光抱いて闇に染まる3
その苦しみは自分ではどうすることもできない。
そう。
人が空気を吐いて吸う行為のように、単純で決まり切った抱くべき感情だった。
届かない想い。
邪な欲を抱いて、穢れのないフリをして接する苦痛。
罪悪感で胸が締め付けられ、同じ境遇である互いを疎ましく憎み。
それでも、幸村の傍にいたのは。
彼という光がなければ生きてはいけなかったからだ。
どんなに依存しようとも、与えられるだけの愛情で己を抑えるしかなかった。
太陽のない草木は育たない。
どんなに狂っていると言われようと、それと同じ法則。
己たちと違ってどこまでも清らかな心を持つ幸村には、この歪んだ感情を決して分かりはしないだろう。
カレが女性であったならと何度も思った。
そうなれば、この打ち明けられない苦しみはなくなったのに。
……いいや、もしカレがカノジョであったのなら。
己たちのどちらかを選んだのだろうか?
もし己が選ばれなかったら?
己は、生きて行くことも出来ず、ただ枯れるだけ。
だから、そう。
今のままが幸せなのだ。
カレが結ばれるべき人は、清らかな心を持った太陽のような女性であるべきなのだ。
己たちはその時を恐れながら、彼の前でおどけるしかない。
そう、思っていたのに。
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