SINGLES12
「今日はとてもいい天気だったよ。太陽がまぶしかった」
カーテンを閉めきり光を遮断した部屋。
佐助は壁に寄りかかり、抱きしめていた人間にそっと語りかけた。
「そうそう。アイツの所に行く途中に美味しそうなケーキ屋を見つけたんだ。買ってきたから一緒に食べようね」
優しく話しかけても答えはない。
それでも佐助は楽しくてたまらないというようにしゃべり続ける。
「旦那に似合いそうなアクセサリーも見つけたよ。今度おそろいで買おうね」
そうニッコリと笑って、佐助はカレの髪を優しく梳いた。
「どう? この服。似合うかな? 旦那ほどには似合わないけど、ちょっとは馴染んできたかな?」
佐助のなされるがままになっているカレの瞳は虚ろ。
肌も青白く透き通り、唇も微かに開いて只息をするだけ。
けれど、カレの髪だけはとても艶があった。
毎日、佐助が丁寧に手入れをしていたから。
「旦那はいつも赤を着ていたから、俺様も最近赤を着ているんだ。こうしていれば旦那も一緒に外に出られるでしょ? 旦那は、一番綺麗な紅なんだから」
わざと明るくおどける佐助。
「旦那の心も、いつも俺と一緒だよね……?」
気づいたら、哀願するように呟いていた。
さきほどの楽しそうな様子は消えている。
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