get back my pain3




自分は、まだ止まれないのに。


思考を止めたらいけないのに。


動け。


せめて、ここまでは。


動け。


あと、少し。


ここを片付けて……


あと、



……?


無意識のうちに残りの気配を感じて、違和感が掠めた。

十七……十六……


え? 減ってる?


十五……十四、十三……

戸惑う間にも、殺気を放つ気配が減じていく。
他の気配を、圧倒している者がいる。



熱い。

燃えさかる炎の気配。



この気配は―――



ぐっと、腕に力が戻った。
つかんでいた相手の腕を握り締めた。
何か潰れる音がしたがどうでもいい。

すうっと、自分が大きく息を吸い込んだのがわかった。




「ふっっっざけるなあああああああ!!!」



叫んだのは、罵倒。

首を絞められていた腕を、引きちぎる勢いで力任せに剥がす。
痛みにわめくそいつがうるさくて首を一突きして黙らせた。

叫ぶべきは、制止の声だったのに。
『 来るな 』と叫ぶべきだったのに。

自分が叫んだのは、自分への罵倒だった。


喜んでいる、自分への。



「佐助ぇっ!!」


あの人の声。
この耳に、直接届いて鼓膜を震わす声。

赤い覇気を真っ直ぐ燃やして。
瘴気を焼き尽くす勢いで見参した。



―――真田幸村。
俺様の絶対の光。





なんであんたがこんなところにいる。
あんたは陣にいるはずだろ。
俺様が影とすりかわってるなんて、気づくな。
気づいても知らないふりをするべきだった。

ほとほと、あんたは主失格だ。

呆れて、言葉も、無い。


幸村の瞳が、自分を映した。


『そんなことはわかっている。しかしそれでも』

しかと自分を見据える瞳はそう言った。
自分をみつめたまま、魂を奮わせる声で明言した。



「俺の許可なく傍を離れることなど、断じて許さぬ!!」



最っ低だ。

おまけに最悪だ。


主が、忍を、追ってくるなんて。
忍が、主に、追ってこさせるなんて。



どうして、なんで、こんなに、……



「――――……っ」



うれしいんだ……



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