光抱いて闇に染まる9
『猿飛! この伝言を聞いたらすぐに電話をくれ、幸村がっ……!!』
切羽詰まった友人からの伝言メッセージを、佐助は冷めた表情で聞いていた。
嗚呼、この時が来たのだと思った。
恐れてもいたこの事態。
それなのに、実際に起こってしまえばあまりにも冷静な己がいた。
「もしもし……。一体、こんな真夜中にどうしたの? 旦那がどうかした?」
何も知らないフリを装って、佐助は気だるそうに電話の相手に話しかける。
一刻も争う状況。
少しでも間違えれば、取り返しのつかないことは分かっていた。
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幸村が連れてこられたのは思い出のコテージだった。
昔はここを秘密基地として政宗や佐助とよく遊んだ。
「はぁ……、はぁ……」
息苦しさを感じつつも幸村はその背中を見続けていた。
荒い息をしているのは無理矢理に走ったからではない。
いつもと違う彼の存在が、とてつもなく恐かったのだ。
「どうしてここに……?」
掠れる声で訊ねる。
「俺を、帰して下さい」
どれほど哀願しても、彼はこちらを向いてはくれない。
「お願いです」
こちらを見てくれとばかりに、彼の腕に触れる。
「政宗殿……」
幸村に触れられて、彼はそっと振り返る。
その顔には、とても静かな表情を浮かべられていた。
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