光抱いて闇に染まる14



「……お馬鹿さん」


 腕を組んでコテージに寄りかかり、佐助はそっと呟いた。


 窓を覗けば、眼を潰したくなるような痴態が繰り広げられているのだろう。



 犯される方も、犯す方も。

 只、涙を流して。



 虚しさしか残らない悦楽におぼれた、罪深い2人を見る勇気はさすがの佐助もなかった。


 止めることもできる。

 このまま、窓ガラスを割って、無理矢理にでも2人を引き剥がしたのなら、これ以上幸村が闇に染まる事はないだろう。



 けれど、それはできないのだ。



 己が幸村を手に入れるためには。




「……っ」


 荒い息を吐きながら、佐助は己の胸を掴む。


 苦しい。息が出来ない。

 嫉妬で胸が潰れそうだ。



 最愛の人が恋をしたと言った時から、己の心は死ぬほど嫉妬で乱れたというのに。


 まだ、嫉妬の感情があったのか。



「くくっ……」


 乾いた笑い声を上げる佐助。



 己の中を渦巻く感情が嫉妬という陳腐な感情だけなのが可笑しかった。


 これから背負う己の罪に対する罪悪なんて微塵も感じていないのだ。



 その事に気づき、己は本当に罪深い存在なのだと思い知る。



「本当に、バカ、だね……」


 絶え絶えに呟く佐助。



 誰に言っているのか、己にも分からなかった。


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