SINGLES11


 己の住むマンションの鍵を開けながら、佐助はボンヤリと考えた。


 政宗は今頃、カレの心と一緒になろうとしているのだろう。

 カレのためなら簡単に己の身体を捨てられるに違いないから。


 それは佐助も同じ。

 カレの心が手に入るなら、こんな身体なんていくらでも捨てられる。


 でも、佐助はその身体を捨てられない。


 なぜなら。



「ただいまぁ」


 扉を開けて、佐助はとても優しい声で帰宅を告げる。


「遅くなってごめんね? なるべく早く帰ってきたんだけど……。寂しかったよね?」


 そう言いながら無造作に靴を脱ぎ捨てた。


「会社も正式に届け出をしてきたよ。これからは家で仕事ができるんだ。喜んでくれるよね?」


 足早にベッドルームへと向かっていく。


「相変わらずアイツが鬱陶しくてさぁ。でも、もう大丈夫。アイツに会うことはもうないから。旦那の秘密を言ったのは癪だったけど……、それよりも2人の時間を大切にしたかったから。ねぇ、許してくれるよね?」


 待ちきれないとばかりにドアノブをひねった先には、ベッドに座る愛しい人の姿がある。




「ずっと、一緒にいられるよ。 ……旦那」



 その姿を見て、佐助はとても幸せそうに微笑んだ。


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