光抱いて闇に染まる18
「俺が家康殿を裏切っている時、あの方は俺を必死に探してくれていた。そして、もう、目が覚めないと――!」
「旦那、落ち着いて。もしかしたら目が覚めるかもしれない。心臓はまだ動いているんだ」
懺悔と後悔で己を傷つけんばかりの幸村の手を、佐助は優しく包み込む。
救急車で運ばれた家康の命は何とか助かった。
しかし、脳に大きな傷を負っていた彼は、今も眠り続けたまま。
「おれは…、どう したら……。もう、つぐない ようも、ない――」
うつろな瞳で呟く幸村。
その様は危うさと暗闇を抱えて、より一層匂う様な色香に包まれている。
その色を纏わせたのは間違いなく、政宗の仕業だった。
その体にも心にも、唯一の痕をつけた。
「あの人は分かってくれるよ。だって、旦那が好きになった人でしょう? 旦那の気持ち、きっと分かってくれる」
人形のように生気をなくしたカレの頬にそっと触れて囁く佐助。
全ては、佐助の計算通りだった。
思いつめた政宗の犯した行動も。
珍しく我を忘れた家康の起こした事故も。
全て、佐助が見越していたこと。
己は何も手を汚さず、その狡猾さで、彼は大きな罪を犯した。
全ては、カレを手に入れるために。
「俺が家康殿の代わりに眠ればよかったんだ」と呟いた幸村の言葉に、たまらず佐助はカレを抱きしめた。
「そんなこと、言わないで……」
それは哀願だった。
幸村が眠るアイツの元に行ってしまったのなら。
もう、二度と傍にいられなくなってしまう。
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