光抱いて闇に染まる4
「久しぶりだな」
愛しい人の隣で、男であるヤツは笑った。
「こうして会えてくれた事、感謝する」
嫉妬で固まる己たち。
どす黒い感情が沸き起こってきて。
その場でこの男の存在を消したくなる。
それでも、できないのは。
「今まで黙っていて、すまない。好きになった人が家康殿……男、だったのだ。だから、言いだせなくて」
己の反応を心から恐れる表情を浮かべるカレがいたから。
「ワシからも詫びよう。ずっと隠していて済まなかった」
己たちがずっと触れられなかったその華奢な肩を当たり前のように抱いて、その男はしゃあしゃあと声を発する。
「来月から、一緒に住もうと思うのだ。だから、幸……真田と共に在ったお前たちには知ってもらいたくてな」
俯いた愛しい人の肩は震えてる。
己たちを見ることを恐れたようなカレ。
ヤツは、そんなカレを抱く腕に力をこめた。
カレが抱くモノは己たちに軽蔑されないかという恐れ。
カレは、己たちとの関係をこんなにも大切に思っていてくれたのだ。
友として。
そしてカレは、己たちと同じ男であるヤツを選んだ。
その肩を触れる事を許した。
己たちが、ずっと傍で渇望していたその立場を。
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