ぬけがら1
ゴマ様より。前タイトル【トワ】の関連作も、贈って下さいました(*^^*)
家→幸。(戦国、悲哀)
トワを読まなくても大丈夫な内容とのことですが、是非トワと合わせてどうぞです^^
彼のことが気になってたので、書いて下さったとのお言葉に狂喜でした。
やっぱり、ゴマ様の書かれる家康はとても彼らしいです。
ゴマ様、重ねて本当にありがとうございました!
(全2ページ)
降伏する気はありませぬ。某は、ただ己の志に命を散らすまで
突き抜ける様な空の青に反して、地上はただ赤黒い。
肺を焼く熱気を吸い込み、家康は前を見つめていた。
その先には己の首だけめがけて走る、幸村の姿がある。
味方を亡くし、勝敗が判っていても尚、己に屈することなく向かってくる彼。
最期と知りながらも戦場を勇ましく駆ける幸村は、危うく美しい。
「真田。全てをぶつけて来い。ワシは、逃げも隠れもしない」
呟きと共に、拳を強く握りしめる。
彼の息の根を己の手で止めなければならない。
その苦しみを強く受け入れた。
『……虎の後継者と呼ばれる、アンタを俺様は赦さない』
その時。ゆらりと、背後に緑色の気配を感じた。
『アンタ、大将からこれ以上何を奪う気?』
先の戦いで幸村を守り散った忍の霊が己に問いかける。
「ワシは、真田と正々堂々と戦う。ワシの望んだことだ」
『ふぅん……。なら、あいつらは、何なの?』
緑色が指し示した方を向けば、幸村に銃を構える徳川の部隊がいた。
「なっ……!」
驚き、眼をむく家康。
幸村の存在はそれだけ徳川の中では脅威だった。
総大将の命が危ういと、独断で部下が判断したこと。
「待て……! 彼を、真田を撃つんじゃない!!」
そう叫ぶが、遅かった。
雨の様に鳴り響く銃声。
それらを一身に受けていく幸村。
紅い鎧はますます紅く染まり、その白い肌も紅い染みができる。
それでも、幸村の眼はどこまでも己を見ていた。
おぼつかない足で、ひたすらに前に進もうとするその姿は、健気であり勇ましくもある。
そうして、鳴りやまない弾の雨の中で、ゆっくりとその身体を倒して言った。
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