12話 友達作りをしました
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家の中も落ち着き、休日も終わって月曜日。
今日から本格的に狩人学園に通う形になる。
モラウ叔父さんに、片付けが全部終わった事を連絡したら相当驚かれたが、マンションの住人が手伝ってくれたと説明すれば納得したようだった。

なかなかに濃い休日だった。


私達姉弟は自転車登校だけど、旅団の皆は学園まで走るとのことなので、出発は別々。
元々一緒に行こうなんて約束はしてないけど。

今日は同性の友達が出来るといいなー。
シャル以外の皆ともLINEの交換は済んでいて、この友達の欄に女の子の名前が欲しいのだ。



学園に到着して、翔と別れて教室に入る。
すると、最初に目が合った女の子からサッと顔を反らされた。

……ん?

私、何かしたかな? と思いながらも他のクラスメイトを見ると、見る人見る人顔を反らす。
何だろう……転入初日しか学園に来なかったのに、本当に何かしてしまったのだろうか。全然思い当たらない。

「旅団に気に入られたからじゃない?」

「え?」

「俺はミルキ=ゾルディック」

「あ、どうもご丁寧に。私は……」

「ウチのクラスの転入生なんだから、名前くらい覚えてるよ。一ノ瀬ナオ」

「あー、だよね」

声を掛けてくれる人がいた! と思ったら豚くん……もとい、ミルキ=ゾルディックだった。
引き籠りじゃないんだね、ちゃんと毎日登校してくるんだね。

「てか、気に入られた覚え、ないけど」

「でも休日一緒に居たんだろ? そこかしこで噂になってるよ」

「一緒に居たイコール気に入られた、とは違くない?」

「自分はそんな気がなくても、周りから見たらそう見えるんじゃないの。この学園じゃ、幻影旅団は不良集団って言われてるし。そんなのに気に入られた一ノ瀬に何かしたら目をつけられる、とか思ってんじゃない?」

「そうなの!?」

余りの事に思わず大声を出してしまった。
すぐに周囲を見渡すと、誰もが関わらないように、と、遠巻きにしているのがわかった。

「嘘でしょ……じゃあ、私、この学園で女の子友達出来ないの……」

「女の子なら旅団にもいるじゃん」

「旅団の女の子にはまだ出会った事無いからよくわかんないけど、とりあえず普通の女の子がいい」

「ははは、無理じゃない?」

ニヤニヤ笑いながら、ミルキは自分の席へと行ってしまった。

そりゃ、旅団の女の子とも仲良くなりたいよ。
でも普通の女の子! 普通の女の子の友達……欲しいんだけど……えぇー……無理なのかなあ。
そもそも、幻影旅団が不良集団って。
確かに威圧感あるし、そこらのヤクザにも負けそうもないけど。実際普通に接する分には大丈夫なんじゃないの?

「おはよー、ナオ」

「おう、ナオ! はえーな!」

「はよ」

シャル、ウボォー、フィンの三人が教室に入ってくるなり私に声を掛けるので、教室内は一瞬にしてざわついた。
本当だったんだ、とか、やばい、とか、チラホラ聞こえる。
ミルキはニヤニヤと笑ったままだ。

「おー、あんま気にすんなよ」

「何が?」

「何が? っておまえ……俺達と関わったから色々言われてんだろ?」

フィンクスの突然の励ましに、一瞬本当に何の事かわからなかった。
ていうか、それ本人達も知ってるのか。

「関わったらこうなるって知ってた?」

「「…………」」

私の問い掛けに、シャルナークとフィンクスは無言で返す。
ウボォーに至っては、さっさと自分の席に行って、お腹が空いたのか鞄から取り出したパンを食べていた。

はぁー、と、深いため息が出る。
脱力して椅子に座れば、シャルとフィンは私の頭をがしがしと撫で回した。

「わっ、わっ、なになに!」

「この席になった時点で結局は逃げられなかっただろ!」

「そうそう、恨むならこの席にしたヴェーゼ先生を恨みなよね」

ヴェーゼ先生……は、この席の前と隣が誰だったかを忘れていたんだと思いたい。
翔も同じ状況になってるのかな。
自分だけじゃない。そう思うと、気持ちは少し軽くなった。

「だが私は諦めない! 普通の女の子の友達を作ってみせる!」

意気込んで叫ぶと、教室のそこかしこからヒィ、と小さな悲鳴が聞こえて、シャルとフィンは吹き出した。 おまけにミルキも吹き出した。



お昼休み。
推しと眉なしの誘いを断って、教室でお弁当を広げている三人組の女の子のところへ突撃する。

「あの、一緒に食べてもいいかな?」

「いい……ぅわ!」

「わ、私達」

「お、お、お弁当忘れたんだった!」

「えっ」

「ががが学食に行くからごめん!」

「あの……あっ、」

その机の上に広げていたのはお弁当では……そう言おうとする前に彼女達はガチャガチャとお弁当を仕舞い込み、ダダダッと逃げていってしまった。
そ、そこまでする〜?

大声で笑っているミルキの声は聞こえない事にして、次だ次!
意気込み新たに振り向くと、次々と教室から出ていく女の子達。

「…………流石に泣くわ」

これでもかという程の大きなため息を吐いて、仕方なく自分の席に戻ろうと振り返れば、大人しそうな女の子がお弁当を持ってこっちを見ている。

見ているよね!?

小躍りでその子に近付くと、ビクビクしながらも声を掛けてくれた。

「あ、あ、あの、あの、わ、わたしで良かったら……」

「ほんとに!? ありがとう!!」

鞭で打たれまくってからのあまーい飴だから、逃がさないよ! そんな思いを込めて、お弁当を持つ手をぎゅっと握ると、精一杯の笑顔を向けてくれた。

女だけど心臓撃ち抜かれそうだよ。

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