SINGLES11
己の住むマンションの鍵を開けながら、佐助はボンヤリと考えた。
政宗は今頃、カレの心と一緒になろうとしているのだろう。
カレのためなら簡単に己の身体を捨てられるに違いないから。
それは佐助も同じ。
カレの心が手に入るなら、こんな身体なんていくらでも捨てられる。
でも、佐助はその身体を捨てられない。
なぜなら。
「ただいまぁ」
扉を開けて、佐助はとても優しい声で帰宅を告げる。
「遅くなってごめんね? なるべく早く帰ってきたんだけど……。寂しかったよね?」
そう言いながら無造作に靴を脱ぎ捨てた。
「会社も正式に届け出をしてきたよ。これからは家で仕事ができるんだ。喜んでくれるよね?」
足早にベッドルームへと向かっていく。
「相変わらずアイツが鬱陶しくてさぁ。でも、もう大丈夫。アイツに会うことはもうないから。旦那の秘密を言ったのは癪だったけど……、それよりも2人の時間を大切にしたかったから。ねぇ、許してくれるよね?」
待ちきれないとばかりにドアノブをひねった先には、ベッドに座る愛しい人の姿がある。
「ずっと、一緒にいられるよ。 ……旦那」
その姿を見て、佐助はとても幸せそうに微笑んだ。
[ 191/194 ][*前へ] [次へ#]