DQ8 | ナノ


  18:それぞれの絆


マルチェロさんとの話が終わり、部屋の外に出てみると誰もいなかったのでそのまま外まで出た。
途中で会う人皆がありがとうと言ってきたりだの、拝んできたりだのするもんだから凄く恥ずかしくて、曖昧にへこへこお辞儀をしながら通り過ぎてきた。

エイト達とマルチェロさんの話も私が寝ている間に終わってるだろうし、あとは旅に出るだけ、かな?
本来ならばオディロ院長に挨拶をしたかったところだけど、オディロ院長の体はまだ回復していないらしいのでそれは諦めた。
生きているんだ、これからいくらでも時間はある。
旅の合間にでも様子を見に来ようと思う。

おじいちゃんとはやっぱりたくさん話がしたいし!




外に出るとエイト達は馬車の周りに居た。
見た感じこれから旅に出るところのようだ。

「あ、ニナ!」

私に気づいたゼシカが手を振る。
馬車に近寄ると、中からひょっこり緑の魔物…もとい、トロデ王が。
こうして見てみると、やっぱり愛嬌あるよなあ…人間の時も、この姿の時も。

「お主がニナじゃな!話は全て聞いた…えらいっ!えらいのう!是非ワシの子分になって共に旅をするがよい!」

ぐわっと近寄った顔はなんとも迫力のあるもので。
とはいえ、実際人間の姿とそんなに変わら…げふん。
トロデ王はトロデ王だ、うん。

「ニナの嬢ちゃんは子分になるなんて一言も言ってないでがすよ」
「それに、まだ一緒に旅するとかそんな話もしてないわ」
「そりゃあ王の言うとおり、一緒に来てくれたら心強いとは思いますけどね」
「じゃがその為に待っていたのじゃろう?」

言って全員でチラッとこっちを見る。
なんだその打ち合わせでもしたかのような集団行為。

「あの…私は元々みんなの旅に加わるつもりでここにいるから。是非一緒に連れてって欲しいんだけど…いいかな?」

どういう顔をしていいかわからず、ヘラリと笑ってそう言うとゼシカにガシッと手をつかまれた。
そして上下にぶんぶん振られて。

「大歓迎よ、ニナ!同性のあなたが居てくれたら嬉しいわ!!」
「それは良かった。私もゼシカと一緒に旅が出来るの嬉しいよ。それに…ミーティア姫、あなたとも」

ゼシカの手をやんわりと離し、ミーティア姫の鬣を撫でる。
姫も嬉しそうにヒヒン、と嘶いた。
その様子をトロデ王はうんうん、と感慨深そうに頷き、エイトとヤンガスは笑顔で見守っててくれた。

「同性じゃなくて悪いけど、オレも一緒に行くことになったんでな、ひとつよろしくしてくれないか」
「ククール!」

エイトに名前を呼ばれ、ククールはこちらに近づいてきた。

「兄貴にニナの護衛をしろ、と頼まれてね」

そう言って私の方を向き、ウインクを飛ばす。
未来のククールも大人でカッコよかったけど、やっぱり元々カッコイイんだよねこの人は。

「ゼシカ、キミのことも守るから心配してくれなくていいぜ」
「誰が心配なんかしているもんですか!」

同じくゼシカにもウインクを飛ばしていた。
…これがなけりゃ、素直にカッコイイと思えるんだけどな…女性に見境なくっていうのはちょっと嫌だな。


…ん?
いや、でもククールは女性大好き人間だからこんなものか?
なんで嫌って思ったんだろ…まあ、いいか。


「じゃあ改めて。ニナ、ククール。これからよろしく頼むよ」

エイトのその一言で、みんなと握手を交わした。
これでようやく私の旅が始まるんだ。
目指しているものは困難なものだけど、みんなと一緒なら何でも出来ちゃうような気がする。
そんなドキドキと緊張を抱えながら、私はパーティーの一員へと加わった。

さあ行こう!という時、ふと振り返ってみると修道院の入り口にマルチェロさんが立っていた。
お見送りらしく、私と目が合うと丁寧にお辞儀をして。

私がここに来る前にククールと少し話しをしたのだろうか。
ククールにも不機嫌な様子は見当たらないし、心なしかマルチェロさんもすっきりしたような顔をしている…ような、気がする。
ほんの少しでも二人の仲が縮まってたらいいな、と思う。



「ニナ、ボーッとしてると追いてっちゃうよ」
「あ、ごめん!行くよ!」

エイトに声をかけられるまで私はマルチェロさんの方を見ていた。
ククールは先頭を歩いてしまっているので、マルチェロさんが見送ってくれているなんて気づいてないんだろうなあ。
今はまだ、それでもいいか。



「さて、次は何処に向かうんだ?」
「とりあえず東に向かおうと思っているんだ、ドルマゲスが飛び去った方向が東の方だったから…何か手がかりが掴めないかと思って」

歩きながら次の進路を話すククールとエイト。
しばらく話していたと思ったら、二人して私を振り返ったものだから一瞬ピタリと足が止まってしまった。

「な、何?」
「ニナはさ、この先の出来事を全て知ってるんだよね?」
「うん?まあ、一応知ってるけど」
「じゃあ次に行くべきところが解るんじゃないかって話」
「あー…ああ、まあー…」
「なんだよ歯切れ悪いな」

知ってるには知ってるけど。
あんまりサクサク進んでしまったところで、今のエイト達ではドルマゲスに勝てないのは一目瞭然で。
もちろんその中には私も含まれているわけで…絶対的にパーティーの経験値が足りない。
そんでもって行ったことあるのがベルガラックのみで、キメラの翼を持ってしても他には行けないわけで。

「知ってるけど、それは私という人物が居なかった世界の話だからね。私が来てから物語は変わりつつある。だから、その通り進んでも上手く行くという保証はないっていうことと…それに、みんなもっと力をつけないとドルマゲスには勝てない。だから旅をしながら力をつけなきゃダメってこと」

ぶっちゃけ東のアスカンタに行くのは決定してることだから、次はアスカンタ城目指してますって言ってもいいんだけどさ。
とりあえず最もらしいことを言ってみた。

「なるほどね、それは一理あるな」
「そういう事なら仕方ねえな」

とりあえず二人共素直に納得してくれちゃったので助かった。
なんともお手軽な二人だ…!
未来では完全に私では歯が立たなかったけど、今ならこの二人とも対等にいけるんじゃないの。
それなら旅の途中で手合わせとかしてみたいな、とか思ってみたり。
修行だって言えばいつでもやってくれそうだけどね。
…ああ、でもゼシカの呪文だけは今も受けたくはない、かな。なんとなくだけど既に威力ありそうだし。

それにしても、ククールの態度が砕けすぎているというのは如何なもんか。
個人的には喜ばしいことなんだけど、ゼシカと私に対する態度が違うというか。
女性らしく扱われてない気がする。
………別に、いいけど。


エイトとククールを先頭に、それからトロデ王とミーティア姫の馬車、その後ろに私とゼシカと最後尾はヤンガス。
そんな感じで歩いているので、私はゼシカとのお喋りを楽しむことにした。

「ニナはオディロ院長を助ける直前にここ…この時代って言ったほうがいいのかしら、来たばかりなの?」
「あ」
「あ?」

そういやゼシカにサーベルトさんのことを言うのはいつにしたらいいんだろうか。
時期を伺うにしても難しいなあ。

「何でそんなこと聞くの?」
「んー、もしもあの時あなたが居てくれたらな、とかちょっと思ってるだけ…って、これはこっちの話だから気にしないで!」

あの時っていうのはやはりリーザス像の塔の話だろうか…それしかないだろうな。
ということは、やっぱりリーザス像の記憶はサーベルトさんが倒れたところで終わっていたようだ。
まあ、そうじゃなきゃゼシカは旅に出てるわけないもんね。

「実はね、私の兄も……話の流れを知っているならこのこともニナはもう解っているかな?」

思いつめたような顔をしてそう言ったゼシカ。
こんな表情をさせるためにサーベルトさんをリーザスに帰さなかったわけではないのに。
…とても黙ってなんていられない。

もう黙っている必要もないよね?

「ゼシカ、あのね。サーベルトさんは生きてるよ」

そう言うと、ゼシカの目が大きく開いた。
元々大きい目が更に大きく開いて可愛い。
今本人に言ったら殴られそうだから言わないけど。

「ニナ………、もう一回言って!」
「サーベルトさんは生きてるよ、私がこの時代に来たのはサーベルトさんとドルマゲスがリーザス像の塔で対峙したあの日なんだ」
「……!!!」
「おわっ!」

言い終えた瞬間、ゼシカは無言で私に勢い良く抱きついてきた。
突然のことで後ろに倒れかけたところ、ヤンガスがぐぐっと押し返してくれたので助かった。
後ろを振り返ったみんなも何事かという表情をしている。
それにしてもゼシカってばマジで胸大きい…羨ましいなコンニャロ。

「ニナ……あなたって最高だわ…!」

ゼシカの目には大粒の涙が浮かんでいて、それは次第にボロボロと流れ落ちた。
私は思わずゼシカの頭を撫でた。
サーベルトさんのこと大好きだもんね、ゼシカは。
黙ってようとしててごめんね。
心の中でそう謝罪をし、ゼシカが泣き止むまでゆっくりと頭を撫で続けた。
その間もちろんみんなも止まって待っててくれて。
ようやく泣き止んだ頃、一行は再び歩みを進めることとなった。





「ゼシカはサーベルトさんの仇をとるためにこの旅に加わったんだよね?」
「そうよ、でも兄さんが生きている今、その目的は変わっちゃったわね」
「旅から離脱しようとは…思ってない?」
「んー、そうねえ…兄さんが生きていたとはいえ、ドルマゲスを野放しにすることは出来ないわ。それに兄さんを助けてくれたニナの手助けがしたいなって…単純って言われるかもしれないけれど、今はそう思うわ」
「良かった、それを聞いて安心した」

笑いかけると、ゼシカも笑顔で返してくれた。
旅に出てしまってる今、そう簡単に帰るとは言わないって思っていたけれど…確信していたわけではない。
正義感の強いゼシカは、最後まで一緒に来てくれると言ってくれた。
私もゼシカが居てくれることで心強く思うことはたくさんあると思う。
やはり同性って必要だしね…そう思うと、ゲームでは女性はゼシカ一人だったから、きっと見えない部分で色々大変だったんじゃないかなあ、なんて。
ゲームの裏側なんて見えないからわからないけどね。
でも今はこうして一人の人間として一緒にいるわけで、そういうことまで考えてしまうのは自然の道理ってもんだろう。

「改めてよろしくね、ゼシカ」
「ええ、こちらこそよ、ニナ!」

改めてガッチリと握手を交わした私達の絆。
少しずつでいいから、もっともっと深めていきたいと思った。

2016.4.13(2012.11.27)
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