トワ17


「好きな奴は、居るのか?」


 今までの自分の感情に気づきはじめた幸村は、まだその気持ちを言葉にすることができなかった。


「なら、俺で我慢しておけよ」


 そんな彼の頬に優しく触れて、政宗は不敵に笑う。


「まぁ、断ろうとしてもさっき見せしめで外堀を埋めたんだ。もう、逃げられないがな」


 政宗の言葉に、校門前の出来ごとが想い出されて、幸村の頬は赤く染まる。


「政宗どのはずるい……。ひ、人前であんなことをするなどと。貴殿は慣れている事かもしれぬが」


 あの、武蔵の驚いた顔。もう、言い逃れはできないだろう。

 もとから噂は立っていたのだ。今更否定しても、誰も信じてはくれない。


「俺は、生まれ変わる前からアンタ一筋だ。他を許したことはねぇよ」


 いじけた顔で文句を言えばアッサリとそう返される。

 そして、政宗は幸村の手をとり、その甲に口づけをした。


 幸村はますます頬を赤くして、政宗には叶わないと降参する。


 結局、その強引さも含めて惹かれているのだ。


「……某も政宗どのをお慕い申し上げておりまする」


 素直に気持ちを述べれば、その頬に温もりが宿った。


 前世、己が死ぬ前に最後に触れたその長い指。

 まるで過去をなぞる様に、己の顔をなぞっていく。

 そして、唇に止まって。


 嗚呼。これからは、もう離れる事は無い。


 唐突に、思う。

 前世で成し遂げられなかったことが、今世では何年も実現されていくのだ。

 それが、途方もない幸福なのだと気がついて。


 政宗の頬笑みを見つめて、幸村はそっと瞼を閉じた。




 copyright c 2006 椿屋四重奏『トワ』








(感想&お礼)

前世と現代との切り替わりがすごく自然で、最初から最後まで漫画を読んでいるように場面が浮かんでました。武蔵の存在が、現代の平和さを強くしてくれて^^

政宗様のボンボンさやキザさが、これまた似合うこと!でも、ゴマ様に言われるまでキザって思わなかったです(^m^) とにかく、ずっとカッコいいと思ってました。見てくれだけじゃなく、幸村に対する態度や言動、その想いが。

政宗様って強引なイメージもあったんですが、ものすごく一途で幸村を大切にしてて、とても素敵でした。でも、人目は気にしないとこが◎ 二人が手を繋いで歩いてるシーン、頬が緩みます。

で、幸村はどこまでも真面目なんですよね。すごく彼らしい。冒頭では、政宗との闘いだと思っていたので見事に騙されました。それで二の足踏んでたんだなと。
蒼紅の絆も表現されてて、贅沢さが盛り沢山です。その分、想いが半端じゃないってのが伝わってきました。

女子のグッジョブさには拍手喝采でした!政宗様、やった!o(^∇^o) めちゃ萌えました。女子が、政宗でなく幸村目当てだったのも好感触(^m^)
二人の、幸せラブラブなこれからの未来の予感に浸りながら、読み終えられました。

てか、政→←幸の時点で政宗様の幸村へのラブさに、常にニヤニヤ悶えてましたがね^^ でも、悩んだりすれ違ったりと、ドラマチックで終始どきどきでした。

歌も切ないメロディで、歌詞が政宗様の気持ちに思えました。このお話の挿入歌にぴったりです^^

ゴマ様、素敵なダテサナ小説を本当にありがとうございました!

[ 149/194 ]

[*前へ] [次へ#]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -