光抱いて闇に染まる12
「…え………?」
体中に、電撃が走ったかのようだった。
想ってもいない言葉に、幸村の前身の力は抜ける。
倒れそうになる彼の身体を、政宗はとっさに支えた。
至近距離で交わる視線。
独眼の彼の秘めた瞳の狂おしさに、幸村は息苦しさを覚えた。
「ずっと、……ずっと。アンタが、あの男と出会う前から、アンタだけを想っていた」
悲しげに頬を撫でる、温かい手。
今までは友として触れていた手。
けれど今己に触れているのはそれとは別の、
男としての手だった。
「まさ、むね……どの」
「幸村……」
名前を呟けば、きつく抱きしめられる。
「すまない、幸村……。でも、アンタが他の男に奪われるなんざ、俺は我慢できねぇんだ」
「好きだ」と囁かれ、狂おしく抱きしめられて。
混乱しながらも幸村は、己の鈍さを責めた。
今まで、己は友人だと思い込み、彼の心を踏みにじり続けていたのだ。
その己の罪深さに、吐き気がする。
けれど。
その幸村の脳裏に浮かんていたのは、家康の笑顔だった。
いつも己を明るく包んでくれる、生まれて初めて己が恋した人。
その人を裏切ることは、断じてしたくなかった。
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