キミ想う


政宗殿


正月も終わりしばらく経ちましたが、いかがお過ごしでしょうか。


某はお館様や佐助、武田の皆と年を越し、その後は某のみ武田道場で正月特別鍛練をいたしました。


久々に天孤仮面殿や火男仮面殿にもお会いでき、とても楽しゅうございました。


某、いつも以上に熱くたぎり、珍しく身体中に火傷を負ってしまいました。


怪我はつきものなのですが、こうも全身に痛みを伴うのは久方ぶりで、まだ某は未熟であると思い知った所存でございます。


道場から上田城に帰ると、何故だか佐助も傷だらけでして。はて、隠れて鍛練でもしたのかと不思議でございました。


その佐助が某の火傷の治療をしている時に「早く今年が終わればいいのに」ととても嫌そうに言うのです。今年は始まったばかりだと言うのに。


「何故?」と聞けば「辰年だからに決まっているじゃん」と。


何でも、政宗殿を思い出すようで、それが嫌なのだそうです。


確かに。今年、政宗殿は益々力を得るのでしょう。奥州の話はこの上田にも届いておりまする故。


しかし、それは武田とて同じ。


微弱ながら某、今年はより一層武田のために槍を振り、知を絞る所存でござりますれば。


政宗殿がどのように力をつけようとも、決して負けはしませぬ。


逆に、常に政宗殿に見られている様な気分になり、ますます鍛練に力も入るというもの。


そう答えると、佐助は「だから嫌なんだ」と益々不機嫌になるばかり。


家臣に聞けば、某がいない時に政宗殿は佐助と鍛練や知能比べをされているとか。


佐助にとっても政宗殿は好敵手なのかもしれませぬな。


某、今は槍を振るしか芸はござらんが、今年中に知略も身に付け、政宗殿や佐助に追い付きとうございます。


今年一年も、どうぞ宜しくお頼み申す。


真田幸村


―――――――――――――――――――――――――


 手紙を読んで、政宗は持っていた煙管を思わず落としそうになった。


「ったく。何時、俺がアイツとrivalになったんだよ」


 確かに、佐助とは色々と喧嘩やら罵り合いをしているが、それは幸村が思っているような爽やかな理由では断じてない。


 政宗と佐助が顔を合わせれば、家臣たちは皆、二人の間に流れる禍々しい波動で逃げていくというのに。


 そのことに全く気づかない幸村に対して「Happyなヤローだぜ」と悪態をつくが、張本人がいないので説明のしようもなかった。


「大体、俺への手紙だってのになんだってアイツの名前が多いんだよ」


 こちらは手紙でしか新年を祝うことができないと言うのに、年の節目を一緒に過ごせる佐助の身の上を考えて、政宗は盛大に舌打ちする。


「新年早々嫌な手紙送ってきやがって……」


 そう言って手紙を破こうとするが、いざ紙に触れると破くどころか握り潰すこともできない。


「くそっ」


 どんなに雑に扱おうとしても、指だけは名残惜しそうに和紙に触れるので、政宗は諦めて煙管をガリガリと噛む。


 思い知ってしまう。


 腹が立っても、結局は嬉しい。


 無精な彼が、己のために筆をとってくれた事実が。


「絶対に負けねぇ。今年こそは、俺が勝つ」


 闘志を露にして決意する政宗。


 誰に対して、なのかは彼しか知らない。

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