光抱いて闇に染まる15
佐助は、暗い山道を歩いて行く。
月の光さえも入らない、自然の凶器が隠された暗闇の中を。
過去に3人で遊んだ政宗のコテージの周辺は、実はとても危険だった。
行き慣れた政宗でさえ、通常は昼間にしか歩かない。
コテージのすぐ近くには、とても急な崖があった。
昼間でさえも足を踏み外しそうなその崖。夜になれば、さらに危険度は増す。
崖の下まで歩いて、佐助はおもむろに懐中電灯を照らした。
そこには。
「やっぱり、焦り過ぎだったんだよ。アンタらしくなかったから。崖、注意しろって言ったでしょ?」
頭に血を流して意識を失っている、幸村の最愛の人が倒れていた。
「これでアンタは、永遠に旦那から愛されるんだね。どんな気持ち?」
青白い顔で目をつぶる家康に対して、佐助は静かに語りかける。
「いや、アンタはそんなこと望んでいないか。未来に向かって、腹立たしくなるくらい希望を持っているもんね」
そう言って、佐助は暗く笑った。
「俺達みたいに光に焦がれる必要もない。だって、アンタ自身が光を持っているんだから」
その明るさが、ずっと羨ましかった。妬ましかった。
カレを手に入れて。
失うという恐怖など微塵も感じず。
カレからの想いを微塵も疑わず。
共に歩める幸せだけを感じていたのだ。
そう、己にとって唯一の光と共に。
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