SINGLES9
「なんだと?」
佐助の言葉を聞いて、政宗は眉を吊り上げる。
「アンタは、幸村が居なくても生きていけるのか? 幸村がこの世界に居るのに死ねるのか?」
「そんなわけないでしょ。俺様は旦那のいないこの世にも、死の世界にも興味はないよ」
そう言って、佐助は赤いパーカーに視線を落とす。
「でもさ、想うんだ。こうまでして俺様たちの前に現れない旦那は、俺様たちに見つかって欲しくないのかなってさ」
「……」
「言いたくなかったけど」
少し口ごもってから、佐助は再び口を開く。
「旦那の心はアンタにあった」
佐助の言葉に息をのむ政宗。
そんな政宗の様子を見るのも嫌で、佐助は瞳に赤を映したまま言葉を続ける。
「旦那が姿を消した前日、俺様は旦那に会ってたんだ。旦那、前世のことを思い出したらしい。それで、好敵手のアンタを今でも求めてるって」
「それは、ホントか?」
驚きで身を乗り出した政宗に佐助は政宗を見ずに頷く。
「幸村……」
カレの名を呼んで、そっと己の胸に手を当てる政宗。
心は共にあると知って、只、歓喜に震えた。
そんな政宗に別れの挨拶もせずに、佐助は部屋を出た。
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