DQ8 | ナノ


  39:糖分補給は適切に


サザンビークに到着後、城下町の入り口に立っているエイトの姿を見つけた。
チャゴスは?と聞くと、誰かを見つけたようで、一目散に走っていったとのこと。
あぁ……結局闇商人の元へ行ったのか。
私の色仕掛けは無駄だったのかしら……いや、早く帰れた件に関しては無駄じゃなかった。うん。

「それで?オレ達はどうしたらいいんだ?」
「明日になったら宿屋に使いを寄越すから、それまで休んでおけって言われたよ」
「明日って……結局一泊……ゼシカ達の方も時間はかかるはずだし、まあ、いっか。着替えもしたいし宿屋に行こう」

皆脱力気味に宿屋に向かい、宿屋のおかみさんにチャゴスの指示で、と説明をしてから部屋に案内してもらった。
だって宿屋で待てっていうのはチャゴスの指示だし、料金はお城持ちでしょ。

エイトはあの後キラーパンサーに思う存分に走ってもらい、チャゴスは落ちないようにするのに必死だったとか。
道中文句が凄かったらしいが、何度も舌を噛んでるうちに黙るようになったらしい。
それでも闇商人を見つけて走って行くあたり、相当元気よね。
エイトにお疲れ様、の意味を込めて頭ポンポンしたら、恥ずかしそうに笑っていた。
今は私と同い年だから、お兄さんって雰囲気もあるけど可愛くも見えちゃうよ。

「ところで一泊するならキラーパンサー達はどうするのかな?」
「あー……下りてもまだ入り口付近に居たよな。明日ままで待っててくれる感じか?」
「王家の山でも待っててくれてたもんね、私、寝る前に一度様子を見てくるよ。一応餌も買っていく」
「それなら皆で行こうか。城下町の外に行くなら危険もあるしね」
「だな。戦闘に関しちゃ確かに疲れたが、移動で楽させて貰った分まだ余力もあるしな」
「じゃあみんなでキラパンちゃん達を労いにいこー」
「また変な名前付けて……」
「失礼だなククール、これは名前じゃなくてただ略しただけだわ!」

ククールの背中をぺしっとひと叩きし、部屋を出る。
宿屋のおかみさんに魔物の餌が売っている場所を聞いて。
それを4つ買って、町の外に出ていけば、どこからともなく二頭のキラーパンサーが姿を見せた。

「本当に賢いね〜、ほらご飯だよ」

魔物の餌を足下に置くと、二頭は喜んでかぶり付いてくれた。

「私達明日までここに居なきゃいけないんだけど、あなた達はどうする?まだ待っててもらえたりするのかな?」
「クゥン!ガウガウ!」
「ガウー!」
「この感じだと待っててくれそうだな?」
「そうだね。サザンビークからラパンハウスまで結構あるし、とても助かるよ。明日も朝ごはん持ってくるからね……って、いやいや僕ルーラ使えるじゃん!」
「「あ」」
「何だろ、疲れて頭回ってないのかな……明日は自分達で戻れるから、君たちはこれを食べたらラパンさんのところに帰れるかい?」
「「ガウーゥ!」」

言いながらエイトがキラーパンサーを撫でると、気持ち良さそうに喉がゴロゴロと鳴った。

そうだよね、エイトはルーラが使えるんだから、わざわざキラパンちゃん達に待っててもらう必要なかったじゃんね。
何で早く気付かなかったんだろう。
ククールもその考えに至らなかったし、私達チャゴスに相当苦労させられた感じ?糖分足りてなくなってる?

「何か甘いものでも食べて寝ようかな……」
「オレもそうすっかな……」
「僕も……」

餌を食べ尽くし、満足そうに帰っていったキラーパンサー達を見送り、私達も足取り重いながらもゆっくりと宿屋へ戻った。





そして次の日、チャゴスの使いというより本人が来て。

「あのかわいこちゃんはどこだ?」

このふてぶてしい態度だよ。
朝の爽やかな気分を台無しにされた感じがする。

「開口一番それかよ……」
「シッ!……あー、あの子なら、具合が悪くてまだ休んでますよ。私が代理です」
「代理ィ〜?……ふーん?あのかわいこちゃん程じゃないけど?おまえもよく見たら可愛い顔してるじゃないか。よし、ついてこい!」
「え、えぇ〜?」

えぇ〜?はもちろん小声だ。
あのかわいこちゃん程じゃないけど、って、あれも(詐欺メイクありだが)私だし、よく見たら可愛い顔してるって……チャゴスに言われても嬉しくないけど、最初によく見てくれてたらあんな変装しなくて良かったって事だよね??
しかもあのかわいこちゃんに指輪プレゼントするんじゃなかったのかよ放置でいいのかよ。

「休んでるあの子はどうするんです?」
「そんなこと聞かなくともわかるだろ。後で労いに来るに決まってるじゃないか、ぐふ、ぐふふふ」

エイトの質問に答えたチャゴスにぞわわわわ、と鳥肌が立った。
思わずククールの腕にしがみつくと、ササッとマントで隠してくれた。
痩せたら城に飾ってあるあの肖像画みたいになるのかもしれないけど、あの肖像画の人物でもこれは気持ち悪い!!
ミーティア姫、全力で逃げてー!!私も魔法の鏡貰ったらとっととおさらばするから!!



……と、まあ、逃げる算段を立てていたけれど。
結局チャゴスは謁見の場で王様にしこたま怒られ、退出を命じられ。
エイトもククールも、なんだかすっきりした顔をしていて笑いそうになった。
その後は息子の体たらくに落ち込んだ王様から魔法の鏡を持っていくことの許可を貰い、無事に入手完了。

アルゴンハートを手に入れるまでにかかった労力を考えると、至極アッサリと事が進んでとても助かる。
王様には少しばかり同情的するけど、こんな風に育てちゃったのは親である王様だもんな。
今後の改心に期待したいところだ。

「さて。海竜と相対するには船に乗らなきゃいけないし。船に乗るからには全員で行動するから、この後は合流……その前に、サザンビークでバザーが始まってるから、ちょっと見ていく?」
「バザーか。掘り出し物もあるかもな。オレは構わないが……エイトはどうだ?」
「僕もいいよ、何か良いものがないか見ていこうか」
「じゃあ決まり!」

ドルマゲスに対抗するには、やっぱり防御力と回復だよね。
これまでドルマゲスに一度は殺され、魔力を奪われた人たちを生き返らせてきたわけだけれど、その人達に少しでも魔力が戻っていれば、ドルマゲス戦もそこまで苦戦しないんじゃないかなあ、と思ったりもするんだけど……闇の遺跡に籠っているのは間違いないだろうし、未来のオディロ……おじいちゃんも、サーベルトさんも、魔法は使えなくなったって言ってたはず。せめて生命力分だけでも差し引かれていたらなあ、なんて考えるのはやっぱり少しでも楽に進めていきたいという気持ちがあるから。
誰だって、自分の好きな人たちに無駄な苦労はさせたくないでしょ。
まあ、レベル的に今のみんなだったらそんなに苦戦はしないと思っている。
人数もプラスワンだし、一応私は回復メインだからね。

それにサザンビークのバザーでは世界樹の葉もあったと記憶している。
世界樹の葉があれば、万が一があっても安心だよね。
まずはそれを手に入れて、それから武器と防具を見に行こう。

エイトとククールには世界樹の葉の事を説明して、私の好きなように回っていいよとのお許しが出たので、遠慮なくそうさせてもらう事にした。






「バザーも一通り見終わったし、必要なものも買い終えたし。そろそろラパンハウスへ戻ろうかと思うんだけど、二人は他に見たいものとかなかった?」
「僕は大丈夫だよ、ニナがほとんど見てくれたしね」
「オレも特にないな。ラパンハウスへ戻ったら早速船で出発か?」
「うん、まあ、ゼシカ達の動向も見てからじゃないと何とも言えないけれど、多分そうなるかな?」
「了解」
「じゃあ、二人共僕につかまって…………ルーラ!」

ラパンハウスに戻ると、私たちを乗せてくれたであろう二頭がお出迎えをしてくれた。
ちょっと乗せてくれただけなのに、これだけ懐いてくれると離れがたくなっちゃう。
可愛いよ、キラーパンサー。

「あっ!お帰りなさい!」
「どうだったでがすか?」

外が騒がしいと感じ取ったのか、ラパンハウスから出てきたゼシカとヤンガス。
それに応えるように、エイトが魔法の鏡を掲げて見せる。

「ホラ、無事に手に入ったよ。そっちはどうだったの?」
「私たちもバッチリよ。これ、お礼にってラパンさんから渡されたの。バウムレンの鈴ですって。鳴らせばいつでもどこでもキラーパンサーが駆けつけてくれるらしいわ。エイトに渡しておくわね?」
「へえ……それは便利なものを貰ったんだね。うん、わかった、僕が預かっておくよ」
「で、ニナの嬢ちゃん。どうだったでがすか?」
「え?どうだったでがすか、って……今エイトが成果を見せたよね?」
「そうじゃなくて、アニキとククー……ムググッ」
「ヤンガス、それは今聞くことじゃないんだからちょっと黙ってて頂戴」
「グゥ〜ググッ!」

ゼシカがヤンガスの耳元で囁き……というよりなんか怒ってる感じがしなくもない……けど、内緒話している感じが仲がいいなあ、と。
バウムレンの件で二人はさらに仲良しになったのかしら。

「で、この魔法の鏡に仕掛けをしてくるんだろ?ゼシカ達はもう出れる状況なのか?」
「ええ、私たちもトロデ王様たちも、いつでも出発できる準備は出来ているわ。ニナ、この次はどうするの?」
「あ、そうか……ゼシカ達には説明してなかったんだっけ。この魔法の鏡に海竜っていう魔物の技、ジゴフラッシュの光を吸収させて、太陽の鏡っていう物に変えなきゃいけないの。その太陽の鏡で闇の遺跡の封印が解けるんだよ」
「それはまた面倒でげすね。光を吸収させたら、海竜は倒していいんでがすか?」
「うん、太陽の鏡にさえなれば用済み」
「用済みってまた、物騒な言い方するわね」
「襲い掛かってくる魔物に容赦しても仕方ないかなって」
「まあ……そうよね。それじゃ、トロデ王様たちも呼んでくるわ」
「あ、僕たちも一度ラパンさんに挨拶したいし、僕たちが行くよ」
「それなら尚更よ、ラパンさんの部屋とは別のところにいるんだもの。またここで集合にしましょ」
「わかった、じゃあそっちは頼むね」

そうしてゼシカ達はトロデ王とミーティア姫を呼びに行き、私たちはラパンさんの元へ挨拶に。
最後に、乗せてくれた二頭を何度も撫でつつ、名残惜しくもラパンハウスを後にした。

2019.11.11
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