14話 団長と買い出しに行きました初日はハンバーグ、昨日は焼き魚メインの夕飯だったので、今日の夕飯は餃子でも作ろうかなーと思っている。
約束では翔も一緒に作る予定だったけれど、フェイタンやフィンクスがちょっかいを出しに来て遊び始めてしまうので、諦めて一人で作ることにした。
デザートはシャルから貰ったさくらんぼ。まだまだたくさん余っているので、腐らせる前に食べきらなきゃ勿体無い。
買い出しはウボォーに付いてきて貰おうとしたんだけど、旅団の活動にどうしても参加したいそうだ。
「今日は俺が行くからな」
「クロロは団長なのに参加しなくていいの?」
「ああ、今日は力仕事だからウボォーさえ居れば問題ない」
「……一体どんな活動をしているのかね」
「そのうちナオも参加させてやるぞ」
「私は内容を聞ければそれでいいんだけど。ていうか、部活なんか入ったら夕飯作れないよ」
「たまには夕食作らなくたっていいだろ」
時間が勿体無いので、話をしながら歩き出す。
他のメンバーは部室で活動をしているらしく、ウボォーと入れ替わるようにしてクロロが迎えに来たのだ。
たまには作らなくたっていいだろ、って。
貴方がたとの契約ですよ、と。
クロロがいいなら別にいいんだろうな。旅団で反対するヤツもいるまい。
どっちにしろ、今のところ部活には入る気も無くなった。
「そういえば、クラスの女の子に留年の話聞いた」
「ああ、知らなかったのか」
「うん。普通にその学年だと思ってたよ、みんな」
だって婆だった時に比べたらみんな若いもの。
若い子の年齢とか当てるの苦手だったもの。
今日のクロロは髪を下ろしているから、余計に若く見えるし。
学園に行く時はいつもこの髪型らしいんだけど、威圧感が減るから私はこっちの方が好きだ。
「あいつら勉強嫌いだからなぁ……活動に支障が出なけりゃ、なんでもいいけど」
「せめて卒業出来るように、面倒見てあげたら?」
「いずれメンバー中心に会社を立ち上げるつもりだから、そんなの必要ないさ」
「なら、なんで学園通ってんの」
「一応の社会勉強は必要だろ」
「一応ねえ……」
それなら建前的にも卒業出来なきゃダメなんじゃ? と思ったけど、私が考えてるような事はクロロの頭には無さそうだから口出しはやめておく。
色々言われてもわからなそうだし、わからなくてもいいや。
「働き口がなかったらそのまま雇ってやるぞ」
「……なかったら、ね」
働き口が無かったら笑えない。
勉強は好きじゃないけど、少しは頑張ろう。
食材を買う時は量が必要になるので、マンションから少し離れた業務用のスーパーに行くことにした。
ここなら旅団の面々と一緒に居ても、狩人学園の生徒にも見つかり辛いと思う。
夕飯作り初日はもっと近いスーパーで買い物をしたから、そこで一緒に居るところを見られたのかなあ。
「そういや、他のメンバーにナオ達の話をしたら会ってみたいと言っていた」
「他のメンバーって?」
「主に女子が、だな」
「女子かあ。それは、こちらこそってお伝え下さいな」
「ああ、わかった。どうせマンションにも来ることもあるだろうし、必然的に顔を合わせることになるよ」
「これだけメンバーが集まってるマンションだもんね。あ、それ、ショウガ取って」
「これか?」
「ううん、その隣のやつ。それは色が悪くなってきてるからダメです」
「へえ。言われてみれば、確かに色が違うな」
「……誠に勝手ながら、クロロはグルメなイメージがあったんだよねぇ。食材選びも適当だったとは思わなかった」
「腹は壊したことないぞ」
「自慢げに言うことか」
ショウガの他にも白菜(我が家はキャベツの代わりに白菜を入れる)、ネギ、にんにくなどなどクロロに選んで貰って、ダメ出しをしながらスーパーの中を進んでいく。
全部の買い物を終えてマンションへと帰る。
私は自転車を推し、クロロは荷物を持っている。
荷物持ちなんだから当然っちゃ当然なんだけど、これ、道行く人に私が持たせてるって思われてないよね!?
初日はシャルが、昨日はウボォーが買い出しのお供に来たけれど……気にしたら負けだ。
シャルとクロロはなにも言わずにこうして横を歩いてくれたんだけど、ウボォーに至っては私ごと荷物をマンションまで投げようとしてたからね。
ダメだっつったら担がれそうになったからね。
力が有り余ってるのはわかったが、マジご勘弁。
しかし……弥生ちゃんが言っていた、隠れファンがいるっていうのもわかるなあ。
私だって旅団は好きだったし(今でも好きだけど)、みんなカッコいいと思うもの。
時折見せる笑顔とかさ、
「なんだ、じっと見て。何か付いてるか?」
「ううん、見てただけ」
「見て……そうか」
納得したようだ。いいのかそれで。
けど、そうそう。今みたいな笑顔だよ。
こんなの間近で見ちゃったら、そりゃファンになるわな。
どこぞのアイドルより……
「ぶはっ」
「?」
アイドルっていうワードでノブナガが頭に浮かんだので、吹き出してしまった。
「ひとりで楽しそうだな」
「お陰さまでね、今日友達になった子が面白い子だったよ」
「何がどうしてお陰さまなのかはわからんが、良かったな」
「うん」
いや、本当にお陰さまなんだよ。
旅団と仲良くならなければ、女の子の友達は普通にたくさん出来たかもしれない。
でも弥生ちゃんと友達になれたのは、確実に旅団と仲良くなったお陰だよね。
弥生ちゃんみたいに私と喋ってくれる子も、探せばいるよねきっと。友達作りは気長にやろう。
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