16話 美少女に捕まりました
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疑問に思っていたことが解決した事で、より一層この世界に馴染んだ気がする。
何が、と言われても、感覚的にとしか答えようのない感じだけど。
悪いことじゃないので前向きに捉え、今日も元気に学園に行く。





「あっ」

「「「あっ!?」」」

校門を過ぎたところで、土曜日に商店街で出会った三人組を発見。

「あの、」

「ここここな、こな、こないだはすみませんでした!!」

折角だから少し話してみようかな、と思ったんだけど、即座に逃げられてしまった。
これまた何故だよ。
意外と素早い三人組の背中を呆然と見守っていると、後ろからシャルナークが歩いて来た。

「ナオ、おはよー」

「シャル。おはよ。今日はひとり?」

「うん。ナオもひとりじゃん」

「翔が日直なんだって。だから寂しくぼっち登校だわ」

「寂しいの? なら、俺と一緒に登校する?」

「いやいや無理っしょ。登校スタイルが違うんだから」

「……ま、そうだねー。で、さっきの三人組は知り合い?」

「知り合いっていうか、土曜日にナンパされかかったっていうか」

「あぁー、やっぱり」

「やっぱり、って?」

「あいつらナンパ師で有名だからさ。一度旅団の仲間をナンパして、酷い目に逢ったはずなんだけど。懲りてないみたいだね、凄いや」

「…………そうなんだ」

酷い目に逢ったって、ちょっと想像出来ちゃうところが怖い。
生きてて良かったね、ナンパ三人組。

「ナオは、ナンパされかかったって?」

「声を掛けてきたところでミルキの弟が助けてくれたんだよ」

「ああ……キルア?」

「そうそう。知ってるの?」

「んー、一応知ってる。ゴンってヤツと一緒に、ノブナガのお気に入りなんだ」

「へえー、そうなんだ」

ここでのノブナガも、キルアとゴンがお気に入りなのね。
旅団に勧誘でもしたのかな。

そのままシャルと一緒に教室に入ると、一瞬教室内の空気が凍る。
ごく一部からは冷たい視線を感じたので、こりゃシャルナークファンがいるんだな、と思った。

空気が凍ったのは本当に一瞬で、すぐに解凍されて元通り。
フィンクスとウボォーギンは遅刻ギリギリでやって来た。
だからシャルはひとりだったのね。



今日は一時間目に数学があるから、密かに楽しみにしていたのだ。
数学はウイング先生で、とても優しい。
宿題忘れの罰則は厳しかったけれど(くらったのは私ではない)、あのほんわかした柔らかい雰囲気が心地良い。
先生方もほとんどがハンターキャラだったので、初めての授業を受ける度に新鮮で面白かった。
全く以て授業内容が頭に入ってこなかったのは言うまでもない。
笑いそうになったのは、ノストラード護衛組が大体居たこと。
ヴェーゼ先生は言わずもがな、スクワラは理科全般──理科準備室でカップラーメンを食べていたのはこいつだった──バショウが国語総合、センリツが音楽、最後の地理歴史でシャッチモーノ=トチーノが出てきたときには、お前もいるんかい! と吹きそうになった。



午前中の授業をこなして、お昼休み。
弥生ちゃんと友達になった日からいつも二人で食べているんだけど、今日は弥生ちゃんは風邪でお休みだった。
朝といい、お昼といい、今日はぼっちの日なんだろうか。
教室でひとりで食べていると他の女の子達の気が休まらないだろうし、どこか別の場所を探すことにしよう。
ベタなところで、屋上とかがいいかな。
自由解放されていたらいいなあ、と思いつつ、お弁当を抱え、屋上を目指して歩く。

途中で自販機に居たウボォーと会って、部室に来いよとお誘いを頂いたのだが、今は屋上への興味が深々なので丁重にお断りさせて頂いた。
旅団の女性陣ともそろそろご対面したい気持ちはあるけれど、また次の機会で!
そもそもみんながみんな部室でお昼を食べているとは限らないか。


……それにしても、ウボォーと別れてから……後をつけられている気がするんだけど。
堂々とした足音が、ずーっと付いてくるんだよね。
たまたま屋上に用事があるだけかな? ……等という予想は外れた。

「そこは開かないわよ」

屋上へと続く扉に手を掛けた瞬間、後ろに居た人物から声が掛かったのだ。
振り向けば、キツめの美少女……!
リボンの色からして三年生だ。年上の美少女!

「屋上、解放されてないんですか?」

「水曜日しか解放されてないのよ。今日は月曜日でしょ。明後日なら昼休みと放課後18時になるまで、解放されるわ」

「そうなんですか。教えてくれてありがとうございます」

「って!! 違うわ! 私は貴女とお喋りしに来たんじゃないのよ! ちょっと貴女! シャルナークさんに渡したさくらんぼ、貴女が食べたわね!?」

「えっ」

シャルは女の子から貰ったって言ってたけど、この怒り様……もしかしてこの人はシャルのファン……

「シャルナークさんに渡せばウボォーギン様にも召し上がって頂けると思ったのに!!」

「違った!」

「はぁ?」

「すみません何でもありません」

シャルのファンではなく、ウボォーのファンだった!

「ウボォーギン様のために取り寄せたものだったのに……ウボォーギン様の口に入ること無くこんな女が……」

「あ、ウボォーギンはちゃんと食べてましたよ」

口が滑ったというか。
いや、口が滑ったとは言わないか。
ウボォーのために取り寄せまでしたって事は、高かったんでしょ、あのさくらんぼ。
そうまでして食べてもらいたかったんだろうなーって思ったら、ちゃんと本人の口に入ったっていうのを教えてあげたかったんだよ。

だがそれを言った瞬間、美少女はこれでもかというくらいにギンッ!! と睨みを利かせてきた。

「ウボォーギン様が食べたとして! 何で!! 貴女が!! それを知ってるのよ!! ……時間がないわね、放課後またここに来なさい! 来ないとどうなるかわからないわよ!!」

……えぇー。
何だか面倒なことになりそうだ。
しかし、来ないとどうなるかわからないわよ! との事なので、一応来た方がいいよね。

言い切った後、美少女は踵を返して行ってしまった。

結局屋上には入れずなので、扉の前の階段にてお昼を食べた。
……当たり前だけど誰も来ないし、かなり寂しい気持ちになった。

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