DQ8 | ナノ


  36:ゼシカの企み


「一体何なんでげすか!」
「シッ!ちょっと声小さくしなさい!」
「横暴でげす…」
「あのね!あんたはあの子たちの雰囲気から何も感じ取れないわけ?」
「雰囲気?何がでがす」

ああ、これだから恋愛に疎い男は…!!
ヤンガスだってこんな身なりしてゲルダさんに対して恋心を抱いてるっぽいのに、鈍感すぎなんじゃないのかしら。

「ククールとエイトってば、妙にニナに対して過保護だと思わない?」
「ククールは護衛だからでアニキは責任感が強いからじゃないんでがすかね」
「ち・が・う!!鈍感!ニブチン!バカ!二人ともニナの事が好きっていうのは明らかじゃないのよ!」
「え…ええっ!!」

声を小さくっつってんのに、バカみたいに大きな声を出したヤンガスの頭を引っぱたく。
もちろん横からよ、真上から叩いたらトゲトゲで私が痛いからね。

「暴力反対でげす!」
「うるさいわよっ!で、私としてはそんな三人の恋愛模様を見守りたいわけ」

ホントの事言うとね、ニナにはサーベルト兄さんのお嫁さんになってもらいたいっていう気持ちもあるの。
兄さんだって自分の命を助けてくれた女の子に対して悪い気はしないと思うわ。
ニナが私の義姉さんになってくれたら、それはそれはとても楽しいと思うもの!
でも、こっちだって気になるのよ。
ドルマゲスを倒すっていう目的がある今、そんな事に現を抜かしてる場合じゃないのは確かなこと。
でも、こんなチャンスがあったなら少しくらいは二人の背中を押してみてもいいと思っちゃったのよね。
あ、エイトはミーティア姫も気になってたりするのかな?
それだったら…いや、でもあの態度からして私の予想ではやっぱりニナに気があると思うのよ。

「アッシとしてはアニキに軍配を上げて貰いたいでがす」
「あら、突然乗り気になった?」
「ククールみたいなチャラい男にニナを任せられないでげす。アッシは密かにアニキを応援するでげす!!」
「だから声大きいっていうの!」

パシン!と小気味いい音が響いて、ヤンガスは仏頂面になった。
三人に聞こえちゃって、それこそ余計なお世話ってことになったら困るじゃないの。
でも、ヤンガスも理解してくれたみたいだし、これで話はまとまったわね。

「三人のところに戻って提案の続きをしましょう」
「わかったでげす」

こっちをぽかんと見ている三人は、私達が戻るとどうしたんだという疑問をぶつけてきたけれど、そこは華麗にスルーさせていただくわ。

「ね、ニナ、サザンビークではどんなことが待ち受けているの?」
「えっ…うーん…とても嫌なこと…」

苦虫を噛み潰したような顔をしているニナ。
これはやっぱり私の提案が通りそう!

「ラパンさんの頼みごとのほうが難易度は低いのね?」
「そうだね、明らかに。でも時間はかかると思う」
「それなら尚更、分担して終わらせたほうがいいと思うのよね。力の関係とかを考えたら私とヤンガスで十分だと思わない?」
「でもそれだと回復が「エイトは黙ってて頂戴」
「はい」

ピシャリと遮ると、言葉通りにエイトは黙った。
ごめんね、これもあなた達のためなのよ。

「回復はそんなにも必要になりそうかしら?」
「いや、その場所さえ見つけることが出来れば大丈夫なはず。薬草を少し多めに持っていれば問題ないんじゃないかな?でも二人でだいじょ「うん、じゃあやっぱり分担しましょう!」
「…ゼシカ、何を企んでいる?」
「何も企んでないわよ。効率のいい方法を提案しだだけじゃない」
「……ふん…そういうことにしておこうか」

……チッ、勘のいいヤツ。
ククールは私の思惑に気づいているみたいね。
このおせっかいめ、っていう顔をしているのがミエミエなのよ。

「ヤンガスはそれでいいのかい?」
「本当はアッシもアニ「ヤンガスもいいわよね?」
「……げす」

異論は認めないわ。

「お嬢様もこう言ってることだし、ニナ、エイト、俺たちは先へ進むとしようぜ」
「え、あ、うん」
「じゃあラパン様にそういうことになったって説明してくるよ」

エイトがラパンさんに報告しに行く背中を見守る。
さ、これでお膳立ては整ったわ。
何の進展もないかもしれないけれど、もしかしたら何かしら進展があるかもしれない。
それはエイトかククールかわからないけれど…ああ、後々ニナと恋話をするのが楽しみだわ…!!















エイトがラパン様に説明をすると、ラパン様はおまえさんの言うことだから信じよう、と、ゼシカとヤンガスに頼みごとを託すことにしたようだ。
しかしゼシカとヤンガスは一体何を話していたんだろうか。
ヤンガスが頭引っ叩かれてたり、大きな声で驚いてたりっていうのは見ててわかったんだけど。
もしかしてゼシカ、ヤンガスの事が好き……とか?
………まさかね。


屋敷の外に出ると、既にラパン様がカラッチに指示を出してくれていたようで、キラーパンサーが三頭待機している。
五人なのに三頭なのはなんで?

「んなーっ!!今、体調が良好なのがこの三頭だぁよ。二頭に二人ずつ乗ってくれるかい!」

体調が良好って…集団食中毒でも起こしたのだろうか。
でも、三頭借りれるんだからいっか。
二頭だったら明らかに誰かがお留守番か、最悪尻尾つかんで走るかだったよ。
いくらほしふる腕輪があるとはいえ、私にはそんな超人技は出来ないけれども。

「えっ!もしかしてヤンガスと二人で乗るの!?」
「…今更嫌だとは言わせないでげすよ」
「わ、わかってるわよ!へんなトコ触ったら承知しないわよ!」
「アッシのことどんな目で見てるでがすか!!」

一頭の前でゼシカとヤンガスが何やら揉めている。
そんな二人に、キラーパンサーも眉尻が下がって困ってるように見えるんだけど…。

「さて、あっちは放っといてかまわないだろ。こっちはどうする?」
「ニナはどっちと乗りたい?」
「えっ!?」

私に判断を委ねるつもりなの!?

「っていうか私一人で、二人が一緒にという選択肢は「「ない」」

…ないんだ。
確かに体重とかも考えたら、エイトとククールじゃそのキラーパンサーに負担がかかっちゃうよね。
それはちょっと可哀想だ。

「なんなら交代で乗るかい?」
「そうする!それがいい!」
「本来ならオレはニナの護衛だから、オレと一緒に乗るべき「さ、ニナ、最初は僕と一緒に乗ろう」
「わっ」
「エイトてめえ…!」

ククールの言葉途中にも関わらず、エイトは私を持ち上げ、キラーパンサーに跨らせた。
その後ろに飛び乗ると同時に走り出す。
ククール置いてきちゃわないかな、と後ろを振り返ってみれば彼も颯爽とキラーパンサーに乗っていたので心配なさそうだ。
いちいち動作がかっこいいな!
寧ろ心配なのはヤンガスとゼシカだろう。

「ヤンガスー!ゼシカー!気をつけてねー!!」
「ニナもねー!!エイトとククール、しっかり守りなさいよー!!」
「アニキー!!しばしの別れでがすー!!」
「ゼシカ任せといて!ヤンガスも、また後で!」
「言われなくとも守るっつーの!」

軽く手を振って、ヤンガスとゼシカも振り返してくれたのを確認して、それから前を向いた。
のびのびと走るキラーパンサーは、まるでバイクのように早い早い。
バイクなんて乗ったことなかったけど、きっとこんな感覚なのだろう。
風が頬を滑っていく感じがとても清々しくて気持ちよかった。

「うわあ…!凄いね、気持ちいいね!」
「ニナ、はしゃぐと落ちるから気をつけて」
「あ、うん、ごめん」
「まあ、僕がニナの事しっかり捕まえておくから心配しないでいいけどね」
「う、うん」

キラーパンサーの背中は狭すぎず、広すぎず。
一人で乗る分には十分なスペースだが、二人乗りとなるとさすがに密着しないと無理。
つまり、今、私とエイトは密着状態にあるわけで…そんな状態で後ろから囁かれたら顔が赤くなるわけで。

どうしてこの世界の方々は恥ずかしげもなくキザな台詞が吐けるんだろうなあ。
エイトといい、ククールといい。
紳士ばかりで、相変わらずそんな対応に慣れない私はドギマギしてしまう。

エイトの手がお腹に回ってきたときに「ヒャッ」と出てしまった声は、風の音にかき消されて聞こえてないと願いたい。

2016.8.10(2015.9.8)
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