光抱いて闇に染まる12


「…え………?」


 体中に、電撃が走ったかのようだった。


 想ってもいない言葉に、幸村の前身の力は抜ける。

 倒れそうになる彼の身体を、政宗はとっさに支えた。


 至近距離で交わる視線。

 独眼の彼の秘めた瞳の狂おしさに、幸村は息苦しさを覚えた。



「ずっと、……ずっと。アンタが、あの男と出会う前から、アンタだけを想っていた」


 悲しげに頬を撫でる、温かい手。

 今までは友として触れていた手。


 けれど今己に触れているのはそれとは別の、

 男としての手だった。



「まさ、むね……どの」

「幸村……」


 名前を呟けば、きつく抱きしめられる。



「すまない、幸村……。でも、アンタが他の男に奪われるなんざ、俺は我慢できねぇんだ」


 「好きだ」と囁かれ、狂おしく抱きしめられて。


 混乱しながらも幸村は、己の鈍さを責めた。


 今まで、己は友人だと思い込み、彼の心を踏みにじり続けていたのだ。

 その己の罪深さに、吐き気がする。


 けれど。



 その幸村の脳裏に浮かんていたのは、家康の笑顔だった。

 いつも己を明るく包んでくれる、生まれて初めて己が恋した人。


 その人を裏切ることは、断じてしたくなかった。


[ 170/194 ]

[*前へ] [次へ#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -