんだね。

「しかし……本当に団長達の言う通りね。オーラが心地好いわ」

「ああ、パクも思った? あたしもだよ」

「じゃあ皆おんなじだね。ねえナオ、そのオーラは生まれつきなの?」

「は? オーラ?」

オーラって一体何の……え、念能力ないんですよね?

「あ、ごめんなさいね。グリードアイランドを知らない人には通じない話だったわ」

「グリードアイランドォ!?」

「ナオ、知ってるの?」

「ナオ、知ってるのかい?」

シズクとマチの言葉が被る。
知ってるも何も伝説のゲームじゃないっすか。
そう言いたかったけど、墓穴を掘っても困るので少しだけ知ってる体でごまかそう。

「難しいゲームっていうのと、名前は聞いたことあるんだ」

「なるほどね。入手困難なゲームだから名前を知っていれば驚くのもムリないか」

マチのナイスなフォローによって助かった。

「……ナオだったらそのうち巻き込まれるんじゃないかな」

「そうね、私もそう思うわ」

「じゃあ、内容はその時までのお楽しみってことで」

シズクの聞き捨てならない台詞から、パクノダ、マチによる華麗なリレー。

「ちょっと待ってよ巻き込まれるってどういう意味だよ怖いよ……」

「大丈夫だよ、死ぬことは無いからさ」

「マチ……! それって死ぬことはないけど死にそうな目には合うって聞こえる!!」

「いざとなったら助けるわ」

「私たちが助けなくとも団長達が守ると思うよ」

守る。
その言葉は乙女の憧れだけど、今聞いてもちっとも嬉しくないのは何故だろうなー。

巻き込まれたくないです、切実に。
どうにかフラグをへし折りたい。

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