光抱いて闇に染まる7
「……本当に、アイツなのか?」
車を待ちながら、政宗は幸村に訊ねる。
目覚めたら消える悪夢であればいいのにと願っても、覚めない夢は現実のまま。
「ええ。……軽蔑、されるでしょうか?」
政宗の真意を知らない幸村は切なそうに睫毛を伏せる。
その仕草でさえ、政宗の心をかき乱すことを、カレは知らない。
「そんなんじゃねぇよ」
イライラとしたようにタバコに火をつけた。
全く味がしない。ただの煙を吸っているだけの感覚。不味い。
「自分でも分からないのです」
ポツリと呟く幸村の声に、政宗は顔を上げる。
「まさか同性に恋するとは、思ってもおりませんでした」
「不思議なのですが」そう苦笑して、カレは友を見つめる。
「家康殿に初めてお会いした時に魂が震えたのです。肉体は別であってもこの心は一つなのだと、痛烈に感じました」
タバコを咥えたまま幸村の顔を見つめる政宗。
想い人のことを話すカレの頬はほんのりと紅い。
その恥じらいが得も言えぬ色気を纏って。
いつの間に、その婀娜をカレは手に入れたのだろうか?
「ご安心ください。俺が惹かれたのは後にも先にも家康殿のみ。政宗殿や佐助をそのような眼で見たりはいたしません」
「……っ」
幸村にとっては、友を安心させるために言ったのだろう。
しかし、その言葉は何よりも政宗の心を抉った。
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