光抱いて闇に染まる18



「俺が家康殿を裏切っている時、あの方は俺を必死に探してくれていた。そして、もう、目が覚めないと――!」


「旦那、落ち着いて。もしかしたら目が覚めるかもしれない。心臓はまだ動いているんだ」


 懺悔と後悔で己を傷つけんばかりの幸村の手を、佐助は優しく包み込む。



 救急車で運ばれた家康の命は何とか助かった。


 しかし、脳に大きな傷を負っていた彼は、今も眠り続けたまま。



「おれは…、どう したら……。もう、つぐない ようも、ない――」


 うつろな瞳で呟く幸村。


 その様は危うさと暗闇を抱えて、より一層匂う様な色香に包まれている。



 その色を纏わせたのは間違いなく、政宗の仕業だった。


 その体にも心にも、唯一の痕をつけた。



「あの人は分かってくれるよ。だって、旦那が好きになった人でしょう? 旦那の気持ち、きっと分かってくれる」


 人形のように生気をなくしたカレの頬にそっと触れて囁く佐助。



 全ては、佐助の計算通りだった。


 思いつめた政宗の犯した行動も。

 珍しく我を忘れた家康の起こした事故も。


 全て、佐助が見越していたこと。


 己は何も手を汚さず、その狡猾さで、彼は大きな罪を犯した。



 全ては、カレを手に入れるために。



 「俺が家康殿の代わりに眠ればよかったんだ」と呟いた幸村の言葉に、たまらず佐助はカレを抱きしめた。


「そんなこと、言わないで……」

 
 それは哀願だった。


 幸村が眠るアイツの元に行ってしまったのなら。



 もう、二度と傍にいられなくなってしまう。


[ 176/194 ]

[*前へ] [次へ#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -