SINGLES14
「旦那、もう離さないカラ……」
震える手でカレの髪を、頬を、唇をなぞった。
「欲シイ、欲シイヨ。心ガ寒インダ」
求めているのは、カレの心。
ただ、カレの心の中に根強く存在できたのなら。
けれど、もし心を得たら、今度はこの身体を欲するのだろう。
今の政宗と同様に。
アイツは身体を、己は心を渇望している。
カレのその全てを手に入れることはできない。
どんなにカレと共に在っても。
結局は独りきりなのだ。
「幸村……ゆきむら……」
禁忌としていた、カレの名を呼ぶ。
いつか、カレが己を最も大切な存在にしてくれた時に呼ぼうと決めていたけれど。
そんな時は永遠に来ない。
「嗚呼、イカナイデ。ゆきムラガイナイト、オレ……」
胸の苦しさで気も狂わんばかりになる。
愛しているなんて言葉じゃ、足りない。
そんなモノで己たちを束ねたくはない。
「生キテイラレナイ……死ヌコトモデキナイ……」
狂おしく抱いた身体。
ただ己のなすがままのカレの器は、とても冷たかった。
Copyright c 2003 SCRIPT 『SINGLES』
(感想&お礼)
もう、切ない…!
出だしの文からして素敵で、こんな綺麗な心理描写書けるの、本当にすごいと。
リク通り、二人がめちゃくちゃ幸村を好きで。だからお互い疎ましく思ってて、幸村がいないときは存在しないものくらいな態度で。二人なのに独り…その状況が、まざまざ浮かびまする。
そして、何と佐助ェ…(@゚▽゚@)
すみません、後読んで自分を叱りましたが、めっちゃ喜んでしまった。自分のバカ!佐助は、もっと高尚な考えでした。つい、「してやったり」な感じで、ゲットしてたんかと思ってしまい;
で、幸村の二人への想いと、佐助の想いに心が締め付けられました。もちろん、政宗の想いも切なくて、会えない苦しさからの気が狂いそうなのは分かる。しかも、両想いだったと知れば尚のこと。
けども、やはし佐助の気持ちを思うと、ぐぁぁってなります。いや、三人ともが切ない。政→幸←佐もだけど、政←幸→佐の想いも強くて。政宗へとは違うけど、佐助へも…という。
感想がボロボロで申し訳ないんですが、本当に心揺さぶられたのです。
SCRIPTの『SINGLES』も聴くと、切なさ倍増です。
ゴマ様、本当にありがとうございました。
これからも、よろしくお願いします(*^^*)
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