紅く月が嗤う2



「はっあ、アアッ!」

肉壁がうねり絡み付いてくる、
太股に手を這わせながら激しく骨盤を叩きつけキツい締め付けを堪能する、
揺さぶられ真田も忘我の面持ちで快楽を貪ってる。
そう、それでいいんだ。
堕ちて来い真田、お前も。

「……っはっ、あ……!」
「ん?何だ?真田、」

もっと奥か?
いいぞ、やる。
お前が望むなら。

小さく喘ぎ続ける彼の顔に近付け耳をなぶる。
ン、っ……
薄く開いた彼の目は遠くを見つめ、

「三成……殿」

あの時焦がれた琥珀の瞳、それは今も自分を通り越して――――――

知ってた、
真田が三成が、同じように惹かれあっていた事を。

そう、真田がその矜持を捨て憎い仇のワシに屈した、それが全ての答え。

「―――――っ!」

「ぅあっあああああ!?!」

一気に奥を貫き柔な肉を喰らう、
ああ、頭の芯まで痺れる強烈な快感、
射精の欲のまま真田のナカに吐き出し、最後の一滴まで注ぎ込む。
彼の熱り立つ摩羅も扱き追い立てると、啼きながら腹に白濁を飛び散らせていた。

ビクン、ビクン、
震えが……止まらない。

ズルリ力を失った肉棒を抜き、気をやった彼の隣に転がる。緩んだ孔から粘液が漏れ酷く扇情的な光景だ。
また滾る疼きのまま彼のナカに捩じ込んだ。







透明なまでに真っ直ぐな眼差し、それはワシじゃなく――――
三成を見ていた。

焦がれても焦がれても届かない、手に入れた筈なのに……どうしてこんなに……

真田の体を清拭し、天守閣の屋根に出て茫然としていた。
この空虚は……なんだ、
ワシはかつての友を殺しいとしい人を手中にする、覇道という大いなる代償のかわりに手に入れたのは……
何だ?
ワシは、
ワシは何を

「家康殿」

「……真田」

単衣だけを身に纏ったしどけない姿でふらり現れる、月光を浴び頼りなく歩いて来る様は普段の溌剌とした彼でない、もっと別の……月が魅せるあやかし。
踝の細さに目を奪われ、そういえば頬が痩けたと気付く、
心労故かこれもワシが蒔いた種の酬い。

月光を浴びた横顔は壮絶な迄に美しく儚かった。
先程からワシの方を顧みず、尖った月を見上げてる。
触れたい、
彼が月に抱かれ消える前に。

イヤだいてくれ、
ワシの傍に、
消えないで――――。

「可哀想に」

「さな……」

冷たく嗤う。
唇が弧を描き怪しい艶かしさを呼ぶ。



「理解者もいない、真に貴殿を愛してくれる者もいない、罪悪感にまみれ生きていく。皆を照らす陽光、だがその大陽は何処までも孤独か」

フフフ……

ひきつった笑い声が彼の口から溢れた。
これは誰だ、
真田、お前が、

「貴殿の孤独は永遠よ。罪にまみれ生きていけばいい」

「ああ……あああああ!」

目の前が真っ赤に染まる、言うな、お前だけは、
頼むから――――

そうほんのちょっと、
力を込めただけ。

「さな」

虚空に投げ出された体、栗毛色の髪がふわり浮かび視界から消える。

真田、

最期に網膜に焼き付いたのは真田の清々しい笑顔だった。





「あああっ……あああああ!」

「家康殿大丈夫でござるか家康殿!」

ゆさ、
揺さぶられハッと目を見開く、自分を心配げに見下ろす真田、
ああ夢だったのか。
良かった、本当に……
まだ夜は明けていない、事が終りうたた寝をしていたようだ。
独りになる事などあの雨の夜から解ってた筈なのに。こんなにも喪失の苦しみに怯えてる。
真田、お前がいなければ、
ワシはこんなに弱い……

「家康殿、悪い夢を」

「ああ……恐ろしい、夢だ」

汗が全身から吹き出してる、ともすれば震えそうになる手で今度こそしかと彼を引き寄せ抱き締める。
熱い、体。彼の生きている証。


「可哀想に」

頭を撫でる手に感覚を委ねる、
なにも聞こえないフリをした。







(感想・お礼)

モカ様の書かれるキャラ皆素敵で迷ったんですが、家幸・関幸がとても見たくて(*´∀`) 甘々・シリアス・ギャグどれでも、家康なら明るい天然ストーカーでも黒鬱でもニヤリです〜とか曖昧なリクさせて頂き、とても美味しく仕上げて下さいました(^▽^)

家康の孤独さや陰の部分が上手く描写されてて、すごく感情移入できました。夢うつつと幻想的な展開もお気に入り、最後の「可哀想に」と家康の聞こえないフリが印象強いです。月に照らされる幸村の姿や笑みを想像すると、ぞくぞく。こういう幸村も大好き。

私も三成贔屓で、関幸だとつい三幸寄りに…戦国なら一層。なので、三→←幸要素嬉しい^^ 裏描写は家康の慕情劣情がよく見えて、ドキドキかつ切なかったです。あの後、二人はどうなっていくのかなぁ…

モカ様、素敵な小説を本当にありがとうございました!

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