花霞1



慶幸、ほのぼの・微甘・やや切なめ。(慶次は2頁目から登場・上杉に入ってない) 夢吉・モブ少し


以前頂いた素敵絵(慶次)から、妄想させてもらったもの。後書き別ページに絵を貼らせて頂いてるので、是非どうぞ(^ω^) サイト様は非BLですが、私のリクを絵に取り入れて下さいました。詳細は後書きに。

絵の中の小物にかなりの妄想、管理人嗜好。戦国慶幸でこういうのしたかった、しかし結果は; やり取り三昧、乱文
※一部のネタと台詞、絵作者様のを拝借。
背景や手紙の内容とか、無理やり感たっぷり。どうか生ぬるい目で…


(全3ページ)













今回の戦は近隣友好国との協力により快勝、武田軍はそこで歓待を受けることになった。

城下では賑やかな祭りが催され、国中が祝賀の喜びにあふれている。武将たちも、屋敷内外で宴に興じていた。


「真田殿、もう休まれるので?」
「せっかくの夜だぞ、そなたも町へ出てくると良い」

「いや…充分楽しみ申した。今宵はこれにて失礼致しまする」

幸村は申し訳なさそうに笑い、一礼してその場を後にする。

佐助ら忍隊は、伝令などでほとんどがここにいない。つまり自由にやれるが、そういうときに限って、不慮の出来事に出くわしたりするのだ。後で聞かされる小言を思えばと、幸村は慎ましく用意された寝所へ向かった。

「文が届いております」
「ここにか?」
「上田で此度の勝利を知り、こちらに赴いたそうで。急ぎの用でなければ良いのですが」
「…ああ、心配には及ばぬよ」

外紙に記された印に笑みを見せ、幸村は従者を安心させる。彼を下がらせると寝所に入り、文を広げた。

送り主は、武家の出ながら風来坊名高い、前田慶次。以前に上田へ来て以来、度々幸村を訪ねるようになった。
初対面の印象こそ良くはなかったが、親交を深める内にそれは変わり、いつしか抱く気持ちや二人の関係も──…文のやり取りは、友人としての意味合いだけではないのである。


(む…?)


広げた包みから何かが落ち、意外な気持ちでそれを拾う。花や香草はよく入っているが、そういう物は初めてだ。説明等は何も書かれていないようだが…

書面に目を通すにつれ、幸村の瞳は徐々に細くなり、頬には熱が集まってくる。


「……っ」

読み終えたところで宴の笑い声が届き、慌てて明かりの火を消した。──今この顔を見られるのだけは避けたい。

『文でもあのような…』と慶次を軽く罵りながら、布団にぱたりと横たわる。
といっても、そこまで甘い恋文ではないのだが、『いとしい』だの『逢瀬を夢見て』だけでも、幸村にはかなりの衝撃となるのだ。


(そういえば…)


『春になったら、一緒に花見してぇなあ。俺、良い酒持って来るからさ』


前の冬に、上田の桜の木を見てそう言っていたのを思い出した。今頃はそろそろ満開のはず。ここの桜も真っ盛りで、それ目当てで町へ出た者も多い。

誘いの文を返せば、受け取った慶次は即刻上田へ向かうだろう。だが、幸村は信玄のもとに数日いる予定で、その後もしばらく忙しい身。慶次とゆっくり会ういとまは望めず、空いた頃には桜はもう散っている。


(……せめて、同じ風情だけでも)


都でも毎年見事に咲くと言う。きっと毎夜のごとく、その下で酒をたしなんでいるに違いない。

もうどうせ眠れぬだろうしと考えを変え、幸村は布団から身を出した。











祭り囃子は止んでいたが、人々の楽しげな笑い声や点在する灯りで、町はまだ賑わいを見せていた。
良く晴れた月の明るい夜で、咲き誇る桜の輪郭や色が見事に映える。
町中の川沿いに並ぶ桜道と、そこかしこで花見に興じる町人たち。中には武田の者や、今回ともに戦ったこちらの同朋らもいた。

一緒にどうだとあちこちから声を掛けられたが、上手く断り手を振る。文を読む前であればそうしていただろうが、今夜は静かに味わいたい。


(おぉ……)


町を抜けてすぐの田の傍に、一本の立派な桜が立っていた。幹はどっしりとし、花が雲のように豊かだ。周りに桜は他になく、花見客もいない。これはしめたと、幸村はそこへ近寄った。

近くで見るとより大きく鮮やかで、まるで彼のようだと、幸村にしては色のある感慨が湧く。それに一人恥じ入ると、幹を背に座った。


「……」


(…会いとう……ござるなぁ…)


桜を堪能するつもりが、見上げていてもそればかりが浮かぶ。慶次が口癖のように言うので、移ってしまったのだろうか。自分は、こんな気質ではなかったはずなのに…

ざざ、と風が吹き、着物の袖が前にはためく。それにひらひら落ちる花弁を楽しんでいると、自身の袖ではない影が揺らめいているのに気付く。
ハッと立ち幹の後ろを覗けば、反対側に人が腰を下ろしていた。


(きっ、気付かなかった…!)


さらに情けないことに、この彼は随分前からいたらしい。腕を組み頭を傾け、寝入っていた。
顔には狐面を付け、白を基調とした舞楽の衣装をまとっている。祭りを盛り上げた一団の一人なのだろう。

髪のまとめ方が、彼に似ていた。幹と背の間に挟まり長さは分からないが、これであの派手な飾りがあればな…ついそんな願望まで抱いてしまう。

「ぁ…」

彼の肩に乗った、一房の桜…二花のみだが、小さくて可愛らしいそれに目が留まる。
文に入れてみれば、少しはこの想いも伝わるだろうか。後でからかわれるかも知れないがと苦笑し、『失礼しまする』と静かに手に取った。


「え…ッ」

いきなりその彼に腕を掴まれ、幸村はギョッと戦く。
寝込みを襲う野盗と思われたに違いない、「いやあの!」と慌てるが、相手は片手で面を上げ、



「やあ──…俺に逢いに来てくれたのかい?」



……現れたのは、幸村のよく知る笑み。

隠れていた長い髪が、ふわりと風に揺れた。


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