SINGLES10
――なぁ、佐助。お前は前世という存在を信じるか?
絨毯張りの廊下を気だるく歩いていると、あの時のカレの声が蘇ってきた。
カレは、己の前世を思い出したことを異常だと思っていたようだったが、2人は生まれた時からカレのことを覚えていた。
――自分でも変なことを言うと思うのだが……。笑わないでくれるか?
カレに前世を思い出して欲しくなかったのは、政宗と佐助、互いがカレに対して、互いが手の届かない絆を築いていたからだった。
政宗はいつもカレの心の中に存在し、佐助はいつもカレと共にあった。
傍にいたい。心を独占したい。
そんな己の渇望するモノをやすやすと手に入れる互いが憎らしくて仕方なかった。
――俺は、政宗殿のことを……
だから、思い出して欲しくナンテナカッタノニ。
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